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21話 再会の日


 本日の空は青。

 

 容赦なく太陽が照らしつける日常の中、4限目終了のチャイムがなった。


 

 今日はとにかく蒸し暑い。

 僕は先生に呼ばれたので職員室へと向かっている。

 エアコンの効いた教室から一歩も出たくなかった。

 

 呼ばれている理由は、事故の件と母さんの件についてだろう。

 7月半ばで夏休みを目前に周りが浮足立っている中、僕への対応で先生方には迷惑を掛けている。

 

 

 「火鳥君」

 

 「先輩!」


 

 偶然、家入先輩と廊下で出会った。

 あれから先輩とは学校で見かければ会話をするようになった。

 もちろんバイト先でも。

 


 「聞きましたよ。次の日曜日、麻衣のお墓参りにいくのですよね?」

 

 「はい、お墓が完成したようなので行くつもりです」

 

 「ご一緒していいですか?ひとりで迷い家に行くのはどうも……」

 

 「もちろんですよ」


 

 長い間、牛丸さんと仲違いしていたので気まずいのだろう。

 今回の件を機に、完全に打ち解けてくれることを願うばかりだ。

 


 「ところで氷花は?」

 

 「学校には先輩がいるので、護衛は先輩に任せて街の散策に出ていると思います」

 

 「彼女にもやれやれですね」


 

 氷花さんは僕が先輩と同じ学校だと知ったことで、学校にいる間は護衛を先輩に任せ始めた。

 暇をしているのなら、店長に頼んで午前中のアルバイトでもさせてみようかと思っている。


 

 「職員室に行くのですよね、呼び止めてすみませんでした」

 

 「いえ。それではまた日曜日に」

 

 

 明後日の日曜日、僕達は鞍馬山まで母さんの墓参りへ行くことになった。



 ――――――


 

 日曜日。

 

 マンションと迷い家はすでに繋げられており、互いの世界へ出入りが自由となっている。

 たまにあかなめがマンションの掃除に来てくれているので助かっている。

 

 9時に先輩がマンションまで来てくれて、そこから3人で迷い家に出向いた。

 久しぶりの迷い家への帰宅に、先輩が楽しそうに見える。

 

 先輩は自分の部屋が当時から変わっておらず、未だに触らずおいてあることにすごく嬉しそうだった。


 僕達は居間で牛丸さんと会い、4人で少し話をした。

 牛丸さんと先輩は少しぎこちないものの、数十年ぶりの会話を交わしていた。

 このまま雪解けしてくればと願うばかりだ。

 右手の鳳凰も現れて、牛丸さんと数百年ぶりの対面を果たすことになった。

 

 

 「鳳凰よ、話は聞いてはいたが……また会えるとは……あの時はすまなかった」

 

 

 牛丸さんは僕の右手に向かって、泣きながら詫びていた。

 傍から見ると奇妙な光景だと思う……。


 

 「馬鹿者、泣くでない。照れるではないか」


 

 冷静を装いながら鳳凰も再開を喜んでいた。

 募る話もあるだろうけど今日はそこそこにしてもらい、母さんの墓参りへ向かうことにした。


 

 そういえば迷い家から外に出て森に入ることは初めてのことだ。

 正直なところ、迷い家一帯の位置関係を全くわかっていない。

 門から出ると、現の世界と断絶された霞掛かった山道が見える。

 その山道を進んだ先にお墓があるのだそうだ。


 案内役は豆腐小僧が努めてくれる。

 しばらく道なりに歩いていくと、たくさんの墓石が見え始めた。

 


 「ここだよ。煉のお母さんのお墓は」

 

 「ありがとう」

 


 化け物世界のお墓は僕達がよく目にするお墓ではなく、大きな岩を墓石に見立てて置いているだけの簡単な物だ。

 牛丸さんが母さんの味わった恐怖や呪をすべて排除してからお墓を用意してくれたらしい。

 綺麗に磨かれた岩で作られた立派なお墓だ。

 

 

 「こっちで父さんとおもしろ可笑しく過ごしているから、煉もそっちでおもしろ可笑しく過ごしてね」


 

 そんな言葉を母さんが言えたのも、この鞍馬山のみんなのおかげだろう。


 僕は眼鏡を外して墓を眺める。

 墓からは母の声が聞こえたりはしない。 

 もちろん母さんの姿も見えはしない。


 

 「さとりの眼なら母さんが見えるかもって思ったんですけど」


 

 そう呟いた僕の背中に氷花さんはそっと手を置いた。


 

 「今は向こうでゆっくりしてるんだ」

 

 「……はい」

 

 「気持ちは伝わっているさ」


 

 僕たち3人は母さんを弔った。


 その後、迷い家に戻り3人で昼食をすませた。


 

 「みなさんはこれからどうされるのですか?」

 

 「僕は今から行きたいところがあるので出かけようと思っています」

 

 「へぇ、なら朧車に連れて行ってもらえばいいじゃないか」

 

 「それが詳しい場所をわかってなくて……」

 

 「なんだいそりゃ」


 

 羅刹鳥との戦いの時にさとりと交わした約束。

 あれから一度もさとりは語り掛けてこないけれども、待っているに違いない。

 

 氷花さんと先輩は暇だから付いてくると言いだした。

 今日その約束を果たそうと思っている。

 

 

 

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