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第234話 大魔獣っ!!


フリムから挑戦状が届いた。娘からの手紙だと思って期待したというのに……。


しっかし……よくもこんな古い制度で儂を呼び出すものよ。


しかし無視はできん。ライアーム様はフリムを「殺さない程度にいたぶって来い。何なら殺しても構わん」とおっしゃったが……つまり最低でも骨をいくつか折るなり、両腕を切り落として来いということだろう。


怪我をさせては儂の立場が危ういが、もはや儂は不要と思われているのかもしれん。なにせフリムは我が姪……シャルトル王との関係と噂されるフリムのことをライアーム様は毛嫌いしている。


だからといって儂に当たられてもな……いや、これは忠義を試されているのかもしれん。



最近はもう、ライアーム様はうまくいかないことばかりでおかしくなってきている。



毎日のように離反者は出てきているし、たまに配下から暗殺されそうになっているのだから心休まることはないのだろう。もしかしたら儂がフリムを裏で支援しているようにすら見えているのかも…………いや、臣下の裏切りは全て儂のせいと思われているのやもしれん。


儂は、水の代表としてやるべきことをしないといけない。



「頃合いか……首尾は整ってるか?」


「はい。少しずつこちらに向かってきております」


「……そうか」



日々の鍛錬を終わり、思案する。……素振り五千では足りんな。



やはり宰相の爺の策だろうか?儂を王都に呼びつけている間にライアーム様を狙う気かもしれん。あまり人員は連れていけん。


フリムはおそらく、リヴァイアスの加護によって全能感を持ち……儂であっても倒せると本気で考えているのだろう。若い時分に精霊と関わりを持ったものによくあるうぬぼれだ。


そういう勘違いを正すための制度でもあるが……今やられると厄介だのぉ。


場所は学園と決まっているし、出向かねば大家の座を降ろされることだろう。そうなれば儂の理想が――――ここまでの計画が全て消えてしまう。



本当に反吐が出る。この精霊が理不尽に全てを決める世界に。腐りきった貴族に。定められた争いに。


――――何も知らない姪を敵に仕立てたシャルトルに。愚かにも敵となった我が姪に。



「槍を使いますか?それとも剣?」


「剣だ」



槍よりは切り落としやすいだろう。


差し出される剣を受け取るが……いつもよりも重く感じる。


この剣を姪に向けることとなるのか。



ズシンズシンと、大型魔獣の歩みが木々を震わし轟いてくる。


木が割れ、メキメキと倒れる音が……震源が近い。




思えば長くここにいたものよな。




剣を肩に担ぎ、奴が来るのを待つ。




ここは王家の直轄地。王の血族でもなければ倒せないような魔獣の住む封地。


大型魔獣グラティアス・シュラムがいる。幾多の精霊を喰らった魔獣。火に絶対の耐性を持ち、大地を溶かし、風を巻き起こす大魔獣。


背中から溶岩を流す亀と竜の間のようなその魔獣は……軍がいくら挑んでも勝てなかったオベイロスに巣食う災厄。


どのような存在でも勝てなかった。狙われたが最後、村だろうと町だろうと焼かれてしまう。水の大精霊と契約した王家の人間でも……我が国が誇る無敵宰相を持ってしても殺すことの出来なかった大魔獣。




「ふぅー………………………しぃっ!!!」




木の上からひょっこり顔を出したそれの首を、一振りで飛ばした。





「――――これで、儂がここにいた名目は立てられるか。ルカリムよ」




轟音を立てて落ちる首。それまで感じなかった熱気を伴う風が強く舞い……魔獣の死を知らせてくれる。


冷たい空気を伴って現れたルカリムに一礼し、沸き立つ部下共にその場を任せた。



この場に娘がいないのは残念だが、これも仕方なかろう。


評価やコメントやブクマやレビューなどなど、ぜひともお願いします✨️


皆様の応援もあって僕は楽しく書けています(*´ω`*)


名前や名称覚えられる人すごいなぁって思うのです。それも今まで全然触れてこなかった文化圏の方の名前、それも多数なんて……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] うそーーん!めちゃめちや強いおじさん!
[一言] 大精霊ルカリムを擁し剣の腕は歴代王族が倒せなかった大魔獣の首を一刀両断するって何処の勇者ですか…。 フリムからするとかなり相性不利では? 水素ブレスによる爆炎は発動しないし、氷そのものは制…
[一言] これ普通に考えるとたまたま大精霊引いた傀儡にされてる哀れな姪が調子に乗って挑戦しに来た図ですよね。 本当に爆発と氷結ハンマーを使いこなして、領地の施策をたくさん通して発展させて、軍を率いて隣…
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