第355話ドゥッガ⊃パキス
フリムは無事だ。それは確かで、俺は働きもした。
皆俺を褒めるが……俺は上手くやれたのか?
どうしても考えてしまう。なにせ余計なことをしちまった。
今回、一番役に立ったのは親父だ。クソスーリを倒せたのは親父で、しかも親父はスーリの術にかかっていなかった。ほっとけば親父が全部上手くやってたかもしれねぇ。
最後の一撃だって手伝いはしたが……むしろ俺の毒針がなければ親父は傷もつかず、手伝いもいらなかったはずだ。
ならむしろ――――俺はフリムを危険に晒しただけじゃないか?
「そうか」
「…………」
親父に、何があったのか細かく報告することになった。
親父はフリムの筆頭家臣で、俺は分家ドゥラッゲン家の人間だ。
しかも、フリムの家の家臣である肉団子をボコって眠らせた。いつもなら逃げるとこだが……肉団子に捕まっちまって、全部洗いざらい話すことになっちまった。
「結果としてお前は俺がスーリをぶっ飛ばすのを邪魔したわけだが……」
そうだ。俺が何をすることもなく、親父がスーリをぶっ飛ばせたんだ。
しかも俺がディーンの兄貴や、貴族の連中に声をかけたからむしろヒデェ事になった。フリムには王都に戻るように言ったが……言うだけじゃなく、樽にでも詰めて連れて帰りゃよかったかもしれねぇ。
「まぁ、結果は結果だが、お前はお前なりに考えて、出来ることをしたわけだろ?なら良いじゃねぇか」
「……良くねぇよ」
「良いんだって、お前からすりゃ俺は操られてたように見えてたわけだろ?」
「まぁ」
「ならしゃあねぇんだわ。上位存在相手にどう立ち回ったってうまくいくとは限んねぇし、フリムは……フリム様は無事だったんだ」
かもしれねぇ。だけどそれは結果だ。
あの時ああしていれば、もっとこうしていれば……そう思っちまう。
城はおかしな造形になっちまってるし、怪我人も多い。こうなったのは俺の行動の結果で――――褒められることなんて何一つない。
「…………」
「それに俺からすりゃ、こうなる前に俺がフリム様を探し出せてたら良かったんだが…………ダァッ!もう!顔上げろ!お前は出来ることをした!フリム様も俺も無事だった!取り返しのつかねぇことにはなってねぇ!わかるか!」
肩を掴まれて揺さぶられ、顔を上げると……らしくねぇ親父の顔がそこにあった。
今までなら冷たい目で、殴られて怒鳴られてた。今考えれば親父は親父で注意してくれてたんだろうけど、その時は親父の言うことなんか聞く気もなかったし賭場の仲間にも迷惑をかけて……俺は怒られて当然のクソガキだっただろう。
「わかんねぇよ」
「わかんねぇか!褒美だ。受け取って帰れ!」
「受け取れねぇよ」
何も上手く出来てねぇのに、褒美とかもらえるわけがない。
「そう言うと思った。フリム様から伝言だ。『パキスはきっと素直じゃないので褒美は受け取らないと思います。なので受け取らなかったら捕まえてズボンが破れるまで金貨を詰め込んでやってください』だとさ。どうする?」
「受け取る」
親父から逃げ切れるとは思えねぇ。しかも親父ならやる。絶対にやる。
「おらよ。受け取れ――――……良くやったな」
ズシリと重い箱を渡され、両手で受け取ると……ゴツい手で頭を撫でられた。
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全く、素直じゃねぇな。
パキスはむっつりした顔で受け取って帰ったが、ちゃんとわかってんのかねぇ。
やっぱ「父親」ってのは難しいなぁ。
俺は親父が嫌いで、親父みたいにはしたくなくて……生きるためのことばかり教えてきた。部下の統率、敵と味方の見分け方、舐められない態度。
礼儀作法がどうのとか、魔法を使えねぇやつは出て行けだのとは言わず、人に任せずに自分で教育した。下町は危険ばっかだし、生きるためには必要だと思っていた。
息子達は皆強く生きてくれた。
もう貴族じゃねぇと、本を読んだり魔法を学んだり踊ったりは教えてねぇし礼儀正しくもねぇが、とにかく強く生きてくれた。
――――だが、それが良くなかったのかもしれねぇ。
乱暴者な俺に似た息子達。特にレルケフだ。
誰も信じようとせず、利益を求めて仲間も俺も裏切っちまった。……俺のせいだろうな。
生きていれば息子だし助けてやりてぇとも思う。だが、家臣としてはこの手でぶっ殺さなきゃならねぇ。もう死んでると思うが……もしも生きてたらと思う日もある。
あんなでも俺の息子で、一緒に酒を飲んで、一緒に賭場を守ろうと頼りにしていた。
死体でも見りゃ納得出来ただろうが、見つからなかった。…………考えても仕方ねぇか。
しっかし、パキスは成長したな。
楽しげに襲いかかってくるディーンの影からちょこまかと毒針を投げてきて厄介だったし、何本か食らっちまった。
戦い方は小狡いが、魔法使いが相手なら距離を取っての攻撃は当たり前だ。まだちっこいし、敵がデカけりゃ近づかないようにするのも正しい。
フリムが来る前のパキスは敵だと思えば誰にでも噛みつくような荒々しさがあった。味方を味方と思わず、迷惑をかけても気にもしないなんてこともあった。
フリムと出会ってからあいつは変わったな。
なんでかフリムの後ろにずっとついて回ってるし、初めは復讐でも考えてんのかと思ったが……自分を高めてるのを見るに見返してやりてぇのか、役に立ちてぇのがすぐに分かった。
素直じゃなさすぎるにもほどがあるだろう。息子ながらに完全に不審すぎる。多分ウジウジ考えてんだろうが……そういう時期もあるわな。
以前のようなクソガキじゃないあたり、俺の教育でそうならず、親父の教育でそうなったと思えばなんか複雑だが……どうなるか楽しみでもある。
自分と向き合って、自分のやり方を変えて生きるってのは簡単のようで難しいもんだ。
少し拗らせすぎてる気もするが……まぁモーモスと本家のクライグとたまに一緒にいるらしいし、自分で学ぼうとして尊敬できる相手を選んで教わっているようだ。勉強はまだまだらしいが、それでも自分を見直して生きている。
俺も家庭教師のクソに毒を飲まされる前に、親父と向き合ってれば……もっと違ってたか?
…………考えても仕方ねぇな。
正しかったか正しくなかったか、結果を出せたか出せなかったか……そんなこと、すぐにわかんねぇこともあるのに、それがわかってねぇんだろうな。
そもそもフリムの選択でフリムはあの場にいたんだ。その上でフリムにとって満足できる結果をもぎ取ったんだから誇るべきだろう。
それだけ慎重に物事を考えるようになったってことか。まぁ正しかったと思えるように出来るだけ褒めてやることにしよう。
「ディーン、何ニヤついてやがる」
「いや?ドゥッガも親だなってな」
静かにしていたディーンがクスクスと笑っていた。
だいたい考えてることはわかるが。
「お前はどうなんだ?子供とかいんのか?」
「俺か?俺はまだ24だぞ?鬼としては成人したばか――――「その面とその胸毛でか!?」
子供が見ると泣き出すこともある強面で、暑苦しい胸毛で……俺と同じぐらいかと思ったらまだ青年だと!?
「へへっ、良い胸毛だろう?」
「褒めてねぇよ!!?」
どこか嬉しげにしているディーン……亜人は年齢がわかんねぇこともあるがこれには驚いたな。
GW!5月9日に新刊発売、そして今は大型連休……時間を潰したい人っているんじゃないかな?と思い、ちょっと多めに更新!
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