4.生きていたかったんだ ②
生まれて初めて、救急車に乗った。
何だか、こっぱずかしいな。
え~っと頭の中、整理しなきゃ。
常連客にタバコひと箱が報酬で、バイクレンタル了解して、、、
あの子可愛いから、ついつい、配達OKしてしまって、だるいなと思いながら、何とかバイクにまたがって、、、
途中から記憶飛んでるな~。
あ~、でもやっぱ事故ったのかー。
誰かひいたりしなかったかなあ。
ん?誰?このおっさん。救急隊じゃないよな。普通の服着てるし。なんで救急車乗ってるの?
落ち着け、俺! 思い出せ!
そっかあ。電信柱が顔面ギリギリで、何とか助かって、痛くて寒くて、、、そうだ、誰か通りかかったんだ。
この人がたぶん救急車呼んでくれたんだ。でもなんで、一緒に乗ってる?
第一発見者って救急車にも乗る?
そういえば警察も来てたよな。誰かひいたりしてないよな!?
病院に到着して、検査や処置をうけ、見知らぬ人と一緒に説明を聞いた。すり傷だらけだが、奇跡的に大きな怪我はなかった。
ああ、だんだん思い出してきた。
「路面の状況とバイクの破損状況からして、よく無事だったな」って警察が言ってたっけ。「しかもこの気温だから、発見遅れたら、凍死してたな」って、淡々としゃべってたような・・・。
被害者も物損もなし。ただただ、傷だらけのバイクと俺。
悪運だけか、俺が持ってるのは。 ・・・・・他には何もない、、、、
ただ生きてる・・・
ただ、・・・生きていたかったんだ。
うなだれ、深いため息をついた俺の隣で医者の説明を頷きながら熱心に聞いてるおっさん。
「で、誰?」