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思春期の独り言  作者: NARU
20/32

20.成功者

  「あの、、、、」


  「どうした?リョウ。」


  「LINE交換(こうかん)してもらえますか?」

 

  「ああ、もちろん。連絡方法(れんらくほうほう)があるのは、ありがたいよ。」


 一番(いちばん)世話(せわ)になってるユウさんと連絡先(れんらくさき)交換(こうかん)してないのはどうかと(おも)っていた。仕事的(しごとてき)にも、一緒(いっしょ)()りに行ったりするプライベートの(とき)も、(なに)かと連絡には不便(ふべん)(かん)じてた。俺がそう感じるぐらいだから、ユウさんは、もっと不便だったと思う。

 でも、(だれ)かと連絡先を交換することが、今の俺にはハードルが(たか)かった。それで、なかなか()()せずにいた。


 ユウさんは、たぶん、俺から言い出すまで()っててくれたんだと思う。

 そういう人なんだ、ユウさんは。

 だから、居心地(いごこち)いいし、信用(しんよう)できる()がする。


 そのユウさんより(さき)()()んできたのが、あの親子(おやこ)だ。あの派手派手(はではで)母娘(おやこ)登録(とうろく)されていて、ユウさんが登録されてないって、おかしいよなっ、絶対(ぜったい)


 追加(ついか)されたユウさんのプロフィールの背景(はいけい)画像(がぞう)を見て、なんか(こころ)(なご)んだ。ほんのり白っぽいオレンジに()まった(そら)に、(かお)を出した太陽(たいよう)だった。


 ほっこりする日の出(ひので)だなあ。


 それから、いつものように、買い出し(かいだし)や、掃除(そうじ)をした。

 掃除が()わって、(みせ)のテレビをつけて、(なが)れてくるワイドショーをなんとなく、中途半端(ちゅうとはんぱ)に見ながら、一つ一つ(ひとつひとつ)丁寧(ていねい)に、グラスを(みが)(はじ)めた。

 ユウさんは料理(りょうり)仕込み(しこみ)をしていた。


 すると、ワイドショーはある人物(じんぶつ)特集(とくしゅう)(はじ)めた。「密着(みっちゃく)」ってやつだ。なんかすごい人に密着して、いかにすごいかを深堀(ふかぼ)りする(てき)な。

 最近(さいきん)、よく、テレビやSNSで見かける熱血(ねっけつ)塾講師(じゅくこうし)だった。


 子供(こども)(ころ)は、やんちゃで(まった)勉強(べんきょう)ができなかったが、ある(とき)勉強に目覚(めざ)め、ひたすら勉強して、一流高校(いちりゅうこうこう)一流大学(いちりゅうだいがく)へと(すす)み、独自(どくじ)のメソッドで、(じゅく)開講(かいこう)し、その効果(こうか)がすばらしいと評判(ひょうばん)()び、今じゃ、受験生(じゅけんせい)とその(おや)大人気(だいにんき)。メディア()まくりのおっさん。

 ドラマの設定(せってい)とかにありそげな、()()いたような、成功者(せいこうしゃ)だった。


 番組(ばんぐみ)では、その成功者の(つぎ)なる野望(やぼう)(かた)られていた。

 (だれ)でも、どこでも、いつからでも、(まな)びたいことを存分(ぞんぶん)に学べる場所(ばしょ)。ネットの世界(せかい)理想(りそう)学校(がっこう)(つく)って、あらゆる人に(しつ)の高い教育(きょういく)提供(ていきょう)し、日本の頭脳(ずのう)底上(そこあ)げと、専門性(せんもんせい)をより()追究(ついきゅう)できる理想(りそう)教育(きょういく)目指(めざ)すとか。

 

 すばらしい理念(りねん)だ。少し(まえ)の俺なら、羨望(せんぼう)のまなざしで、このおっさんを見ていたかもしれない。

 でも、今はこういうサクセスストーリーだとか、ハイスペック人間(にんげん)とかをどこか()めた気持(きも)ちで見てしまう。

 同時(どうじ)に、心の片隅(かたすみ)で、うらやましく思う気持ちがゼロではないことにも、気づいてしまう。

 かと言って、(なに)がしたいのか何ができるのか、何も()かんで()ない、何もない、何者(なにもの)でもない自分(じぶん)には、()ややかな目で見る資格(しかく)も、うらやましく思う資格もないような気がする。


 ユウさんは、こういう人を見て、どう思うんだろうな。

 「この人最近(さいきん)、よく、いろんなとこに()てますね。」


 「ん?ああ、そうだな。なんか、すごいらしいな。

  うちのお(きゃく)さんの中にも、子供(こども)がこの人のメソッドで受験勉強(じゅけんべんきょう)して、

  合格(ごうかく)したって言ってた人、いたな。」


 「本当(ほんとう)ですか?ただ、子供の出来(でき)()かっただけなんじゃないですか?

  この勉強法(べんきょうほう)をやった場合(ばあい)とやらなかった場合を同一人物(どういつじんぶつ)(ため)せないじゃ

  ないですか。」


 「まあな。

  でもまあ、これだけ注目(ちゅうもく)されてんだから、(なん)らかの努力(どりょく)一定以上(いっていいじょう)

  やってるのかもな。

  その方向性(ほうこうせい)努力(どりょく)仕方(しかた)(ただ)しいかどうかは、俺にはわからないけどな。

  (すく)なくとも、現時点(げんじてん)ではたくさんの人が(みと)めてるってことなんだろうな。

  このまま、本当(ほんとう)に、素晴(すば)らしい教育環境(きょういくかんきょう)(つく)っていったとしたら、

  すごいだろうな。

  それを(ただ)しく見極(みきわ)める目が俺にあるかと()かれたら、俺にはないな。

  ただ、(ねが)うだけだ。」 


  「願う?何を?」


  「ありとあらゆるものの(しあわ)せかな。」


  「う~ん。なんか、(ふか)いような、(あさ)いような。」


 ユウさんは、苦笑い(にがわらい)した。正確(せいかく)には苦笑いっぽい表情(ひょうじょう)だった。

 (なん)とも言えない、ぴったりくる言葉(ことば)見当(みあ)たらない、そんな表情だった。



 その日は、最後(さいご)(きゃく)(かえ)るまで(はたら)いた。()にちが()わって、夜明(よあ)(まえ)帰宅(きたく)した。


 最近(さいきん)、仕事が早番(はやばん)になった母親(ははおや)を、仕事から(かえ)った俺が()こしてやることが()えていた。

 その日もちょうど、母親が起きるころの帰宅になったので、母親を起こすために、部屋(へや)をのぞくと・・・度肝(どぎも)()かれた。


 なんと、母親がミミちゃんと仲良(なかよ)()ていたのだ。


 はあ?


 母親は、図々(ずうずう)しく(あそ)びにきたミミちゃんを家にあげ、すっかり仲良(なかよ)くなって、お(とま)りまで・・・


 (なぞ)の、三人(さんにん)での朝食(ちょうしょく)

 出勤前(しゅっきんまえ)で仕事モードON(おん)になった母親

 (あさ)からハイテンションのミミちゃん

 (つか)れて(ねむ)い俺


 勘弁(かんべん)してくれ・・・・。




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