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思春期の独り言  作者: NARU
28/32

28.僕の名前は元気です ③

 少しずつ、仕事にも俊明(としあき)(にい)さんや(ほか)の兄さんたちにも()れてきた。

 仕事以上(いじょう)人間関係(にんげんかんけい)心配(しんぱい)だったけど、親父(おやじ)(社長)をはじめ、みんな本当(ほんとう)にかわいがってくれる。こんな僕を()()れてくれる。(いえ)にいるときより、現場(げんば)にいる(とき)のほうが、気持(きも)ちが()()くくらいだ。


 たまの(やす)みに家にいると、(なん)とも居心地(いごこち)(わる)いというか、()が休まらないというか、落ち着かなくて、なるべく()かけるようにしてる。

 ただぶらっと出かけるわけじゃなくて、もう一つの大事(だいじ)理由(りゆう)があった。大事な探し物(さがしもの)が・・・。


 余計(よけい)なことかもしれないけど、探してどうするのか、自分(じぶん)でもよくわからないんだけど、それでも探している。手がかりが少なくて、難航(なんこう)してるけど・・・・。

 大事な探し物・・・それは、つねさんの家族(かぞく)。もし、つねさんの家族が今もつねさんの(かえ)りを()っていたとしたら。もしかしたら、()まってしまった時計(とけい)(はり)(うご)()すんじゃないかと。

 でも、もう(あたら)しい家族と(しあわ)せに()らしてるかもしれないし。それならそれで、そーっとしておいた(ほう)がいいんだろうけど、だけど、わからないから。わからないから、(なに)もまだ。だから、探してみようって、思った。


 つねさんの(はなし)から、予測(よそく)した地域(ちいき)をいくつかピックアップして、その中で高級(こうきゅう)住宅(じゅうたく)(がい)検索(けんさく)した。まずは、つねさんが()てた家を探してみることにした。そこに、つねさんが目撃(もくげき)した部下(ぶか)だった人が今も()んでいれば、つねさんの家族のことを何か()っているかもしれないから。


 (むかし)刑事(けいじ)ドラマみたいにとにかく、(ある)いて歩いて、手がかりを(さぐ)った。休みのたびに地図(ちず)()って、対象(たいしょう)地域(ちいき)に行き、つねさんの話していた内容(ないよう)合致(がっち)する家がないか、(さが)してまわった。白い二階建て(にかいだて)の家。屋根(やね)はレンガ(いろ)(かわら)。車二台(にだい)余裕(よゆう)()められるガレージ。出窓(でまど)にレースのカーテン。レンガの(へい)・・・。

 だけど、そう簡単(かんたん)にはそれらしい家は見つけられなかった。


 そもそも目星(めぼし)をつけた地域があってるかどうかもわからないし、すでに家が()(こわ)されてるってことだってあるかもしれないし、砂漠(さばく)で、指輪(ゆびわ)をみつけるようなものだ。無謀(むぼう)すぎるのかも。こんなことして、つねは(よろこ)ばないかもしれないし、つねさんの家族だって迷惑(めいわく)かもしれないし。


 最近(さいきん)は、難航(なんこう)する捜索(そうさく)に心が()れそうになってきて、気づけば、心があきらめる理由(りゆう)ばかりを探すようになっていた。

 自分(じぶん)(なさ)けなくて情けなくて、()きそうになる。

 僕のやってることって、ただの自己満足(じこまんぞく)迷惑行為(めいわくこうい)かなあ。

 迷惑行為にもならないか。

 だってなんにもわからないままなんだし。

 いつもただ無駄(むだ)(ある)いてるだけだし。

 ああ、僕ってホントだめだなあ。


 (からだ)(ちから)(はい)らなくなって、ずるずるとその()にしゃがみこんで、うなだれた。



 ふと気配(けはい)(かん)じて(すこ)(かお)()げると、(くつ)が見えた。僕の(まえ)(だれ)()っていた。ゆっくり(かお)をあげると、僕くらいの(とし)のシュッとしたイケメンと目が()った。


 「ラーメン()いに()くから()()えよ。」


 その言葉(ことば)反射的(はんしゃてき)()()がり、(なに)(かんが)えずに「はい」と(こた)えていた。イケメンの(あと)をついて歩くこと五分(ごふん)ほどのところにラーメンの看板(かんばん)が見えてきた。


 「ここ!なんか(うま)そうじゃね?

  行ってみたいなって思ってたら、ちょうどおまえが()ちてたから、(ひろ)った。

  行こ!」


 「あ、はい。」

 不思議(ふしぎ)な人だけど、(わる)い人じゃなさそう。なんか、つねさんに(はじ)めて(こえ)かけられたときみたいな。ま、あの(とき)はちょっと、ビビッて()(みだ)しちゃったけど。つねさんとは全然(ぜんぜん)()ても似つかないのに、なんか似たようなあったかい空気(くうき)をまとってるっていうか・・・


 「うまっ!」


 「あ、はい。」


 「俺の目に(くる)いはなかったな。もう数か月(すうかげつ)もすりゃ行列(ぎょうれつ)(みせ)になるな。

  俺(なら)ぶの苦手(にがて)なんだよな。そうなる(まえ)()れてよかったー。」


 「はい」


 ふたりともあっという()(たい)らげて店を出た。


 「あ、あのーごちそうになって、すみません。ありがとうございます。」


 「俺が(さそ)って付き合ってもらったんだから、それが礼儀(れいぎ)ってもんさ。」


 「あ、ああ・・・」


 「でも、気を(つか)うっていうなら、コーヒー(おご)ってくれる?

  食後(しょくご)のコーヒー。」


 「あ、はい。もちろんです。」


 「こっちこっち」


 (かれ)()れて行かれたのは、公園(こうえん)自販機(じはんき)(まえ)だった。


 「俺、これ!」


 ブラックコーヒーのホットのショート(かん)(ゆび)さしていた。僕も(おな)じものを()って、一本(いっぽん)を彼に(わた)した。

 ベンチに二人(ふたり)(なら)んで(こし)かけて、コーヒーを()んだ。僕は本当(ほんとう)はブラックは苦手(にがて)で、普段(ふだん)子供(こども)みたいに砂糖(さとう)とミルクをたっぷり()れて()んでいる。だけど、彼が、ブラックをスッと指さしたのが、カッコよくて、見栄(みえ)()って自分もブラックを買ってしまった。無理(むり)してるのがバレないように、スマートに飲まなきゃと(へん)緊張(きんちょう)してしまった。


 「フッ。ブラック苦手(にがて)なら(ほか)の買えよ!」

 

 え?! ゴホッゴホッ むせてしまった。カッコ(わる)い!ブラック苦手ってバレてる!()ずかしい!


 「大丈夫(だいじょうぶ)か?まあ、ゆっくりしようぜ。」


 「あ、はい。」


 「で、迷子(まいご)ちゃんは(なに)(さが)して、(つか)()てて、(ちから)()きてたんだ?」


 ゴホッ (ふたた)びむせた。彼は僕が途方(とほう)()れていたのをわかって、()えて(さそ)ってくれたんだ、僕のために。

 下手(へた)()(つくろ)っても、見透(みす)かされてしまう!だったら、彼に話してみようか。


 僕は何をどう話していいかわからないまま、人探し(ひとさがし)をしていることを()げた。人と話すのは得意(とくい)じゃないから、まとまりのない、下手(へた)くそな話をしてしまったけど、()いてくれた。


 「へえ、人探しの手がかかりになるかもしれない家を探してるってこと?」


 「はい。」


 「じゃあ、その家のこと、もう少し(くわ)しく聞いていい?」


 「え、あ、はい。」


 僕は()っていた地図(ちず)を見せ、自分が探して歩いた場所(ばしょ)と、家の見た目についてわかることを話した。


 「ふーん。どうして高級(こうきゅう)住宅街(じゅうたくがい)ばっか?高級住宅街に家()てたってこと?」


 「あ、え、それは、家を建てた人が大手(おおて)商社(しょうしゃ)のエリートだった人で、立派(りっぱ)な家

  を建てたって言ってたからです。」


 「へー、じゃあ、本人が高級住宅街に建てたって言ったわけじゃないんだ?」


 「あ、はい、そうです。」


 「ちなみに何歳(なんさい)?」


 「え?んー・・・」


 「(きみ)(きみ)。俺は17。」


 「あ、僕も17です。」


 「タメか。じゃ、もっと気楽(きらく)(しゃべ)れば。その(ほうお)が話しやすいし、こっちも。

  俺は、リョウ。普通(ふつう)にリョウって呼んでくれたらいいよ。」


 「あ、はい。あ、うん。あの、、、 元気です。」


 「?」


 「あ、あの、ぼくの名前(なまえ)、『元気』です。」


 「ああ。よろしく、元気(げんき)。」


 「あ、よろしく・・・」


 「なんで(きゅう)(こえ)(ちい)さくなるの?」


 「なんか、名前()けしてるっていうか。僕が『元気』って、、、

  全然(ぜんぜん)元気じゃないんで。」


 「なんかおもしろい奴だな。」


 おもしろいなんて言われたことがなかったので、どう反応(はんのう)していいかわからなかった。


 「でさー、立派な家(いこーる)高級住宅街とは(かぎ)らないから、一旦(いったん)、高級住宅街は()

  といて、(ほか)になんかその人が話してたことない?」


 僕は、つねさんとの会話(かいわ)(おも)()しながら、なるべく(くわ)しく、リョウ君に話した。


 ひとしきり、僕の話を聞いたリョウ君が、地図(ちず)にマルをつけた。僕がつけたマルとは(かさ)なる部分(ぶぶん)もあったが、だいぶずれていた。


 「このあたりで、それらしい外観(がいかん)の家となると、パッと()かぶのは三軒(さんけん)かな。」


 えっっっ!リョウ君って、何者(なにもの)

 (おどろ)いて、リョウ君を見た。


 「で、(つぎ)、いつ(さが)しに行く?俺も()()うよ。」


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