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思春期の独り言  作者: NARU
19/32

19.まいごのまいごの子猫ちゃん

 ユウさんに(ひろ)われて、ユウさんのBAR(バー)(はたら)くようになって、少しずつ(なん)ていうか、まともな生活(せいかつ)(おく)れるようになってきたというか。


 (はたら)いたり、食事(しょくじ)したり、ぐっすり(ねむ)れたり、お笑い番組(ばんぐみ)を見て面白(おもしろ)いと思えたり、、、、。

 少し(やみ)が少なくなったというか。気持(きも)ちが(かる)くなったというか。


 バイク事故(じこ)(あと)、LINEも()して、携帯番号(けいたいばんごう)()えた。(だれ)にも干渉(かんしょう)されたくなかったから。そして、(あたら)しくインストールし(なお)したLINEに友だちが登録(とうろく)されてないのや、電話の連絡先(れんらくさき)リストに(だれ)もいないのを見ると、不思議(ふしぎ)(さみ)しさはなく、むしろ安心(あんしん)した。


 とにかく、毎日(まいにち)、少しずつ(なに)かをゆっくり(あせ)らず、()()げているような感覚(かんかく)だった。自分(じぶん)()(なお)すというか、(つく)り直すというか。


 それでも時折(ときおり)、ものすごく(おも)たい(くら)いものが突然(とつぜん)、のしかかってくる。(くる)しくて、(やみ)()()まれていきそうで、息苦(いきぐる)しくなる。


 そういう(とき)に気持ちを()()かせる方法(ほうほう)最近(さいきん)会得(えとく)した。とてもシンプルで、手軽(てがる)で、なかなか効果(こうか)もある。それは、散歩(さんぽ)だ。

 

 散歩なんて年寄(としよ)りのやるもんだと思ってた。だけど、これがなかなかいい。

 事故(じこ)でバイクを廃車(はいしゃ)にしてしまった俺の移動(いどう)手段(しゅだん)自転車(じてんしゃ)(ある)きがメインになった。それで、気が()いた。歩くって、いいな。(やみ)(とお)ざけてくれる。


 歩くスピードで物事(ものごと)をみて、(かん)じて、自分(じぶん)のペースで呼吸(こきゅう)して。

 ()とか(くさ)とか(はな)とか、(むし)とか、今まで気に()めなかったものが、見えてくる。


 自然(しぜん)だけじゃなく、造作(ぞうさく)されたものも面白(おもしろ)い。信号(しんごう)とか、(みち)とか、(はし)とか、ビルとか。

 (とく)に、(いえ)は面白い。平屋(ひらや)二階建(にかいだ)て、三階建(さんがいだ)て、ボロ()豪邸(ごうてい)昔風(むかしふう)今風(いまふう)、大きな(まど)や小さな窓・・・。

 どんな人がどんな(おも)いで()てたのか?

 持ち家(もちいえ)賃貸(ちんたい)

 小さい洗濯物(せんたくもの)()してあれば、子供(こども)のいる家庭(かてい)なのか?

 大量(たいりょう)の洗濯物が(かぜ)になびいていれば、大家族(だいかぞく)想像(そうぞう)してみたり。

 (とき)には、センスを(うたが)うような、奇抜(きばつ)外観(がいかん)の家も。どんな(やつ)()んでんだ?

 

 メンタルのための散歩(さんぽ)趣味(しゅみ)にもなりつつあったある日、散歩に()かけようと、家をでると、迷子(まいご)子猫(こねこ)()くわした。


 ミミちゃんとの出会(であ)いだった。


 俺ん家(おれんち)(まえ)で、()きそうな(かお)()っ立ってる、結構(けっこう)かわいいギャル。

 だけどやたら、ピンクな子で、玄関(げんかん)()けて、(びょう)()いた。

 (ねこ)(みみ)みたいなのが()いたピンクの帽子(ぼうし)かぶって、ピンクのスカート()いて、ピンクのバック()った、得体(えたい)のしれない子に「(なん)か、(よう)っすか?」と(たず)ねてみた。


 「ミミちゃん、スマホおうちにわすれたの。」


 ん?それ、(なん)か俺に関係(かんけい)ある?(わす)れたなら()りに(かえ)れば。

 しかも自分(じぶん)のこと、ミミちゃん()び。まじ、ないわ。

 「はあ。そうなんですか。」

 

 「ミミちゃんのおうちわかる?」


 はあ?まじか?初見(しょけん)の俺に自分(じぶん)(いえ)()くって、だいぶネジ(ゆる)んでないか?

 「いや、ちょっと、わかんないっすねー。」


 「ミミちゃんのおうちしらないの?」


 もう、今にも泣きだしそうなくらい、目の中、(なみだ)MAX(まっくす)!!

 俺が泣かせたみたいじゃん。やめてくれ~。(かか)わりたくねー。

 なかったことにして、スルーして、散歩に行くか。このままもう一度(いちど)、家の中に(もど)るか?うわっ、めっちゃ俺のこと見てる!


 「ほんとに、わかんない?ミミちゃんのおうち。

  ピンクのやねのおうち。

  ピンクのポストもあるよ。

  ときどき、ピンクのくまさんがドアのとこにすわってるよ。」


 ん?  散歩(さんぽ)(ちゅう)に、そういう(いえ)見たことあったな。

 センスを(うたが)うような、どんな(やつ)()んでんだって(おも)った家・・・。

 迷子(まいご)子猫(こねこ)ちゃんが住んでたのか。・・・納得(なっとく)

 (たし)か、こっから、(ひがし)へひたすら真っ直ぐ(まっすぐ)行ったとこに、パン()があって、そっから道幅(みちはば)(せま)くなって、さらに東に真っ直ぐ行くと、(ふる)め、ボロめの家の(おお)い、住宅地(じゅうたくち)があって、その一番奥(いちばんおく)にひと(きわ)目を引く奇抜(きばつ)なピンクの屋根(やね)の家があったな。

 うん。郵便受(ゆうびんう)けもピンクだった。(たし)かに、ピンクの(くま)も見たことあるな。絶対(ぜったい)そこだろ。てか、ひたすら、真っ直ぐじゃん。どう(まよ)うんだ?

 「ここから、(ひがし)へひたすら、真っ直ぐ(まっすぐ)、30(ぷん)ほど(ある)けば、

  パン屋があるから。で、さらに東へ5(ふん)ほど行けば、

  ピンクの屋根(やね)が見えてくるから。」


 「ミミちゃんのおうち、しってるの?

  わーい。ありがとう。

  つれてってー。」


 は?真っ直ぐだぜ。(まよ)いようないだろ。・・・・迷いようないのに、迷ってんだよなあ、まいごのまいごの子猫(こねこ)ちゃんは・・・・




 ・・・・ああ、なんで?結局(けっきょく)、俺、迷子(まいご)のギャルの世話(せわ)してるし。 

 しっかし、(なに)(たの)しいんだが、ニコニコよく(わら)う子だなー。

 さっきまで、泣きそうだったのに。


 「いいか。もう、迷わないように、よく(まわ)りをみて、時々(ときどき)()(かえ)って、

  景色(けしき)(おぼ)えるんだ。目印(めじるし)になるものをいくつか(おぼ)えるんだ。

  コンビニ。」

 「コンビニぃ」


 「ガソリンスタンド」

 「ガソリンスタンドぉ」


 「スーパー」

 「スーパーぁ」


 「ちゃんと覚えてるか?」

 「ちゃんとおぼえてるかぁ」


 絶対(ぜったい)、覚えてないな。

 俺(なに)やってんだ?こんなキャラ、俺にあったっけ?

 ないよな。たぶん、ユウさんの影響(えいきょう)だな・・・フッ


 「はい、パン屋」

 「はい、パンや。

  あー、パンやさん。

  おいしいパンやさん。ミミちゃん、ここでバイトしてるの。」


 「まじ?」


 「うん。パンかいにきてね。」


 「あ、ああ。

  で、ここから、(ほそ)(みち)な。」

 「で、ここから、ほそいみちな。」


 「ぼちぼち見えてくるぞ。」

 「ぼちぼちみえてくるぞ。

  あー、ミミちゃんのおうち!!

  ありがとう!

  えーーっと、おなまえ?」


 「ああ、リョウ。」


 「あありょう?」


 は?

 「リョウ!」


 「リョウくん?」


 「そうだよ」


 「リョウくん、ありがとう。」



 「ミミちゃん!!」

 「あ、ママー」


 感動(かんどう)再会(さいかい)してるじゃん。母親(ははおや)派手(はで)だなー。しかも、(なん)かイカツイな。うわっ、車もピンク!(もと)ヤン確定(かくてい)だな。


 この(とき)俺は()づいてなかった。一生懸命(いっしょうけんめい)、ミミちゃんに、(みち)(おし)えながら、(おく)っていったことで、ミミちゃんは俺の家までの道を(おぼ)えてしまったのだ。


 そして、(むすめ)(たす)けてくれたということで、元ヤンのママに気に()られ、LINE交換(こうかん)までする羽目(はめ)に。無理無理(むりむり)~と(こころ)(さけ)んでいたが、元ヤンのママの(あつ)はすごい!


 (あたら)しいLINEの(はじ)めての友だちが元ヤンで、二人目がミミちゃん。


 どういうこと、これ?


 


わーい、あたらしいおともだちできたー。

あした、おうちにあそびにいこうっと。

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