10 流星祭り
ある日のこと。それなりに忙しくしていた彼の腕時計型スマートデバイスに『お知らせ』の通知が入った。このお知らせ機能は、住んでいる地域の情報が機械的に送信されるシロモノで、今回の場合は流星祭りというものが開催されるというものだった。
地球にたまに飛来する隕石。かつての戦争の大質量巨大隕石爆弾で壊滅的な被害を受けた地球だが、今でも意外と神聖なイメージを持たれている。この時代においても流星というのは美しく超自然的な憧れを人々に抱かせていた。
特に地上から見ると、大気圏を突入する時の熱で普段透明のエーテルが黄色や緑に強く発光するのが美しいのだ。
「もうこんな時期か」
実にところ、群衆は嫌いな彼だが流星祭りにはよく足を運ぶ。あまり感情は揺れて動くタイプではないのだが彼は宇宙という分野が好きだった。生まれた時から宇宙を身近に感じられる現代でも憧れは弱まることを知らない。よく1人でいる時は空を見上げて何かを呟いているほどだ。
「先輩も行くんですか?流星祭り」
声をかけてきたのはマニカだ。同じように通知が来たのを話題に彼に話しかけてきた。いつものようにハイテンションという感じはしない。
「ああ、そうだよ」
「私はああいう、上を見上げているだけのイベントってな〜んか合わなくて、退屈じゃありません?」
「……僕はあまり気にしないな」
以前のお互いの歩み寄りから微々たるものだが多少の進展をした両者だが、やはりそう簡単に変わるものでもなく彼としてはこの申し出をありがたく受け取ることにした。
◆◆◆
流星祭りは地球の催し物として非常に有名で他星から観光に来るくらい地球ならではのイベントだ。先述のように大戦争によって大きく削られた地球を、今ではエンベローププレートという外殻で覆っているので、地表は昔より2000メートルほど高い位置にある。大気も少し薄くなっていて、発光する隕石を大迫力に間近で見れるのだ。
他星にはない独自の超自然的なエンターテイメントが見る者を虜にする。
ビュースポットとしていくつかある場所には多くの群衆が集まっている。高い場所にある広場などがそうだ。もちろんウユカヤ復興資料館も小高い丘の上にあるので絶好のビュースポットと言える。
しかし彼はその場にはいない。ガヤガヤとうるさい場所より1人落ち着ける場所が好きなのだ。
復興資料館より街の方へ行くと、意外とビルヂング街がある。鬱蒼と並ぶビル群は、さながら天空都市と言える。200メートル級のビルが並ぶ姿は、人々に宇宙への憧れを想起させているのか。
「やっぱりいつも静かだなここは」
彼がいるのはこの天空都市で最も高く、全高431メートルもあるこの街のランドマークタワーのテッペン。トラス構造で作られた梁に座って宇宙を見上げている。彼はこの場所が好きだ、宇宙が近くに感じられて。
流星祭りは惑星規模の一大イベントで1週間ほど定期的に流星群を降らせる。地球政府はこのイベントに合わせて微細隕石を漂わせていて、意図的に流星群を作り出すことができる。風情がないと気づいている者もいるだろうが言わぬが花なのだ。
地上では、色とりどりの尾を伸ばして飛来する流星に歓声をあげている。青や黄色、赤緑白など含有鉱石などで様々に煌めくのが美しい。
タワーの先に1人でいる彼も、それを見て感嘆の気持ちでいた。だが、遥かに高い場所にいるからこそ彼は空の先にかすかに気配を感じたのかもしれない。彼のよく見える目では、はっきりと隕石とは似つかわしくない生物的な塊が飛来してくるのが見えた。
視認するやいなや彼は二本指を伸ばして目標に指差す。極細の糸のようなレーザーが天に向かって伸びていった。
「……銀河超獣。隕石とともに堕ちて人類に害なす存在」
銀河超獣に命中したすぐ2本の伸ばした指をスナップさせてピースサインのように弾いた。そしてその2本が閉じられた時には、宇宙に虹色めいた色の流星群が生まれたのだ。
「今はお呼びじゃないよ。ほんとに害虫以外のなんでもないよね。宇宙害虫に改名でもしたらどう?」
そのまま飛来していれば大災害になっていたであろう銀河超獣をほんの数秒で仕留めてみせた。優に50メートルを超えそうな巨体が、塵になってエーテル摩擦と空力加熱で焼けていく。
地上では更なる隠し玉などと盛り上がっているかもしれない。それが侵略生物の亡骸などと知らずに。
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