第365話 お茶会だ(キャクヨセシャルル)
「ではシスカ様、どうぞ披露してください」
「はい、ありがとうございます」
私主催のお茶会のため、オベイロス貴族が暴れるようなことは無い。多分。
リヴァイアス侯爵である私の貸した茶器に私の出した茶葉で外国の姫君がお茶を淹れていく。
お茶は作法もあるし、各国で飲み方が違っていたりもする。茶葉も交易で手に入ったものもあるし、なんならリュビリーナ経由でも揃えてもらった。
前世の紅茶も多種多様な種類の茶葉があった。和紅茶に中国の紅茶、イギリスの紅茶、スリランカのお茶……同じような茶葉のはずなのにどれも味も香りもぜんぜん違う。加工次第で烏龍茶のようにもなるし――――なによりお茶には価値がある。
人は衣・食・住のそれぞれを追求していった結果か……ただの飲み物であったお茶は個人の消費にとどまらず、国境を跨いで運ばれ、果ては経済を動かした。
彼女らの国元の作法で淹れてもらい、それを飲む。
同じ茶葉でも各国の人間がいるため各々の国の作法にあった飲み方であるとは限らない。それは各々の国で育まれた価値観である。人によっては間違った作法で茶葉を無駄にしているようにも見えるかもしれない。それでもそれを咎めるか、それとも寛容な姿勢を取るかを見ることが出来る。
姫君の中には「お茶を淹れてくれませんか?」という私からの申し出に対して「無礼者が」とでも内心思っているかもしれないが、それはそれで態度が見れるというもの……チェックチェック。
「我が国では茶葉は氷に沈め、数時間かけて作ります。これらはあらかじめ作ったものをお出ししております。菓子と合わせて飲んで頂ければ幸いです」
淹れ方を見せた後、料理番組のように出来上がったものを出すことになった。
「まぁ、こんな飲み方があっただなんて」
「美味しいわ」
「早く飲んで」
「美味しくない茶葉だと思ってたけど淹れ方が違ってたのね」
味の評価はそれぞれ、美味しい美味しくないの感想はあるだろう。
長机にずらりと並んだ令嬢から聞こえる。毒見役に飲ませてから飲んでいる令嬢もいるな。まぁいいけど。
「うむ。……冷たいが、これはこれで暑い時期に飲めば良さそうだな」
「まぁっ……嬉しいですわ!」
まぁ、参加者がおとなしいのは客寄せパンダことシャルルが参加しているからだろう。
この会の開催には開催前から姫君からの賛否両論があった。
これまでお茶会どころかお見合い大会にも顔を出さなかったシャルルを引っ張り出したことはプラスにとられたし、リヴァイアス家が王宮で様々な事業を行っていて食品の持ち込みも許可されたこともあって毒の対策も兼ねてまとめて用意するからと説明すると多くの姫君が賛同してくれた。
しかし、人によっては「侯爵ごときが王族に対して茶を淹れろだなんてどれだけ下に見ているのか」とか「この催しを我が物顔で支配していて気に入らない」ととっている人もいるにはいる。まぁ「機会を用意してくれた」と好意的な意見が多いみたいだ。
別に姫君本人がお茶を作らなくても、従者が淹れてくれればいい。お茶請けもこちらで用意してもいいし、徹底的な監視下のもとでなら作ってもらっても良い
ちなみにこの茶葉、オベイロスでも売っているが美味しくないことで有名だった。なにせお湯で淹れれば渋味と苦味が出てくる。しかし氷で抽出したこのお茶は麦茶のようなコクに心地よい渋みに……ほんのりと甘みが出ていてとても飲みやすい。菓子の甘みがより強く感じる。
「じゃあ次の席ね!」
「今度こそ……我が神よ!」
「天使様悪魔様精霊様!おねがいっ!!」
「楽しみね」
お茶数杯ごとに数回、席替えもする。
くじを引いて次のお茶会でその番号の席につく。会場の横の壁に文官が次回の席を掲示していく。
その場でくじを引いて座るのも考えたけど人数の多さからもたついたり混乱があると思うから次回だ。文官には負担をかけるけどそこは仕方ない。
ちなみに私は主催者としてずっとシャルルの隣である。ギラつく令嬢方の視線が怖いしフリムちゃんもくじに混ぜて欲しいがシャルルが指定した。エール先生とジュリオンはくじに参加せずに前でお茶を淹れるのに手伝いをしてくれている。私が率先して手伝うべきだと思うのだけど座っているように言われた。
騒ぎを起こせばお茶会から追放となる。そのため隣り合った令嬢の国元の仲が悪くても喧嘩になるようなことはない。冷たい空気は漂うかもしれないが。
「あの、陛下はどのような歌がお好きですか?」
「歌か、聞く暇がなくてな」
「なるほど、次の機会を楽しみにしています」
お茶を淹れた場合、ほんの少しだけシャルルと話せる。
シャルルがなにか聞かない限りは一言程度だ。
会場では四列に並べられた長机にお見合い参加者が座り、結婚の高砂席のようなポジションにシャルルとくじ当選者、それになぜか私がいる。
長机の前の席には聞こえても奥の人にこの会話は聞こえないだろう。前の席の人はこの情報を持って次の席での話題になる。
シャルルへのアピールが出来るこの絶好の機会。人となりを見るのにはちょうどいいだろう。ディア様も参加したがったので「元王家の人間としてお見合い会場の様子を見るため」と称してシャルルの反対側に席を作っている。
何人かの高位貴族がディア様の席に並んでいるそうだがこれは助かる。参加人数も多く居て全体を監視することは出来ないし、向こう側も監督役がいれば喧嘩を防げるかもしれないしね。
他国のお茶やお菓子が気になってるだけな気がしなくもないけどね。
よーし、GW期間中は毎日更新できた!え?GWはもう終わってるって?……多ければ多いほうがみんな好きでしょう?







