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不死鳥の力と、さとりの眼を持つことになった僕が百鬼夜行に巻き込まれていく・・・と、いう話さ  作者: ブラック企業幹部ちゃん
2章 夢を見ましょうか

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30話 正夢の術


 こいつのせいで友人が苦しんでいるんだ。

 何が何でも引き下がれない。


 

 「不思議な眼を持つ人間よ。お前はその眼であの人間の何を見た?」

 

 「何だと!」

 

 「あの人間とは知り合いなのだろう。お前は己の眼とその不思議な眼で真実を見たのか?」


 

 枕返しが僕の腕を掴んだ。

 先輩も戦闘をするつもりはないようで僕のシャツを掴んで離さない。

 

 

 「おい、戻るぞ」

 

 「僕は戻らない」

 

 「バッカ!意地張ってんなよ!ここでできることはもうねぇよ。正夢の術が発動されてるんだ。もう止められん」

 

 「さっきから何なんです?その正夢の術って!」


 

 枕返しは僕を落ち着かせるため、正夢の術に関してゆっくりと答え始めた。

 

 正夢の術とは。

 我々が知っている正夢と同じようなものらしい。

 夢で見た内容が、強制的に現実世界に反映されるというものだ。

 ただ違うところがあるとすれば、発動させるには代償が必要になる。

 

 代償とはその術者の命。


 そしてこの術に関して「夢」というのは「希望」という言葉に置き換えた方がいいのかもしれない。

 その希望を叶えるために、化け物と契約を結ぶことが正夢の術なのだ。

 

 叶えられる希望(夢)の大きさは、術者の命の価値に比例する。

 世界滅亡を願ったところで無理な話。

 せいぜいこの世の誰かひとりが亡くなるレベルに調整される。

 

 

 正夢の術の発動方法は簡単で、夢の化け物からチケットを一枚受け取り、そのチケットを握りしめながら希望する夢の内容を思い描いて先にある夢の改札口を通り過ぎるだけ。

 

 それだけで正夢の術が発動する。

 

 ただし、内容に無理がある場合は改札口が現れない。

 改札口が現れて潜った時点で希望(夢)は叶う。

 そして本人は2度と目覚めることがない。

 

 また正夢の術で願った内容が長期間にわたる内容の場合は、術の存在が周囲へ明るみになった時点で効果が解除されるようになっている。


 

 「つまり、自分の命を懸けてでも坂口って奴を殺したかった奴がいるんだよ。そして正夢の術が継続中だから、アイツは俺らに何も言えねえんだ」


 

 一体、坂口くんは何をしてこんなことに巻き込まれたのだろう。


 

 「夢のよ、邪魔したな。俺らは一旦帰らせてもらうぜ」

 

 「あぁ、すまないな。久しぶりの再会に喜ぶ暇も作れなかった」

 

 「近々、また会うかもな」

 

 「楽しみにしているよ」

 


 僕たちは何もできないまま、現実世界へ戻ることになった。



 ――――――



 意識がすごいスピードで光ある方へ向かっていき僕達は目覚めた。


 

 「おかえり。そっちは万事解決かい?」

 

 「……」

 

 「では、無さそうだねぇ」


 

 何が何やらだ……。

 解決に近づけると思っていたら、さらに謎が深くなったように思う。

 直接坂口くんからいろいろと聞くしかない。

 


 「いまから坂口くんの元へ向かいます」


 

 僕は勢いよく立ち上がったが、フーッと力が抜けていく感じがして膝を着いてしまった。


 

 「夢遊空間に行ったから力が削がれちまったんだろう。むき出しの精神でいるから元人間には少々きつい空間だったかもな。少し横になっとけば回復するぜ」

 

 「ち、力がはいらない」


 

 僕は少し休むこととなった。

 その間にこれからの作戦会議を妖狐と先輩、枕返しで行ってくれていた。

 

 

 「今回の件だが、詳細聞かせてくれよ」

 

 「何だい、さっきまではぶっきら棒で興味なかったくせに」

 

 「夢の番人と正夢の術まで出てきたんだぜ。俺からしたら只事じゃない。正夢の術の契約なんて普通の人間がまずすることなんてない。一体どうなってやがるんだ……」


 

 先輩は一連の話を枕返しに聞かせた。

 出会った時には、まったく興味を見せなかった枕返しも真剣に耳を傾けていた。

 先輩は話の終わりに、昨晩の山姥の家で観察していたことで僕には言い辛かった話をし始めた。


 

 「坂口くんは本当に山姥を慕っています。そして、何人の子供が犠牲になったかはわかりませんが坂口くんも子供達を手にかけていると思います。」

 

 「どうしてそう思ったんだい?」

 

 「人体の切り口が、一刀で切り落としたものとノコギリで切ったような削り切ったものがありました。おそらく後者は坂口くんが手にかけたものだと思います。……そして殺された子供達の怨念は坂口くんへも向けられているのです」


 

 これは先輩が一晩あの家にいて感じ取った話だ。

 僕に気を遣って言えなかったのは、信憑性が極めて高いのだろう。

 先輩はそれが事実なのだと自信があるんだ。

 

 僕には坂口くんが子供を殺しているなんて信じられない。

 


 「発情鬼が復活したら、さとりの眼の出番だね。それで真実がわかるだろう」

 

 「俺も気になることが多いぜ。これが解決するまで迷い家に戻るのはやめとくか」

 


 友人の欠席から始まった今回の件。

 想像もしていなかった方向に話が進んでいる。

 山姥と夢の番人が絡み、僕達も枕返しに力を借りることになった。

 

 未だに真実がわからない状況の中、僕たちは対策を打てずにいる。

 



 僕の体力が回復し次第、真実を知るためにももう一度血の香る家へ向かう。





 

2章 夢を見ましょうか をご覧いただき誠にありがとうございます。


本章は、人々に恐れられる化け物という存在になった煉が、本当に怖いのは人間なのではないか?

って思い考えていく話です。


頭の中で浮かんでいる絵が、文章でみなさんへ伝わっていれば嬉しいです。


よろしければ、一言でも嬉しいので感想などいただければ幸いでございます。

引き続きよろしくお願いいたします。


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