15.あこがれの先輩 ②
里帆が思い通りにならなくなって、俺は稼ぎ頭を失った。
次を探さなきゃいけないけど、里帆のように思い通りになる子をみつけるのは簡単じゃない。里帆は、小さい頃から、面倒みてやって、俺の言うことを何でも聞くように育んできたんだ。
だけど、大きくなって少しばかり賢くなって、自立しやがった。
里帆ですら、言うこと聞かなくなっちまったのに、すぐに代わりが見つかるわけない。
そもそも俺は全くモテないのに、顔もスタイルもよくて、俺の言うこと聞いて援助交際詐欺してくれる子なんてどうやって探すんだよ。
ああ、絶望的だー。
こうなったら、現場作業要員を増やして、バンバン働かすしかないな。
汗かいて稼ごう!
汗かくのは俺じゃないけどな。
俺はくすぶってるガキどもに片っ端から声をかけては、安い飯をおごり、ガキどもの好きそうな、スケールの大きい夢物語を聞かせて、かわいいかわいい後輩に仕立てていった。
みんなそれぞれ、よく働いてくれた。ただ、入れ替わりは激しかった。
少し賢い子はしばらくすると、俺のことを疑いはじめ、ピンハネに気づき、飛ぶ。
だから常にガキを物色していた。
こうして俺は、ピンハネと、里帆に時々小遣いをせびって、贅沢までは出来ないが、ぼちぼちとパッとしない生活を送った。
だけど、そんな生活もだんだん厳しくなっていった。かわいいかわいい後輩の数は減っていく一方だ。スカウトして、育てる手間暇かけているうちに、次々と飛んでいく。いつまでこれで食いつなげれるか。
気づいたら、こじんまりと、質素な生活をしていた。
俺はこんなんじゃないだろ。こじんまりと収まるような器じゃないんだよ。全然世の中の奴らはわかってないな。俺は人から尊敬され、憧れの的となるそういう存在なんだ。こんな逸材が埋もれてるなんて、世界の悲劇でしかない。
ああ、毎日退屈だ。もっと俺にふさわしい世界になってくれ。
うだうだとした毎日に少し刺激を与えてくれたのは、里帆だった。
しばらく連絡ないな、おこづかい欲しいなと思っていたら、ひょっこり家にやって来た。でっかい腹で。
まじか?
会社の上司と不倫して、ガキができたらしい。男は妻と別れて里帆と結婚するって、言ってたらしいが、ガキができたことを告げると、転勤の時期でもないのに、急な転勤が決まり、行先も言わず、突然引っ越したらしい。
会社のパソコンで転勤先を調べようとしたけど、なぜかアクセスできなくなっていて、もちろん、携帯もつながらない。
困った時に訪ねて来るって、やっぱ、俺って、頼れる男ってことじゃね?
俺はハッキリと、「遊ばれて捨てられたんだ。」と言ってやった。
こういうことはズバッと言って、さっさと気持ち切り替えたほうがいいからな。
それにガキも早く堕さないとな。
里帆にはキツイ現実だろうが、ここは俺がしっかりと受け止めて、俺の凄さを見せつけておかないとな。
「病院ついて行ってやろうか?堕すんだろ?」
「ん?何言ってんの?ばかなの?もうすぐ生まれるんだから。」
まじか?
「産むのか?」
「もちろん。だって、私のたった一人の家族だよ。
大事に育てるんだあ。」
めっちゃ幸せそうな顔してるなー。
まじかー!
「赤ちゃん生まれたら、忙しくなるから、子育て手伝ってね。
大切に扱ってよ。
ちゃんと私の言ったとおりにお世話できたら、バイト代払ってあげるね。
今日はそれだけ言いに来たの。わかった?」
「はい! がんばります!」




