都会とリンゴ
南の島の男の話…
世界を周っていたのも、今は昔…
勝は25になっていた
実家のカマボコ屋を忙しくしていた
母と従業員だけで切り盛りしていた
姉達や妹は皆、無事嫁に貰われ
幸せに暮らしているという…
そんな話を聞いていたのだが
突然義弟が泣きついてきた
妹が義弟に愛想を尽かして
都会に出て行ったという
あの妹の事だ…と心配はしていなかった
だが義弟は頭を下げ
一緒に探して欲しいと頼み込んできた
そうして勝は都会へ向かう
義弟と2人で
都会で女性が行きそうな所を
周ったが流石都会だ…人…人…
まさに雲を掴む様な状況であった
しばらくして
問題が発生した、金が無い
2人で別々に働きながら
探すという作戦に出た
勝は妹を探しながら働ける
車移動で網戸を修理をメインとした
万屋で働く事になった
手先が器用な勝は大抵の家具は直せるが…
都会の洗礼に遭う
誰も仕事を依頼しないのだ
日に日に、金も無くなり
とうとう食べるもの無い
空腹で車に乗り
勝「ご町内の皆様、おはようございます
網戸の修理、家具等の修理承ります…」
と歌いながら妹を探す
今日も依頼無く…
日も落ち、電灯の無い暗い夜道を走っていた
少し田舎の側に行き過ぎたのだろう
家の明かりもない
空腹のまま、車内で眠った
朝、日が昇って
車の横を見ると
大きく赤艶のあるリンゴがあった
勝の止めた車の横に林檎の樹がたくさん並ぶ
空腹の勝は、リンゴに手を伸ばす…
すると後から「1個だけだよ」と女性の声が聞こえた
振り向くと農家のオバサンが立っていた
勝は礼を言うと直ぐ、とても美味しそうな
リンゴをいただいた
急いで食べる勝を見て
農家のオバサンは不思議そうにしていた
勝「ありがとうございます…リンゴの礼に
家の網戸を直させてください!」と
オバサンに深々と礼をした
女「分かりました…では、家に来てください」
とオバサンは指を指した
指した方にはとても大きなお屋敷があった
その日からオバサンの家の
破れた網戸や家具を直し、
直した分のリンゴや食事を貰った
オバサンから喜ばれ
紹介で近所、そのまた近所…と
仕事の依頼が無くならず
お金の問題も解決したのだった