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思春期の独り言  作者: NARU
24/32

24.てっぺんよりも大事なこと ③

 昔話(むかしばなし)には、まだ(つづ)きがある、、、、。

  

 (たたか)わずして、どこかの 中学の(なん)とかという(やつ)(せい)した俺は、ヤンキー(たち)のカリスマとなった。そのまま、地元(じもと)()だたるヤンキーの(あつ)まる高校に進学(しんがく)し、そこでも、名を()せ、てっぺんに君臨(くんりん)した。

 一方(いっぽう)、闘わずして、()()ちた(なん)とかという奴は、(かぜ)便り(たより)で、(げき)キャラ(へん)し、マジメ(くん)になったらしい。


 あの日を(さかい)に、二人のヤンキーの人生(じんせい)が大きく()わっていったことを、その(ころ)の俺は、(なに)()にせずにいた。


 俺の高校生活は完璧(かんぺき)だった。すべて思い(どお)りだった。()しいものを(くち)にすれば、即座(そくざ)(よろこ)んで調達(ちょうたつ)してくる奴らに(かこ)まれていた。

 誰よりも(つよ)い男に女たちも(あつ)視線(しせん)(そそ)ぎ、女にも不自由(ふじゆう)なく、いや、それどころか、(いそが)しすぎて、女たちの名前(なまえ)(かお)(おぼ)えられないくらいだった。


 高3のある()、ヤンキー二人(ふたり)女子高生(じょしこうせい)(から)んでいるところに()くわした。うちの生徒(せいと)ではなさそうだった。(ちか)くに有名(ゆうめい)(じゅく)ができて、(おや)賢い(かしこい)(しん)じて(うたが)わない(ぼっ)ちゃんやお(じょう)ちゃんを、夜遅(よるおそ)くに見かけるようになっていた。たいがいは親が送迎(そうげい)しているところを見かける(かん)じだった。一人(ひとり)(ある)いている子はめったにいない。まして女の子はなおさら。(めずら)しいから目立(めだ)ったんだろうな。

 なかなか、かわいい、清楚(せいそ)な感じの子だった。恐怖(きょうふ)(おび)え、(こえ)(ふる)えていた。


 「やめてください。」

 ヤンキーはますます(よろこ)んで、調子(ちょうし)にのってきた。

 「やめられませーん。俺たちと(あそ)びに行こ~。」

 「いやです。」

 「そんなこと言わずに、ね!」


 女子高生を両脇(りょうわき)から(はさ)むように、ぐっとつかんで、()れて行こうとした。女の子は(はげ)しく抵抗(ていこう)したが、とても(ちから)かなわず、()きずられていた。


 「へー、(あそ)びに()れてってくれんの?

  よっぽど(たの)しいとこじゃないと、俺満足(まんぞく)できないんだけど。」


 俺の(こえ)(おどろ)いて()(かえ)ったヤンキーは、俺の(かお)を見ると、さらに驚いた。こっちが()らなくても、俺はかなり有名(ゆうめい)だったから。ましてヤンキーなら、俺のこと知らない奴の(ほう)(めずら)しいぐらいだった。


 「すみません。すみません。全然(ぜんぜん)、あの、()らしに()たとかじゃないっす。

  すみません。すみません。失礼(しつれい)します。すみません。すみません。」


 「すみません」を連呼(れんこ)しながら、(はし)()って()った。

 俺は(えき)まで、その子を、(おく)って行ってやった。親が仕事(しごと)都合(つごう)で、(むか)えに()られなくなって、一人で帰っていたら、(から)まれたらしい。


 この出会い(であい)がきっかけで、連絡(れんらく)()()うようになり、つきあい(はじ)めた。とはいっても、有名進学校(ゆうめいしんがっこう)(かよ)令嬢(れいじょう)で、今まで俺の(まわ)りにいた女たちとは、(なに)もかもが(ちが)う。何を(はな)していいかもわからないし、受験(じゅけん)()っただ(なか)で、そもそも、めったに()えなかった。それでも、なんとなく、細々(ほそぼそ)(つづ)いていた。


 (はる)()て、彼女(かのじょ)女子大生(じょしだいせい)になり、俺は、なかなか仕事(しごと)()けなかった。


 完璧(かんぺき)だった俺だが、それは、メッキだったことに、高校卒業(そつぎょう)同時(どうじ)に思い()らされた。ただ喧嘩(けんか)が強いだけの、(ほか)にはなんもないクズだった。それまで、なんだかんだ頑張(がんば)ってきてた奴らは、ちゃんと就職(しゅうしょく)して、一人前(いちにんまえ)(はたら)いてる。だけど俺はなんの努力(どりょく)もせず、楽しいだけの高校生活を(おく)り、てっぺんから、必死(ひっし)こいて頑張(がんば)ってる奴らを見下し(みくだし)てただけだった。そんなクズを(やと)いたいと思うところなどなかった。かといって、自分(じぶん)起業(きぎょう)するような(あたま)()()わせてない。


 てっぺんから(ころ)がり()ちるのは、あっという()だった。()()きはいなくなり、仕事も(かね)もなく、落ちぶれていった。


 そんなクズに、彼女(かのじょ)は卒業後も()わらず、()()ってくれた。女子大生になって、いくらでもチヤホヤされるだろうに、どうして何もない俺のそばにいようとするのか、さっぱりわからなかった。


 そのうち、俺とつきあっていることが(おや)にバレ、即刻(そっこく)(わか)れるように言われた彼女は、家を出て、俺のボロボロのアパートに(ころ)がり()んできた。

 俺は家に(かえ)るように説得(せっとく)した。だが、彼女は帰らなかった。大学を()め、(はたら)きながら、俺を(ささ)えた。

 だけど俺にはそれが負担(ふたん)だった。ほっといて()しかった。彼女ならいくらでも、いい男が()ってくる。俺なんかに(かか)わらない(ほう)幸せ(しあわせ)になれる。なのに、なぜか、いつも献身的(けんしんてき)()くしてくれた。俺は、彼女に引け目(ひけめ)を感じつつも、ますますクズに()()がっていった。


 あの(ころ)、いつもこう思っていた。俺はてっぺんに立った男だ。俺に出来(でき)ないことは何もない!


 だが、実際(じっさい)は、何もできなかった。一度(いちど)(あじ)わったてっぺんの感覚(かんかく)とプライドが邪魔(じゃま)をして、身動き(みうごき)できない。こんなにも息苦(いきぐる)しい日が来るなんて、想像(そうぞう)したことがなかった。

 やがて、彼女のお(なか)が大きくなり、男の子が()まれた。俺は親になった。全く実感(じっかん)がなかった。親になっても、何も()わらず、クズのままだった。


 そして、ある日・・・彼女と子供は、彼女の(おや)()れられ、俺の部屋(へや)から()っていった。


 その後ろ姿(うしろすがた)をぼーっと見送る(みおくる)だけの(なさ)けないカスだった。



 てっぺんより大事(だいじ)なことって・・・あるんだな。

 





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