第20話 貴族の仕事三日目。
パキスのことでどうなるかは心配だが、そのまま仕事は続いた。
トイレやぬめる床も掃除すると貴族様はとんでもなく喜んだ。わかる、トイレは綺麗な方がいいし、ブラシで強く擦っても取りにくい汚れってあるよね。
ミュードはいつの間にか居なくなったが夜にはパンを届けに来てくれた。貴族様からはより良いご飯を出してくれるようになった。
「貴族様の屋敷だと飯が出ないことも普通だからなぁ」
「そうなんだ」
ミュードは奴隷には優しいのかも知れないな。
石像掃除は高圧洗浄にも限界はあった、素材そのものが緑色になっているものもあったが、それでも初期よりかは大分マシになる。
謎に使えるオゾンや思いつきでアルカリや酸性を強くしてみた水も僅かであるが効果はある……のかな?高圧洗浄した段階でほとんど汚れが取れるし効果の程は定かではない。
掃除の薬品が欲しくなる。それか今は調べるのにリトマス試験紙だけでもいい。目では自分の魔法の変化がわからない、オゾン水は生臭いからわかるけど。
「おぉ、この一番立派なのがこの国の初代王の像だ。気をつけてやれよ」
「はい」
三日目、貴族様が仕事を見に来た。
中央付近のひときわ大きな像は王様の像でその仕事を見守りに来たようだ。庭園の変な像の配置はこの国の領地の位置や貴族の開祖を表しているらしい。意味があったのか。
流石に王族の像と聞いて真剣にした。他の像の5倍は時間をかけたと思う。王冠や装飾品、年月で欠けたり劣化している部分もあるが補修された跡が見受けられる。
美丈夫な男性、顔もいい。像を見ただけで立派そうに見えるのは元の人物もカリスマがあったからだろうか?
いくつかの像は指示付きで行われた。気合を入れる像や壊れそうだから気をつけろとか……そして
「そっちの像はテキトーでいい」
「なんでですか?」
「うちとは仲が悪いんだ。石の攻撃魔法の家でな……うちとはくっそ仲が悪い!何ならそれだけ掃除しなくても良い」
本当に掃除しなかった。バーサル様はみみっちいのかも知れない。
他にもこの国の中で高名な貴族を教えてくれた。火の属性の魔法の大家や水の大家、風の大家などの特徴は常識らしい。金策や外交、内政が強い高名な騎士などの像に稲穂をもたせたり金袋や剣を持たせていたりするのも意味があるそうだ。
ドゥラッゲンは石の系統の大家で西に領地を持っているが何百年も前に王都に来て都市開発を担っているのだとか。ドゥラッゲン家の像がやけに新しいのは毎年更新されているらしい。やはりみみっちぃ。
このドゥラッゲン家では王家で行われる式典の後にパーティが開かれるのがお決まりなのだとか。
まぁ元路地裏ぐらしのマフィア生活の自分には関係ない。無心で高圧洗浄をかけ続ける。
やっているうちに手の先からだけではなく、少し離れた位置からでも数本同時に出せるようになった。魔法の本で伝説の魔法使いが雷を落とす挿絵があったのを思い出した。
魔法は手の先からじゃなくても出せる。空から雷を落とすことができるなら魔法の発生源は100キロ離れていても可能かも知れない。
考えてみたら使っている水も皮膚が破れて血管から水を出しているわけではない。手のひらの先から出していた。試しにやってみたら手の表面から30センチほどしか離すことは出来ないがちゃんと出せはした。
体の中の何かはぐっと減るし、真っ直ぐ飛ばすのも圧を調整するのも難しいが……それでも練習になる。今は両手の前と胸の前で3本を同時に展開するのが限界だ。
「………器用なもんだな。お前もどっかの貴族の血が濃く出たのかもしれないな」
「私は路地裏出身ですよ、捨てられましたから」
口から出てしまった言葉に少し驚くと同時に納得している自分がいる。
なんで捨てられたんだっけ?
集中と操作が切れて、高圧洗浄が止まった。後ろから頭を撫でられた。親分さんより下手で、体ごと動く。首が痛い。
「お前も苦労したんだな。そうだ、水の魔法だとこいつらだ。刺すなら顔を覚えておいたほうが良いぞ」
「う、あ、はい」
酷い教育である。それでも見に行くとなんか見覚えがあるような……この人たちも髪が青いのだろうか?
「刺した後はナイフをグリっとしろ、ぐりっだ」
「……はい」
刺した後の動作まで教えてくれる……駄目な大人だ。聞いた話ではバーサル様も親分さんも、父親とはすごく仲が悪いらしい。
二人共親とは殺し合ったこともあるそうだ。一度見かけたら魔法でぶっ飛ばしてやれと言われた。
絶対無理でしょ、やったら首になってしまう。
……いや、暗殺に成功したら褒められるのかなこれ?だめだな、マフィア暮らしに慣れて思考が結構危なくなってる。
まぁそれはそれとして魔法に集中する。ただでさえ表面が脆くて欠けたりするのにうっかり砕いたりしたら怖い。
大半の像の清掃が終わった三日目、トイレの掃除なんかも増えたが概ねうまくいっている。
「今日はお前をねぎらうことにした!良い飯食っていけ!」
貴族様はご機嫌のようだ。美味しいご飯は大歓迎である。
「ありがとうございます」
「それと水はまだ出せるか?飲みたい」
「わかりました、瓶か何かありますか?」
「おい、もってこい!」
従者の人が持ってきてくれたので満タンにいれた。微妙にガソリンスタンドの店員のような気分だ。フリム水入りまーす。
「かぁっ!これだこれ!やっぱうまい水出すなぁお前はっ!!もう一杯!」
「ありがとうございます」
ガソリンではなくビールかも知れない。いや、ある意味ガソリンかもしれないな。
ビールはきっと酒飲みのガソリンだ。これは水だけど。
「きっと込められてる魔力が違うんだな、やっぱお前いいとこの生まれとかかも知れないな……。」
じっと見られ、親分さんと同じ視線であると気がついた。
―――……もしかしたら親分さんがこの家から捨てられたように、私も同じようになにかのタブーに触れて捨てられたとでも思っているのかな?
「まぁ食え食え!子供は食った分だけデカくなるもんだ!」
「ありがとうございます」
大きな魚にフレッシュなサラダ、パンではなく煮豆のようなものも出されたがきちんと食べる。
―――やっぱり、美味しい。
魚は塩が効いていて、脂ののったサバのような暴力的な旨味がする。
サラダや煮豆の味は日本のほうが好みの味付けだが栄養を体が求めているのかとてつもなく美味しく感じる。
「ほぅ」
「とても美味しいです。ありがとうございます」
「うむ」
子供が食べるところがそんなに珍しいのだろうか?じっと見られて食べにくい気もするが気にしても仕方ないしお腹いっぱい食べた。
評価やコメントなど、ぜひぜひよろしくお願いします✨
僕は皆様に評価いただけて嬉しくて書けているまであります(*cωc*)







