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不死鳥の力と、さとりの眼を持つことになった僕が百鬼夜行に巻き込まれていく・・・と、いう話さ  作者: ブラック企業幹部ちゃん
6章 四天王のこと、或いは新四天王のこと

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72話 最強の鬼 酒呑童子


 とある京都の高校。


 その学校の指導室で教員のやしろは進路指導を行っていた。

 細身で優しそうな風体をした社は初めて3年生の担任を受け持つことになり、教え後の進路の相談に乗っていた。

 

 教え子と向き合い、みんなの将来を真剣に考える教師。

 そんな憧れを抱いて教師になったものの、現実はそう上手くいかなかった。

 見かけは気弱そうな優男であるため、やんちゃな学生に舐められることもしばしば……。

 

 それでも教え子の未来のために、彼は情熱を注いでいる。

 生徒たちは、そんな彼をなんだかんだで慕っている。


 

 「渋谷さんはさ、ご家庭がいろいろと大変だとは聞いているけど進学が良いと思うんだ」


 「先生にそういわれると嬉しいけど……やっぱ就職かなぁ」


 「校内総合成績ベスト10入りしているんだから、特待生として推薦できるんだよ」


 「うーん。でもなぁ……」


 「次の3者面談の時にお母さんへ先生からお願いしようと思ってるから」


 

 放課後に2週間ほどかけて、担当クラスの全員と面談をしなくてはいけない。

 ひとり30分以内で1日4人の面談、今日はこの渋谷という生徒で最後だった。


 

 「今日はこれでおしまいだから」


 「はーい」

 

 

 社は、デスクや椅子を整理しながら窓の外を眺めた。


 

 「嫌な空だ」


 「えっ?晴れてるやん空」


 「……あっ、うん!ははっ。だね、気を付けて帰りなさい」



 社は渋谷を見送った。

 そしてもう一度澄んだ空を見上げて呟いた。


 

 「……なにか来そうな空じゃないですか?」


 

 その社の独り言に心の中で返事をする者がいる。


 

 『お前目当てに訪ねてくる者が居るようだ。亮平』


 「……ですよね。取り合えず急いで帰る支度します」


 

 社は不安げな顔をして職員室に戻り、帰り支度を始めた。

 ジャケットを羽織り、カバンを片手に校舎を歩いて正門に向かう。

 すれ違う学生たちが挨拶をする。


 

 「あれ!社センセ。今日は電車じゃないんですか?」


 「うん、今日はちょっと用事があってね」


 「えーっ!デートちゃうの!」


 「違うよ!」


 

 学生たちは社に手を振った。

 彼も照れながら手を降り返した。

 社は人気のないところを探して歩き始める。


 

 『殺気は感じられん』


 「一応、喜咲神社に向かいますね」


 

 喜咲神社は学校の裏山にある古びた神社だ。

 昔はこの辺りの中心的な神社だったらしいが、今では参拝者などほとんど見かけない。

 

 

 社は裏山に向かい、長い石段を登った。

 日が暮れ始めているものの、まだまだ明るかった景色は鬱蒼とした木々に囲まれ寂し気な景色へ変わっていく。

 

 鳥居をくぐり参道を歩けば、手水屋と小ぶりな本堂がある質素な神社。

 稲荷神社のようで、狛犬の代わりの狐が置かれている。

 

 

 「はぁ~、久しぶりに登るとここの階段はきついや」


 

 社は本堂の前で大きく深呼吸をした。

 そして鳥居の影に身を隠している相手に声を掛ける。

 

 

 「君は平気?」


 

 声を掛けられても驚く素振りすら見せず、そいつは鳥居から白い肌の小さな顔を覗かせた。


 

 「やっぱり気付いてたよね」


 

 妖狐の氷花が社の前に立った。



 ――――――

 


 僕は鞍馬山の迷い家で、牛丸さんから鵺に関して詳しく話を聞いていた。

 

 牛丸さんが日本妖怪最強を目指していた時から、四天王として君臨していた化け物。

 四天王の中でも一番気性が激しく好戦的な化け物で、直接対峙したことは無いらしい。


 500年以上前に、海の向こうより渡って来た大陸の化け物から日本を守るための戦争があった。

 幾度と合戦はあったものの、異国の者との化け物戦争は初めてのことだった。

 

 九尾の狐、酒呑童子、土蜘蛛など、四天王と呼ばれる化け物はその戦争で大きな活躍を見せたらしい。

 その時に嬉々として鵺は先頭に立ち、次々と他国の化け物を消し続ける活躍をみせたのだ。

 一度の稲妻で数10体の化け物を吹き飛ばす鵺の姿は、牛丸さんの記憶に鮮明に焼き付いたようだ。


 

 最強。


 

 その一言がふさわしい化け物だと思ったらしい。

 108日間続いたその戦争は、大陸の化け物を追い払い日本を守り抜くことに成功した。

 しかし、その戦争以降に鵺の姿を見た者はいなくなった。

 噂では強者を探して日本を離れたとのことだった。


 牛丸さんも最強を目指す者として、いつか手合わせを申し出ようと願っていたようだ。


 その鵺が数百年ぶりに日本で現れた。

 若く無知な化け物がいたずらに鵺を挑発してしまう可能性があるため、牛丸さんは随分と心配しているようだ。


 

 「牛丸さん」


 「なんだ?」


 「氷花さんは?」


 「氷花は亡き母の思い出を手繰りに朧車で京都へ行っておる」


 「京都!? なんでです? お母さん京都の方なんですか?」


 「ここ最近時間があれば母のことを知る化け物へ会いに行っているようだ。逢ったことのない母のことを色々と知りたいのだろう」


 「まさかそこで鵺と鉢合わせしたりしませんよね? 氷花さん怖いもの知らずだからこっちから喧嘩売ったりして……」


 

 僕は突然不安に襲われた。

 氷花さんならやりかねない話だ。

 しかし牛丸さんからの返答は、僕の思っていたものとは違った。


 

 「余程の馬鹿でない限り京都で事を起すようなことはしないだろう。京都が逆に安全なのだ」


 「なぜです?」


 「氷花が会いに行った化け物というのはな、同じく四天王と呼ばれるの酒呑童子だ」


 「……酒吞童子は会いに行って大丈夫な相手なんですか?」


 「おとなしくしていれば問題ない。酒吞童子を知る鵺ならなおさら京都で荒事は避けるだろう」

 


 あの強い鵺が京都では争いを避ける?

 酒吞童子とはどんな化け物なんだろう。

 鵺より強いのだろうか。

 

 四天王の鵺が現れたタイミングで、氷花さんは四天王の酒吞童子へ会いに行っていた。

 今思えばこの四天王繋がりの偶然は、これから起こる大きな戦いへの兆しだったのかもしれない。


 


 酒吞童子。

 己が決めた土地に腰を下ろす鬼。(酒の美味い土地に限る)

 なまはげ同様、土地神にあたる。

 住処と決めた土地を悪鬼から守り、繁栄を司る。

 普段は温厚な性格だが、守護する土地に厄災を持ち込もう者にはその力を惜しみなく使う。

 鬼族の中でも最強を誇る鬼。

 


 

 

 

 


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