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第176話 自由将軍……。


元々ローガ将軍はクーリディアスの対応は国から任されて来たわけではない。スライム討伐をしていたら侯爵就任の使者が倒れていたのでついでに来てくれた。しかしクーリディアスとの事情を知って手助けをしてくれることとなった。


特に砦の改良なんかで手助けしてくれる。砦の構造や罠、オベイロスへの撤退戦も考えた戦い方など戦場での機微を加味してアドバイスしてくれる。



このおじいちゃん、昨日は不眠不休の行進をしていて機嫌が悪かったようだ。



彼は頑固で頭が固い。カレーを出せば「誰が作ったんじゃこんなもん!!料理人を呼べ!!」と大声を出し、料理した亜人に向かって「貴様かここまでうまいものを作ったのは!褒美じゃ!受け取れ!!」と金を渡していた。声も大きい。


海戦はローガ将軍も領分ではないが上陸後の行動を考えてもらえば私達に無い視点で準備ができる。特にオベイロスへの道、今はちょうど道が草で分かりにくくなっているのだからと「道っぽく見える道なき道」を作ってくれることが決まった。もしも土地勘がない軍が王都へ進軍してこようとしても迷って行き止まりや崖に向かって誘導するというやり方らしい。


オベイロス国内の人でも迷う人が居そうなので暫くの間は地理に詳しい現地人に案内するように現地の領民に対応してもらおう。商人たちが移動しているしね。


クラルス先生のすすめで彼には捕獲したワイバーンを紹介した。



「おぉ!こんなにもワイバーンが!!部隊を作れるではないか!!!」


「それがそうもうまくいかないのよぉ」



クラルス先生もワイバーンの価値に心躍らせて少し研究していた。


クーリディアスのワイバーンを捕獲したは良いもののオベイロスで捕まえているワイバーンとは品種と飼育方法が異なり、調教に難儀している。


クラルス先生はワイバーンの素材が薬になることもあって興味津々だった。とは言え元気なワイバーンを殺すのももったいないし知っている方法で調教しようとしたが落ち着くことはなかった。


比較的素直な個体はシャルルによって引き取られたがあまり言うことを聞かない個体の大半が残って……たくさん食料をよく食べている。



「数頭譲っていただくことは出来ますかな?もちろんお代は弾みますぞ!」


「勿論、お国のためになればとは思いますが……調教は難しいと聞きますが大丈夫ですか?」


「ワイバーンはなかなかうちには回されないからのぉ……うまくいけばいいがそもそもこのような機会自体が少ないからやってみる価値はあると思うのじゃよ。本音で言えば値は少し安くしてくれるとありがたいが」



この将軍は政治闘争は大嫌いらしく、部下も平民出身や貴族の中でも木っ端貴族と呼ばれるような三男以降ばかりで構成されている。当然、他の騎士団のように貴族が多いわけではないから国から出される予算も少ない。


だが、他の騎士団や軍がやりたがらない仕事を行うためか国民からの評価はそこそこ高い。本人は「押し付けられた」と言うが断れば良いような仕事でも現場に出向く。


他の将軍と裁量権は同じはずなのだが彼は長年に渡って将軍をしていて、かなり自由に動き回る。勝手に動くのは国としてよろしく無いのだが、国にとって役立つことをしているので国もその自由な行動を黙認している。『自由将軍』『雷親父』『先頭指揮官』などの二つ名持ちの変わり者らしい。


王様の命令にもNOと言ってしまう国にとって使いにくすぎる人材だが彼らの存在は国の役に立つためあまり文句も言えない。……見逃されているだけかもしれないが。


ワイバーンはそもそもこの国では希少なので購入しようにもなかなかその機会すらない。一頭でも手懐けられれば連絡や偵察に重宝する。もちろん飛行できる魔法使いもいるし空を飛べる種族も居るには居るが、空を飛べる手段は多ければ多いほど良いそうな。



「大人しくて扱いやすそうな個体をどうぞです。相場はわかりませんのでクラルス先生と相談してください。クラルス先生、少し安めで」


「ありがたい!」


「いいの?金無しって言われてるローガ将軍のところにもそれぐらいの予算はあるし毟れるだけ毟ってもいいのよ?」


「これ!いらんこと言うなクラルス!」



調教に手こずっているのは確かだ。全然成果を上げられないという報告も来ている。


荒れている個体を譲ってそのワイバーンがなにかしでかしてこちらの責任にされたくない。


トラックのように大きなワイバーンが一頭でも解き放たれれば目も当てられない。できるだけ良い個体を譲るべきだ。



「いいんです。国のために働いている軍というのには好感を持てました」


「ええんか?儂は立場上お主が襲われていても助けられんぞ?」



少し戸惑ったように私を見てくるローガ将軍。


ローガ将軍はシャルルとライアームの争いに頭を突っ込まない。これは軍のあり方として普通にありえないのだ。貴族としては誰につくか誰を立てるかで今後の人生が決まる。


政治のあり方として自分の味方になった者を要職につけ、敵対したものは排斥する。味方しなかった第三勢力は味方した勢力よりも優遇されないのは常識である。



「いいんです。私も政治にはうんざりですし」


「そぉか……」


「あ、でも、手が届きそうな範囲なら助けてほしいですね。子供は国の宝ということで」


「はっはっは!なんじゃそれは!!わかった!!だが儂の手が届く範囲でだからな!……それはそうと、しばらく世話になる。こいつらを慣れさせにゃならんでな!」



政治にうんざりというとなにか私に思うところがあったのか少し悲しそうに私を見てきたローガ将軍。少しおねだりすると高らかに笑ってくれた。


ワイバーンは空を飛ぶので大事故に繋がりかねないしゆっくりしていってもらおう。



「わかりました。戦時ゆえあまりもてなしは出来ませんが私の居る限りお風呂だけは入れるようにしましょう。部下の方々の分も」


「気にせんでもええ!じゃが儂は風呂は熱いほうが好きと言っておこう!!」


「わかりました!うんと熱くいれておきますね」


「はっはっはっはっは!!」



きっと悪い人ではないのだろう。


それにしてもどこかで見たような気がするのだが……。


評価やコメントやブクマやレビューなどなど、ぜひともお願いします✨️


皆様の応援もあって僕は楽しく書けています(。-ω-)zzz. . . (。゜ω゜) ハッ!カンゼンニチューヤギャクテンシテルッ!!?

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[良い点] 「もちろんお代は弾みますぞ!」     直後の   「値段は少し安くしてくれるとありがたいが」
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