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不死鳥の力と、さとりの眼を持つことになった僕が百鬼夜行に巻き込まれていく・・・と、いう話さ  作者: ブラック企業幹部ちゃん
5章 あなたの心が芽吹き輝く方へ

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57話 あの頃へ


 わたし達の身長くらいある枯れ木をかき分けて雪山を進んでいった。

 

 

 ああは言ったものの、この状況下で身を隠せる都合の良い場所が本当にあるのだろうか。

 

 この雪はわたし達の存在と足跡を狢から消してくれるのに都合が良い。

 しかし、一抹の不安を拭い切れないまま山道を進んだ。


 山の中を、雪の世界を、更に深く進んでいく。

 人はもちろん、化け物や動物ですら未だに手を付けていないような自然の中だ。

 すでに身を隠せそうな場所がいくつかあったけれど、更に奥へと進んだ。


 途中、山の中腹辺りで白粉婆は脚を止め、その場所から遠くを見下ろすように眺めだした。

 わたしも彼女の視線に合わせて同じ場所を眺めてみたけれど、吹雪きが邪魔をして何を見ているのかわからなかった。

 

 平野だろうか?

 

 その平野らしい場所の隅の方に、うっすら木で組まれた大雑把な物が見えた。

 あれは大昔いろいろな場所でみた記憶がある。

 

 たしか処刑場で見たような……。

 

 あの場所は処刑場だったのだろうか?

 この距離からでは詳しくわからない。

 

 しかし白粉婆の表情はなんとも悲しい目をしていた。

 ほんの数秒、ほんの少しだけど彼女はあの頃へ戻っているようだった。


 

 「すまない。行こうか」


 「はい」


 

 わたし達は更に山の奥へと進んだ。



 ――――――



 しばらく進むと白粉婆はまた立ち止まった。

 

 目の前の積もる雪を、埃を払うような仕草で払い落とし始めた。

 するとみるみる季節に似つかわしくない草むらが姿を現した。

 その草むらも手で払うと、消しゴムで消したように消えていき、そこから洞窟のようなものが見えた。


 

 「ここは?」


 「見つかっていないようだ。さぁ、入って。すぐに雪の化粧を施してこの場所を隠す」


 

 白粉婆はあらゆる物に化粧をして、本来の姿とはまったく違った姿に見せることができる能力を持っている。

 幻術を見せるようなもの、と言えばわかりやすいだろうか。


 洞窟に入ると、彼女は白粉で洞窟の存在を外から見えないように隠し化粧をした。


 

 「昔、わたしが身を隠すのに使っていた場所だ。この狭さの中に2人は多少辛いが我慢しておくれよ」


 「過去に身を隠さねばいけない状況があったのですか?」


 「……」


 

 日が暮れれば、山の中は一足早く闇が訪れる。

 行動をするならそこからだ。

 

 一旦はこの結界の中から外に出ることを優先しなくてはいけない。

 わたし達が外部から入ってきたことに気付いた狢達は、今頃結界の出口を必死で探しているだろう。


 1匹たりとも外に出してはいけない。

 あんな連中を外に出してしまえば、まず近隣の町から暴虐の限りを尽くしていくだろう。

 それだけは避けなければ……。

 

 

 「奴らは鼻が利く。匂いでわたし達の場所を特定するのも時間の問題かもしれないな」


 「この村、この山が結界で閉じられていた理由が狢によるものだとご存じでしたよね?」


 

 わたしが質問すると、その場で白粉婆は腰を下ろして俯いた。


 

 「故郷へ連れて来たら、あなたはもっと喜ぶものだと思っていました」


 「……」


 「しかし残念なことに、想像していたものとはまったく違ったものになっています」


 「……本当にすまない」


 

 わたしは彼女の前でかがみ、目と目を合わせようとした。

 でも彼女はすぐに目を逸らそうとする。


 

 「こんな状況下ですが、あなたの昔のことをお話いただけませんか? この村のこと、狢のこと、知っているすべてを聞きたいのです」


 

 わたしの話を聞いた白粉婆は、俯きながら意を決したようにつぶやいた。

 

 

 「……そうか、そうだな。ここまで来たんだ。さすがに話さなければいけないね」


 「ぜひお聞かせください」


 「今まで誰にも話したことのない話。いや、話したくなかった話さ……」


 


 白粉婆の遠い昔の話。

 この不知雪村しらゆきむらで起こった事件。

 

 

 わたしは今から、この村であった白粉婆の悲しい過去を聞くことになる。



 

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