18.ママとミミちゃんのやくそく ②
のんだら、トオルせんぱいのカノジョ。
のんだら、トオルせんぱいのカノジョ。
ママ・・・
のんだら、カノジョ。
ママ・・・
のんだら・・・あー、もー、どうしてママがでてくるの。わかんなーい。
ママ、じゃましないで!
あたまをふって、ママのかおをけそうとしたけど、きえない。
「どうしたの?ミミちゃん? 早く飲んで。」
「うん」
目をぎゅっととじて、手のひらのビタミンをおくちにいれて、オレンジジュースをのんで、ごっくん。
「飲んだ?」
「うん」
ゴクゴクゴク。しっかりジュースで、ビタミンをからだのおくまでとどけて、ミミちゃん、きれいにな~れ。
「よし、出発だ。」
あれ?あれれ?
車がはしりだして、きづいたの。
手のひらになんかくっついてる。え?ビタミン!
ぎゅっとにぎって、手のひらにくっついちゃってた。
どうしよう。のんでなかった。ウソつきになっちゃう。
ミミちゃん、ウソはきらい。ママもウソはきらい。だから、ミミちゃんウソついたことないのに。
だいすきなトオルせんぱいにウソついちゃった。でも、わざとじゃないよ。
どうしたらいいの?ほんとのこと言わなきゃ。
トオルせんぱいにきらわれるかな?
そっか。いま、のめばいいんだ。でも、オレンジジュースぜんぶのんじゃった。
どうしたらいいの?
ミミちゃんウソつき!
ミミちゃんきれいになれない!!
ミミちゃんきらわれちゃう!!!
ミミちゃん・・・・
「う、おえっ。ごほっ、おえっ。」
「どうしたの?」
トオルせんぱいがこっちむいて、あわてて、ポケットにビタミンいれちゃった。
「なんでもないよ」
どうしよう。もう、ほんとうのウソつきになっちゃた。
ママにも、トオルせんぱいにもきらわれちゃう。
ミミちゃんもミミちゃんきらい! 大きらい!!!
「うっ! き、きもちわるい。 は、はきそう・・・ おえっ」
「うわっ!なんだ、こいつ。やっべ!まじか!」
「うう・・・」
「やっべー」
車がきゅうにとまったの。
トオルせんぱいが車からおりてミミちゃんのほうのドアをあけて、ミミちゃんのうでをぐっとつかんで、ひっぱったの。それでミミちゃん、車からおちてしまったの。
「俺の車汚すんじゃねー。
吐くなら外で吐け。めんどくせー女だなー。
ちょっとかわいいから、使えるかと思ったら、とんだ事故物件じゃん。
いいか。俺とお前は、なんの関係もないからな。
薬は俺のじゃねーぞ。おまえが最初っから持ってたんだ、いいな。
俺はおまえと、会ったこともないし、これからも会うことはない!
二度と連絡してくんな。」
トオルせんぱい、車にのって、どこかへいっちゃった。
う・・・きもちわるい・・・ここどこ?わかんない。
せんぱい、どうしてこんなひどいことするの?ミミちゃんがウソつきだから?
ミミちゃんのこときらいになったの?ミミちゃんがきれいにならなかったから?
くすりってなに?これ、おくすりなの?どうして?
むずかしすぎて、ミミちゃんわかんない。
ミミちゃんきらわれちゃったの?
う、う、う、え~ん。かなしいよ~。
ママー、たすけてー。リョウ君、たすけてー。
で、でんわしなきゃ・・・
「もしもし、ママー。
ミミちゃん、また、まいごになっちゃった。
おうちにかえりたいよー。ママー。
ママー、たすけてー。」
「ミミちゃん、大丈夫よ。
ママが迎えに行くから。そこに行くから。
そのままそこでいい子にして待ってて。」
「ママー、ありがとー。」
やっぱりママは、せかいいちすごい。ミミちゃんがまいごになっても、いつもたすけにきてくれる。
ママは、まほうをつかって、ミミちゃんをさがすことができるの。
ママだいすき!
あれ?もう、おえ~ってならない。なおったみたい。
ママのこえきいたら、げんきになった。ママすごい!
ミミちゃん、いい子で、まつ!
あ、ピンクの車だ。
「ママー」
「ミミちゃん!」
むぎゅー。
ママのむぎゅーはあったかくてきもちいい。
ミミちゃんのだいすきなピンクの車にのっておうちにかえったの。
ピンクのポストがあるピンクのやねのおうち。
ママとミミちゃんのおうち。
おうちについたら、おなかがすいてきちゃった。
ミミちゃんはおりょうりだいすき。
「ママ、ミミちゃんごはんつくるね。」
ミミちゃんはピンクのふわふわをぬいで、エプロンをつけようとしたんだけど、ピンクのふわふわのポケットからコロンってなにかおちたの。
トオルせんぱいにもらったビタミンだったの。
そしたらね、ママが、ママが、ママが・・・
きゅうに、こわいかおになったの。
見たことないオニみたいなかお・・・
ピシャッ!
「いたーい!!」
ほっぺがいたい!!
いたくていたくて、わんわんないた。
そしたら、もういっこのほっぺも・・・
ママがたたいたの。ママがミミちゃんのほっぺをたたいたの。
いたくていたくて、もうなにがなんだかわけがわからなくて、にげてもにげてもママがおいかけてきて、たたくの。
こわくなって、おうちをとびだして、はしった。めっちゃはしった。
いつのまにか、リョウくんちのまえに立って、ないてた・・・
リョウくんが気づいてでてきてくれたの。リョウ君のかお見たら、もっとなみだがでてきた。
リョウくんがヨシヨシしてくれて、やっと、なみだがとまったの。
それからリョウくんのおうちにはいって、リョウくんがココアをつくってくれたの。のんだらぽかぽかになって、こころもぽかぽかしてきたの。
それでね、リョウくんに、いっしょうけんめい、ぜんぶはなしたの。
リョウくんはうんうんっていいながら、きいてくれた。
それからリョウくんがゆっくりしゃべりだしたの。
「たぶんママは昔・・・。ガチでわかってんだよ、ヤバさを。
だから、絶対にミミちゃんを守りたかったんだよ。
強くて、優しいママだね。ママはミミちゃんのこと大好きなんだね。
トオル先輩には、もう連絡しちゃだめだよ。
ていうか、おそらく、もうトオル先輩とは連絡とれないよ。
簡単に足がつくようなこと、しないだろうから。
高校生だっていうのも、トオルって名前も、どうかな。怪しいな。
ごめんな。もっと、気をつけてあげるべきだった。
自分のことでいっぱいいっぱいで、おかしいと思ってたのに・・・」
ときどき、リョウくんのはなしは、むずかしくて、ミミちゃんにはわからない。
なんでリョウくんがあやまってるの?
なんでミミちゃんは、ほっぺいたくて、ママがこわくて、ないたのに、リョウくんはママのことほめるの?
でも、ママのこと、ほめられるのは、うれしい。
だってやっぱり、ママだいすきだもん!
ママがおこったのは、たぶんミミちゃん、やくそくやぶっちゃったんだとおもう。
たった一コのだいじなやくそく。
ママ、ごめんなさい・・・・
「さ、おうちに帰ろ。俺送ってってやるから。
ちゃんと、ママと仲直りしようね。」
「うん!!」
ミミちゃんママに、すっかり、がっつり気に入られて、ミミちゃんのスマホに緊急連絡先として登録されてしまった、俺。・・・・保護者かよ。




