11.元思春期の独り言 ①
場末の小さなBAR。
夜ごと、何かしら心に抱えた客が集う店。
それが、俺の城。大切な居場所。
美味しい酒と旨いつまみで、語る客に耳を傾けるのが、俺の仕事。
いや、贖罪なのか。何も見ようとしなかった、何も聞こうとしなかった、非情な男の。
小さいながらも店を構えて、やっと真っ当に生きていけるようになった。
もっと早く、まともな人間になっていたら、何か違ってたかな。
定職にもつかず、ふらふらと、ヒモのような生活をしてた二十歳の頃。
付き合っていた女が妊娠した。
だけど、なんかこう、ピンと来なくて、親になるとか、考えられなかった。
どっか他人事だった。
どんどん腹が大きくなり、女は働けなくなり、やがて、子供が生まれた。
毎日、女は子育てに追われた。
それでも俺はろくに働きもせず、どんどん生活は苦しくなっていった。
女はいつも何か言いたそうに俺を見ていた。
だが、話しかけては来なかった。
聞く気のない俺にかける言葉が見当たらなかったのだろうか。
ある日、女の両親が来て、女と子供を連れて行った。
俺は追いかけるでもなく、ぼーっと後ろ姿を見送った。
あの頃の俺は本当にカスだった。
だらだらと惰性で生きているだけだった。
なんでこんな俺といたんだ?アイツは。
どこに惚れてたんだ?
今さら聞いてみるわけにもいかない。
どこでどうしているのか。もう、顔も名前も思い出せない。
なのに、最近不思議な夢を見る。
親子3人が楽しそうに遊んでいる夢だ。父親らしき男は俺だ。
母親と息子はアイツと俺達の息子なのか?
2~3歳くらいの元気な子だ。母親は優しそう。
だが、太陽に反射してふたりとも顔はよくわからない。
なんで今さら、こんな夢を見る?
俺の懺悔の気持ちが見させているのか?
今夜は早く店を閉めた。
いつもは何時だろうが客がいなくなるまで営業しているんだが、この季節に空調が故障してしまった。
いくら体にアルコールを入れたって、この寒さに暖房なしは、キツ過ぎる。
大きな機械音がして、どんどん店の中の温度が下がっていった。
なんてこった!!
家路に向かう道。いつも同じ道。
今夜は何となく道を変えてみたくなった。
普段は通らない、人気のない道だ。
なんで道を変えたのか、よくわからないが、まあ、ただの気まぐれだ。
そして、俺は、ちょっと変わった拾い物をした。
それは、道に横たわる傷だらけの少年だった。




