24.てっぺんよりも大事なこと ③
昔話には、まだ続きがある、、、、。
闘わずして、どこかの 中学の何とかという奴を制した俺は、ヤンキー達のカリスマとなった。そのまま、地元の名だたるヤンキーの集まる高校に進学し、そこでも、名を馳せ、てっぺんに君臨した。
一方、闘わずして、地に落ちた何とかという奴は、風の便りで、激キャラ変し、マジメ君になったらしい。
あの日を境に、二人のヤンキーの人生が大きく変わっていったことを、その頃の俺は、何も気にせずにいた。
俺の高校生活は完璧だった。すべて思い通りだった。欲しいものを口にすれば、即座に喜んで調達してくる奴らに囲まれていた。
誰よりも強い男に女たちも熱い視線を注ぎ、女にも不自由なく、いや、それどころか、忙しすぎて、女たちの名前も顔も覚えられないくらいだった。
高3のある夜、ヤンキー二人が女子高生に絡んでいるところに出くわした。うちの生徒ではなさそうだった。近くに有名な塾ができて、親が賢いと信じて疑わない坊ちゃんやお嬢ちゃんを、夜遅くに見かけるようになっていた。たいがいは親が送迎しているところを見かける感じだった。一人で歩いている子はめったにいない。まして女の子はなおさら。珍しいから目立ったんだろうな。
なかなか、かわいい、清楚な感じの子だった。恐怖に怯え、声が震えていた。
「やめてください。」
ヤンキーはますます喜んで、調子にのってきた。
「やめられませーん。俺たちと遊びに行こ~。」
「いやです。」
「そんなこと言わずに、ね!」
女子高生を両脇から挟むように、ぐっとつかんで、連れて行こうとした。女の子は激しく抵抗したが、とても力かなわず、引きずられていた。
「へー、遊びに連れてってくれんの?
よっぽど楽しいとこじゃないと、俺満足できないんだけど。」
俺の声に驚いて振り返ったヤンキーは、俺の顔を見ると、さらに驚いた。こっちが知らなくても、俺はかなり有名だったから。ましてヤンキーなら、俺のこと知らない奴の方が珍しいぐらいだった。
「すみません。すみません。全然、あの、荒らしに来たとかじゃないっす。
すみません。すみません。失礼します。すみません。すみません。」
「すみません」を連呼しながら、走り去って行った。
俺は駅まで、その子を、送って行ってやった。親が仕事の都合で、迎えに来られなくなって、一人で帰っていたら、絡まれたらしい。
この出会いがきっかけで、連絡を取り合うようになり、つきあい始めた。とはいっても、有名進学校に通う令嬢で、今まで俺の周りにいた女たちとは、何もかもが違う。何を話していいかもわからないし、受験真っただ中で、そもそも、めったに会えなかった。それでも、なんとなく、細々と続いていた。
春が来て、彼女は女子大生になり、俺は、なかなか仕事に就けなかった。
完璧だった俺だが、それは、メッキだったことに、高校卒業と同時に思い知らされた。ただ喧嘩が強いだけの、他にはなんもないクズだった。それまで、なんだかんだ頑張ってきてた奴らは、ちゃんと就職して、一人前に働いてる。だけど俺はなんの努力もせず、楽しいだけの高校生活を送り、てっぺんから、必死こいて頑張ってる奴らを見下してただけだった。そんなクズを雇いたいと思うところなどなかった。かといって、自分で起業するような頭は持ち合わせてない。
てっぺんから転がり落ちるのは、あっという間だった。取り巻きはいなくなり、仕事も金もなく、落ちぶれていった。
そんなクズに、彼女は卒業後も変わらず、寄り添ってくれた。女子大生になって、いくらでもチヤホヤされるだろうに、どうして何もない俺のそばにいようとするのか、さっぱりわからなかった。
そのうち、俺とつきあっていることが親にバレ、即刻別れるように言われた彼女は、家を出て、俺のボロボロのアパートに転がり込んできた。
俺は家に帰るように説得した。だが、彼女は帰らなかった。大学を辞め、働きながら、俺を支えた。
だけど俺にはそれが負担だった。ほっといて欲しかった。彼女ならいくらでも、いい男が寄ってくる。俺なんかに関わらない方が幸せになれる。なのに、なぜか、いつも献身的に尽くしてくれた。俺は、彼女に引け目を感じつつも、ますますクズに成り下がっていった。
あの頃、いつもこう思っていた。俺はてっぺんに立った男だ。俺に出来ないことは何もない!
だが、実際は、何もできなかった。一度味わったてっぺんの感覚とプライドが邪魔をして、身動きできない。こんなにも息苦しい日が来るなんて、想像したことがなかった。
やがて、彼女のお腹が大きくなり、男の子が生まれた。俺は親になった。全く実感がなかった。親になっても、何も変わらず、クズのままだった。
そして、ある日・・・彼女と子供は、彼女の親に連れられ、俺の部屋から去っていった。
その後ろ姿をぼーっと見送るだけの情けないカスだった。
てっぺんより大事なことって・・・あるんだな。




