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思春期の独り言  作者: NARU
13/32

13.生きていたかったんだ ③

 あちこち(きず)だらけの俺は、(よる)白々(しらじら)()(はじ)めるころ、病院(びょういん)(あと)にした。

 父親(ちちおや)名乗る(なのる)知らないおっさんの(あと)何故(なぜ)だかついて(ある)いた。


 父親は死んだと母親(ははおや)から()かされていた。

 まさか(うそ)つかれてるってことはないよな?

 まだ小っちゃかったけど、かすかな記憶(きおく)あるし、葬式(そうしき)みたいなのしたような。

 お(はか)もあるし、仏壇(ぶつだん)位牌(いはい)もあるよな!

 てことは、やっぱこのおっさんは他人(たにん)だよな!

 親戚(しんせき)?いやいやいや、ないないない!

 (とお)りすがりの親切(しんせつ)な人?

 (いのち)(たす)けても、父親は名乗(なの)らないだろ、普通(ふつう)

 誰?

 で、なんで俺、ついて行ってるの?

 おっさんも俺も意味(いみ)わかんねー!!


 おっさんが()(かえ)って、

 「とりあえず、うちの店来るか?

  朝一(あさいち)業者(ぎょうしゃ)空調直(くうちょうなお)しに来ることになってるから。」


 (なん)のことだかわからないけど、(うなづ)いてついていった。

 BARみたいなとこに()いた。室内(しつない)とは(おも)えないほど、(さむ)かった。

 おっさんがココアを入れてくれた。人生(じんせい)一番(いちばん)おいしいココアだった。


 これをきっかけに、(なぞ)だらけのおっさんの(みせ)出入り(でいり)するようになった。


 おっさんの名前(なまえ)はユウさん。(きゃく)がそう()んでた。

 俺もいつの()にかユウさんと呼ぶようになった。

 そのうち、ほぼ()(びた)るようになった。

 昼間(ひるま)は、掃除(そうじ)買い出し(かいだし)仕込(しこ)みを手伝(てつだ)ったり、夜は、知り合いの息子(むすこ)(あそ)びに()てるという(てい)で、法律(ほうりつ)遵守(じゅんしゅ)していることにして、店にいた。

 だけど実際(じっさい)は、(さけ)(つく)ったり、つまみ()したり、普通(ふつう)(はたら)くだいぶグレーな18(さい)未満(みまん)だけど。


 ユウさんは、俺が()たけりゃ、いくらだって居ていいし、いつだって自由(じゆう)出入り(でいり)していいぞ。と言ってくれた。しかも、バイト代を(はら)ってくれた。

 (うれ)しかった。(はたら)いて、働いた(ぶん)(ただ)しい評価(ひょうか)(かね)がもらえる。すごく嬉しかった。搾取(さくしゅ)されることなく、もらえる。

 なんか、俺の存在(そんざい)(みと)めてもらった気がして、嬉しかった。

 いや、何より俺自身(じしん)が自分の存在(そんざい)を認められる気がして、嬉しかった。

 

 ユウさんは仕事だけじゃなく、いろんなことを教えてくれた。

 自転車(じてんしゃ)のチェーンの(はず)(かた)、はめ方、手入(てい)れの仕方(しかた)。パンクの(なお)し方。

 バイクの(みが)き方。()しがけの仕方(しかた)

 ()りにも時々(ときどき)出かけた。(みなと)でのちょっとした釣りだが、結構(けっこう)釣れた。

 (あじ)や、(さば)や、カワハギ。どれもかわいらしいサイズだが、南蛮漬(なんばんづ)けにして、店で客にサービスとして提供(ていきょう)すると、なかなかの評判(ひょうばん)だった。


 ユウさんと()ごす時間(じかん)(たの)しかった。

 「父親と息子(おやこ)」ってこんな(かん)じなのかな?って、(うみ)()らした()(いと)を見ながら、ぼんやりと(かんが)えたりすることもあった。


 つまり、わかったことは、俺は事故(じこ)って、見知らぬおっさんに(たす)けられた。


 その人の名前はユウさん。

 BARのマスター。やさしいおっさん。

 たぶん、この人は本当にやさしい人。騙したりしない人。

夢の続きを見てるみたいだな。

もし、あの時引き留めていたなら、

もし、ずっと一緒にいたなら、

こんなふうに、息子と過ごしてたのかなあ。


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