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思春期の独り言  作者: NARU
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16.あこがれの先輩 ③

  里帆(りほ)都合(つごう)のいいベビーシッターとして(やと)われた俺だが、そもそもガキなんて好きじゃないし、まして赤ちゃんなんてわけわかんねー。

 言われたとおりにしても、()()まねーし。(なに)不満(ふまん)なんだ。

 子守(こもり)は俺に()いてねーんだよ。

 まじムカつくし、イラつくけど、里帆からのバイト代も大事(だいじ)収入(しゅうにゅう)だ。

 最近(さいきん)ドンドン、ガキどもが()んで、収入激減中(げきげんちゅう)だからな。

 とうとう自由(じゆう)(うご)かせるガキが二人になっちまったしな。


 一人(ひとり)は、近所(きんじょ)不登校児(ふとうこうじ)だった子だ。

 (いえ)金持ち(かねもち)で、やさしそうな両親(おや)(あま)やかされて(そだ)ったんだろうな。

 小学校(しょうがっこう)(ころ)から、不登校気味(ぎみ)で、俺は毎日、(さそ)いに行っては、そこの親の点数(てんすう)(かせ)いだ。

 やさしい上級生(じょうきゅうせい)がいてよかったって、あいつのおふくろ(なみだ)ぐんで、いつも俺に(れい)を言って、このあたりじゃ()ってない(たか)そうな菓子(かし)をくれた。

 その高級(こうきゅう)菓子を(だれ)にも見つからないように、いつも、一人で()べた。めちゃくちゃ美味(うま)かった。

 で、そいつはそのままズルズルと中学(ちゅうがく)もほとんど行かず、ガチの引きこもりニートになった。

 それを世界(せかい)でたったひとり、(そと)()()すことができるのが、この俺。


 しっかし、こいつは、まじ()がかかる。

 この俺が、出向(でむ)いて、()こして、作業着(さぎょうぎ)着替(きが)えさせて、車に()せて、現場(げんば)に連れて行く。

 ガリガリで筋肉(きんにく)もないし、現場でも(たい)して(やく)にはたたない。

 こいつを連れて行っても紹介料(しょうかいりょう)もらえないどころか、舌打(したう)ちされることもある。

 もっとマシなの連れてこいってどやされるのがオチだ。

 それでも、時々(ときどき)こいつを外に連れ出すと、こいつのおふくろからは、すげー感謝(かんしゃ)されて、なんか気分(きぶん)いい。

 まだ世の中に俺の価値(かち)がわかるレベルの人間(にんげん)がいるのは、とてもいいことだ。


 もう一人は、なかなかのイケメンで、何をやらせても(おぼ)えが(はや)いし、出来栄(できば)えもいい。おまけに性格(せいかく)もいい。

 こいつとなら、なんか、すごいことが出来(でき)るんじゃないか。俺のくそみたいな人生(じんせい)劇的(げきてき)()わるんじゃないか。そんな気持(きも)ちにさせてくれる子だ。

 その(うえ)子供(こども)()けもいい。なぜだか、ギャーギャー()いてても、こいつが()っこするとすぐ泣き()む。ちょいちょい子守(こもり)のバイトを俺の()わりにやらせて、バイト代は丸々(まるまる)俺がもらった。

 そもそも子供好きみたいで、バイトやらされてるなんて、気づいてねーし。

 俺の友達(ともだち)(いそが)しいヤンママのお手伝(てつだ)いしてますって、(かん)じで、毎回(まいかい)よくやってくれてる。


 しばらくぬるま()のジリ(ひん)生活を(おく)ったが、もっと、収入(しゅうにゅう)()やさなければならなくなってきた。しかも、なるはやで。そろそろ借金(しゃっきん)(かえ)さないと、まじヤバい!


 だが、俺は、さらなる窮地(きゅうち)()()まれた。

 引きこもりの「元気」が飛んだ!

 もう一人の「リョウ」に、()りさばける(てつ)くずを不法投棄(ふほうとうき)ごみから()()げさせてたら、あいつ(ちから)があるもんだから、すげーたくさん引き上げてやがって、回収(かいしゅう)時間(じかん)がかかって、元気の現場に(むか)えに行くのが(おく)れちまった。

 それで、元気が直接(ちょくせつ)バイト代を()()って・・・ピンハネに気づきやがったんだろうな。


 くそっ!


 (つぎ)はリョウをこっちの現場仕事にまわすかな。また(あたら)しいガキをガンガン(さが)すしかないな。


 ・・・まさか、リョウはいなくならないよな。なんか、アイツ、いいんだよな。もしあいつまで(はな)れていったら、きついな。でも、あいつにも(うそ)ばっか言ってるしな。嘘つくつもりはなかったんだ、あいつには。

 でっかい土地(とち)を手に入れて、立派(りっぱ)会社(かいしゃ)()てて、たくさん人を(やと)って、大金持ちになれたらいいなって、いつも思ってることを(くち)にしただけなんだ。

 まあ、少し、(うそ)や大きく言ったところはあったけど・・・

 まあ、だいぶ、俺が思ってることと、俺に出来(でき)ることがごちゃごちゃになってしまったとこはあるかも・・・


 でも、どうしたらいいんだよ。

 何をどうすればよかったんだよ。

 さっぱりわからねー。

 わからないなりにあがいてたら、このありさまだ。


 俺はただ、みんなのあこがれの先輩(せんぱい)になりたかっただけなんだ。

 学校(がっこう)職場(しょくば)で、尊敬(そんけい)され、(たよ)られ、やさしくて(だれ)もが(あこが)れる、そんな先輩になりたかった。

 本当はそれだけでよかった。(べつ)贅沢(ぜいたく)なんか興味(きょうみ)ない。貧乏(びんぼう)はいやだけど、(ふく)もたくさんいらないし、(くつ)3足(さんそく)あればいい。ゲームもあればうれしいけど、()けりゃ無いで我慢(がまん)できる。

 (めし)もグルメじゃないし、(はら)がふくれりゃなんでもいい。()(きら)いないし。

 ちょっと調子(ちょうし)こいただけなんだ。俺、本当(ほんとう)普通(ふつう)にいい(やつ)なんだ。


 中学に入学(にゅうがく)したとき、カッコイイ先輩がいた。(あたま)がよくてスポーツ万能(ばんのう)で、イケメン。

 だけど、ちっとも威張(いば)ったりしない。面倒見(めんどうみ)がよくて、(だれ)にでもやさしい。あまりの(すご)さに、ヤンキー(たち)一目(いちもく)()いてて、先輩の言うことはちゃんと()く。そんなスーパーヒーロー、俺のあこがれの先輩だった。

 俺はあの先輩になりたかったんだ。あんな(ふう)にキラキラと()きたかった。(すこ)しでも先輩に(ちか)づきたいってずっと思ってたんだ。


 なのに、誰が(いま)のこの俺に(あこが)れる?

 馬鹿(ばか)にするか、(おこ)って(はな)れていくかだ。


 どうすりゃ(みんな)、俺に(あこが)れてくれるんだ?

 誰か(おし)えてくれよ!

 俺言われた(とお)りにするから!

 ちゃんとするから!

 どうしたらいいのか教えてくれよ!

 お(ねが)いだから!



 それから二週間後(にしゅうかんご)天気予報(てんきよほう)(はず)れ、突然(とつぜん)(はげ)しい雨が()った日・・・


 俺のLINEからリョウが()えた・・・・




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