14.あこがれの先輩 ①
友達って呼べるような奴はいない。
いつもバカにされ、スクールカーストの底辺にいた。
だけど、本当は馬鹿なフリをしていただけだ。
誰かが底辺にいなきゃいけないだろ、あいつら的には。
上から目線で命令するのが好きなだけのアホさ。
どいつもこいつも俺の友達になれるようなレベルじゃないんだ。
だから、腹の底で笑いながらパシリやってたよ。
あ、そういえば、幼なじみの二個下の里帆は、俺がいろいろと面倒みてやった、妹みたいな、いや、里帆なら友達って言ってもいいかな。
うん、たったひとり、友達って呼べるとしたら、里帆かな。
いつも腹を空かせて泣いている子だった。
パンやジュースを時々やった。びっくりするくらいガツガツ食べた。
その様子が面白くて、ちょいちょい食いもんを里帆の親にバレないように与えた。
なんか、ペットに餌やってるような感覚だったんだろうな。
俺は高校には行かなかった。行ったところで、パシリの生活が続くだけだ。
ぼちぼちパシリをするのも飽きてたし。
別に頭が悪いわけじゃないから、余裕であいつらより賢い高校には行けたけど、勉強に興味がなかったから、成績が悪かっただけだ。
それに興味もない高校生活を送るなんて金の無駄だ。
それよりも、早く社会人になって、働いて、金持ちになって、あいつらに俺の本当の凄さを見せるのも面白いかなって思った。
だけど・・・金持ちになるなんて、簡単じゃなかった。
中学卒業して働き始めた建設現場の仕事はキツかった。 朝早くからボロボロになるまで働いた。
三日で体が動かなくなり、四日目に飛んだ。
三日坊主って、俺のためにある言葉だなと思った。
それからも現場仕事を転々としたけど、続かなかった。
俺が本気になるほどの仕事でもないしなっていうのもあった。
そのうち、すぐケツ割るしょぼいガキがいるって、噂になり、どこの現場も雇ってくれなくなった。
まあ、親父見てりゃ、わかるか。あの人も何をやっても続かない職なしのクズだ。
ばあちゃんは痛い膝を騙し騙し、毎日蟻のように働いてる。
おふくろはほとんど家にいない。謎だらけの人。
親父のようにはなりたくないと思っていたのに、まるであの人のコピーだ。
あの人は家に金は入れないが、自分の身の回りに必要なものは自分で何とかしてる。というより、何とかさせている。
そんなクソみたいな才能が遺伝しちまった。
俺は気づいてしまった。仕事が続かないなら、代わりに誰かにがんばってもらえばいいんだと。
そもそも俺は経営者に向いてるんだ。
俺じゃない誰かが、俺の指示で働いてくれればいいんだ。
手始めに、幼なじみの里帆に援助交際詐欺をやらせた。
ちょうどその頃、里帆の両親がそれぞれの浮気相手とそれぞれに蒸発した。
そんなことってあるのかよ!と、思ったけど、まあ、あるんだろうな、とも思えた。
ぼっろぼろの崩れそうな家に一人残された里帆は、生きていくために金が必要だった。
そこに付け込んだんだ。
たった一人の大事な友達を自分が楽するために利用した。
男とホテルに行き、前払いで金を受け取り、逃げる。男の選別は俺がやった。
とにかく、固い職業で子持ちが最高。職場にも家族にも絶対にバレたくない。そういうカモだけを狙った。
里帆は中学生だから、男も我が身可愛さに被害届は出さない。いい稼ぎになった。こんなに簡単に金って稼げるんだって思った。
しっかし、俺が言うのも何だけど、中学生が一人で暮らして、周りの大人がだれも気付かないっていうのも、どうなんだ。世の中どうなってんだって思ったけどな。
そりゃあ、里帆が、周りに知られたくなくて、隠していたのもあるだろうけど、本当に周りの奴らは気づいてなかったのか?気づいてないふりしてたんじゃないのか?めんどくさいことに巻き込まれたくなかっただけじゃないのか?
おかげで俺は働かずして、いい感じに金が入ってくるようになったと同時に、親父と同じ種類の人間になった。
この頃から、鏡に映った自分を見ると、嗚咽するようになり、だんだん鏡を見なくなっていった。
しばらくは、里帆の稼ぎで、つつましく楽しく暮らしてたんだけど、人間っていうのは欲の塊で、そのうち、欲しいものが増えてきた。
だからといって、里帆の仕事を増やせば、めくれる確率も上がる。
できれば、ノーリスクで、楽しく暮らしたい。
そこで、俺が次に目を付けたのは、俺みたいなどうしようもないガキだ。
あいつらアホだから、やさしい先輩に声かけられて、かわいがられたら、しっぽ振って、よく言うことを聞く。素晴らしいアホ達だ。しかも詐欺とかじゃなく、まっとうに働くんだ。
これぞ、ガチのノーリスク!!
人手不足の現場仕事に、アホ達を紹介して紹介料をもらう。アホ達が働いた報酬は俺が受け取り、アホ達には俺がガッツリ抜いた残りを渡す。現場には18歳以上を紹介するって言って、アホ達には18歳未満だから、報酬が少ないと説明すればいい。
これなら、みんなウインウイン!俺天才!
こうして俺は、Wワークの事業主になった。なった気になっていた。
金に不自由なく、高いところから見る景色は気持ちよかった。
だけどそれも長くは続かなかった。里帆が中学を卒業し、就職しやがった。俺と組んでやる仕事はもうしないと言い出した。頭にきて、お前のやってきたことを、ぶちまけるぞと言ったら、強気に、言い返してきやがった。
「どうぞご自由に。
それって、つまり、あんた自身のこともぶちまけるってことだからね。
やれるもんならやればいいじゃん。」
いつの間にこんな生意気になったんだ!俺から恵んでもらうパンやジュースをいつも楽しみにしてたかわいい里帆はどこへ行った?!
「あんた」呼ばわりかよ。くそっ!
でもめくれるわけにはいかないから、、、里帆は手放すか。
「わたしに二度と命令しないなら、友達では居てあげるよ。」
まじか?上から目線じゃん。何様のつもりだ!許さんこいつ!
俺は即答した。
「ありがとう。二度と命令しません。」
この日から俺と里帆の関係は変化した。
俺は、しっぽを振る子犬になった。




