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彼は宇宙病患者  作者: ののの
兇状流れ、力と咎 1
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7 ポスターヒーロー

 ──メリンに呼び出しがかかる少し前。


 ちょうど火星の都市、コーララ市で銀河超獣が討伐されたとエトワルが観測した頃だ。その情報はエトワルの最高責任者にも届いていた。


「ほう、卒業したての若造がやったのか」


 茶色の髪をオールバックに撫で付けているものの、すぐ触るのでザンバラになっている壮年の男がいた。エトワルの最高責任者で太陽統一軍大佐のジョーマ・ミユキという者だった。


「はい。とても優秀な生徒と伝え聞いております」


 ジョーマは執務机に座って正面に立つ教官長から提供された資料を見ている。


月白(つきしろ)か。隊長のやつは中々に良い顔ではないか?」

「はい、かなりの美貌だと小官も考えます」


 岩のような顎を指で撫でながらジョーマは何か考えている。それを見た教官長は少し背筋が寒くなった。まだ未来ある彼らをどうしようと言うのかと。

 そうして幾分か経ったあと、ジョーマは口を開いた。


「この功績を利用してコイツらには広告塔になってもらおう」

「……良いお考えかと」

「っし!じゃあアイツらを連れて来てくれるか。機体の方は俺がなんとかするぜ」


 そう言うジョーマの指示を聞いて、早速このエトワルの通信士に連絡してもらうよう取り付ける教官長だった。


◆◆◆


 ジョーマの思いつきから数分後、先に入室した教官長に続いて、メリン達も入室する。先頭のメリンは出来るだけ自分の緊張が相手に伝わらないようにして平静を保っている。続くエルネストは手と足が一緒に出るほど見事にカチコチである。ただそれに続くルキとトーワはむしろそのエルネストを見て緊張が緩んだのか、意外にも落ち着いているようだ。


「月白部隊、メリン・マンタルドウ以下3名ただいま参上いたしました」


 メリン達は整列したのち部屋の主人であるジョーマに到着の旨を伝えた。それを受けたジョーマは深く頷き、いつもの調子とは裏腹な重々しく口を開く。


「此度のコーララ市における銀河超獣討伐任務、見事完遂してきたと報告を受けている。まだ成人もしていない若者が奮闘したとなれば、このエトワル、いや太陽統一軍全体の士気も上がることだろう。良い働きだったな諸君」

「はいっ!」


 おそらく威圧的に見せてからかっているのだろう、少しジョーマの顔がにやけている。ついでにメリン達の側に立つ教官長も苦い顔をしている。そして当のメリン達は誇らしげである。

 初任務の成功の実感を一番に感じているのはこの4人なのだし、見事に仕事が出来たのだと嬉しい限りなのだ。


 やはりというか空気を初めに壊したのは、この陳腐なコントの首謀者であったジョーマだった。


「ガッハハ!もういいぜ!堅いことは苦手なんだ俺ぁ。お前たちをからかってやろうと少し遊んだだけで普通はもっと楽にしていいんだよ、こういうのは」

「…は、はぁ」


 メリン達は突然のことで頭が働かない。困っている風の後輩達に助け舟を出したのは教官長だ。


「大佐殿、あまりにからかいが過ぎます。まだこういった経験もない者らですので…」

「俺は特に偉ぶるとか尊ばれるとかが嫌いなんだよ。報告とか連絡とかもあんま量が多いと面倒くせえしな」


 このちゃらけた言葉遣いが本来なのかとメリン達が疑い始めた頃、ジョーマから「実は」と言葉が聞こえて背筋をピンと伸ばし直した。


「ああ、今回呼んだのは他でもねえ。お前らを評価して専用機をやろうと思ってんだ」

「せ、専用機でありますか?」


 突然のことについ口を挟んでしまうメリン。専用機という単語は、訓練校であってもついぞ聞くことはなかったからだ。おそらく、横に並ぶあとの3名も同じような疑問符が浮かんでいそうだ。



「お前らが使ってるアリヴァナは随伴機と呼ばれる機動兵器(ジャーグ・ドゥー)なんだ。本来は指揮官機に付随して使われるからそう呼ばれるんだな。そんで、このエトワルには指揮官機と呼ばれる機体を持ってる部隊は駐屯してねえ。だから功績を挙げたってんで、お前らに使ってもらいてえって話だな」


 メリン達の疑問は、今まで感じていた意気揚々とした気持ちと()()ぜになって大いなる懐疑心を生んだ。そこまでのものかとそう感じている。


「大佐ぐらいになるとそういう提案にも融通が効くんだ。まあ一度はこういうのに憧れるしな、この世界に15機しかない機動兵器(ジャーグ・ドゥー)に」

「15機…でありますか」


 そう誰かの蚊の鳴くような声を耳聡く聞いたジョーマは、口の端を吊り上げて自分の話が理解されていっていることをほくそ笑んだ。


「わりいが、少ないから全員分はないんだな。メリンにはその指揮官機が与えられるが、他の奴らはチューンアップされてアリヴァールナというのに乗ってもらうことになる」


 始めは単なる激励だけだろうと、運が良かったとかアリヴァナの性能だとか言われて、自分達の実力以上の結果をたしなめられるのではとメリンは考えていた。しかし現実はこうだった。束の間に覚えた懐疑心はメリンにはもうない。あるのはやはり最初からある誇らしげな気持ちだけだった。


「ではお前らには受領のために一旦地球に行ってもらう事になってる。期待してるぜ!」

「地球…」


 かくしてメリン、エルネスト、ルキ、トーワの月白部隊は地球行きの任務を拝領したのだった。

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