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思春期の独り言  作者: NARU
21/32

21.てっぺんよりも大事なこと ①

 昔話(むかしばなし)をひとつしよう。


 (わる)ガキだった。

 筋金入り(すじがねいり)のクソガキで、三度(さんど)(めし)より喧嘩(けんか)生き方(いきかた)だった。

 あの日までは。


 とにかく一番(いちばん)(つよ)くなきゃ(いや)だった。強いと(うわさ)のある(やつ)とは、片っ端(かたっぱし)からタイマン()って(たお)してきた。

 あの日までは。


 親父(おやじ)仕事(しごと)都合(つごう)で、()まれ(そだ)った(まち)(はな)れ、中1(ちゅういち)からこの(まち)()んでいる。入学式(にゅうがくしき)からガンガン()めて、ガンガン(のぼ)()めていった。


 俺にとって、この引っ越し(ひっこし)は、人生(じんせい)でたった一度(いちど)、親父に心から感謝(かんしゃ)した出来事(できごと)だった。俺を地獄(じごく)から(ひろ)()げ、(ふたた)高み(たかみ)目指(めざ)すチャンスを(あた)えてくれた。


 中2の(とき)、学校()えて、そこいら一帯(いったい)(だれ)(しん)のナンバーワンなのか、話題(わだい)はいつもそれだった。俺は絶対(ぜったい)(てき)自信(じしん)があった。なんとなく(まわ)りも俺だろなって雰囲気(ふんいき)だった。

 3年生も俺が廊下(ろうか)(とお)れば、(みち)()けて、通り()ぎるまで、微動(びどう)だにしない。


 それでも、てっぺん()りてぇアホが時々(ときどき)(いど)んでくる。まあ瞬殺(しゅんさつ)だが。

 ますます俺の名前(なまえ)()(わた)るようになっていき、気軽(きがる)(いど)んでくるアホも(たたか)ってみてぇと思えるような(やつ)()っていった。


 やがて「ツートップ」という言葉(ことば)時々(ときどき)(みみ)にするようになった。

 どうやら俺のように、挑んでくるアホを片っ端からボコってる奴がいるらしい。

 何となく名前くらいは()いたことはあったが、面識(めんしき)はなく、どの程度(ていど)(つよ)いのかは(まった)く知らなかった。


 そもそも俺の名前が()(わた)るにつれ、「そこいら一帯」の範囲(はんい)(ひろ)がり、だんだん、聞いたことない中学の見たことないアホを瞬殺するようになっていた。

 そんな中、何となく名前を聞いたことあるんだから、そいつは立派(りっぱ)なもんさ。

 (うわさ)本当(ほんとう)なら是非(ぜひ)、やり()ってみてぇもんだ。


 ある日の学校(がっこう)(がえ)

 その日は、(あさ)から、(はら)調子(ちょうし)がイマイチで、とっとと(いえ)(かえ)って、クソして、()たろと思い、足早(あしばや)に帰りたい気持(きも)ちをぐっと(おさ)え、俺に()いてイキって(ある)雑魚(ざこ)どもに、クソもれそーなのがバレないように、いつも(どお)りゆったり堂々(どうどう)(ある)いていた。

 そこに(あらわ)れたんだよなー、(うわさ)(やつ)が。


 ()がワリぃ奴!!今日(きょう)じゃねーだろ!!

 うわっ!やる()満々(まんまん)じゃん。しかもこいつなかなか(つよ)いな。


 百戦錬磨(ひゃくせんれんま)の俺は、相手(あいて)の目を見れば、だいたい力量(りきりょう)がわかった。


 こいつは本気(ほんき)でいかねーと、こっちもやばいな。

 けど、今日の俺は本気でいけねー。それどころじゃねー。クソがしてー!

 どうする、俺!

 (てき)()()けるなんてことは出来(でき)ねー。

 かといって・・・う~ん・・・く、くそ・・・クソしてー!!!


 (まわ)りも、はやし()(はじ)めた。世紀(せいき)闘い(たたかい)目撃者(もくげきしゃ)になる興奮(こうふん)(つた)わってくる。ギャラリーは、どんどん()えていった。


 ()くに引けねー!

 どうする俺!


 その時・・・俺の傍ら(かたわら)に・・・小4の俺が()()うように()っていた。

 視線(しせん)()とす俺。


 ちっちぇーな。こんなにチビだったんだな俺。

 ずいぶんイキってたけど、ただのガキじゃねーか。


 俺の学ラン(がくらん)(ひじ)のところを()()って、俺を見上げる小学生(しょうがくせい)の俺。「(わす)れてないよね?」って聞いてきやがる。


 「ああ。」 と、不愛想(ぶあいそう)(こた)える。俺の(ほう)大人(おとな)げないな。


 忘れるはずないさ。忘れたくても記憶(きおく)にこびりついてるぜ!まるでクソのようにな!!

 俺は(かえ)る。絶対(ぜったい)帰る。家に帰る。()げるんじゃねー、帰るんだ!!

 あの日の誓い(ちかい)には()して(そむ)かねー

 こんな可愛(かわい)らしいガキを二度(にど)(かな)しませたりはしないぜ。


 (ふたた)視線(しせん)(した)()として、俺は、小さな俺に(やさ)しく微笑(ほほえ)んだ。安堵(あんど)表情(ひょうじょう)()かべる小4の俺。


 「なにがおかしいんだ!」

 (なん)となく名前を聞いたことあるそいつがイラついてすごんできた。

 

 「なに下むいて、ニヤついてんだ!」

 イライラMAX(まっくす)のそいつ。


 俺と小さな俺のハートフルな時間(じかん)邪魔(じゃま)してくるとは、なんとセンスのない奴だ。俺は強くてもセンスのない奴は(きら)いだ。一気(いっき)にこいつと(たたか)いたいという気持(きも)ちが()めた。だから()げでも、(つよ)がりでも、はったりでもなく、自然(しぜん)言葉(ことば)が出てきた。


 「俺は()るものは(こば)まず、去る者(さるもの)()わない。喧嘩(けんか)したけりゃ(おう)じるし、

  ()げたやつを()っかけてまで、ボコったりはしない。

  お前(おまえ)(のぞ)むならいつでも相手(あいて)になる。

  ただ・・・」


 ゆっくりやさしく言葉をかけた。

 「ただ、 ただな、 俺の相手になるレベルになってから、来てくれ。

  俺はいつでもいいから。

  ()ってるよ。 そういう日がくることを。

  健闘(けんとう)(いの)る。

  じゃ、 気をつけて(かえ)れよ。」


 俺はそう言って、いつものようにゆったりと(ある)き、()っていった。

 そして、家に()いたら、ダッシュ!

 便所(べんじょ)ー!!

 ()()ったー!!


 便所の(すみ)(うれ)しそうに俺を見る小4の俺。


 約束(やくそく)(まも)ったぜ。

 あの日の約束。

  

 そう、あの日の約束、、、、、




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