はじめの一歩から
俺の名前は佐藤 海斗。平凡な高校生と言いたいところだが、趣味が変わっていると言われることがある。簡単に言うと平凡な高校生ではないと言うことだ。
ところで俺は今、動物園に来ている。彼女と一緒だ。
「私、綺麗?」
なんだ、怪談か。
「違うよ!私、今日のために服買ったんだよ!ねえ、今日の私どう?」
言われてみれば…小鳥の絵が散りばめられたワンピースを着ている。すごく似合ってる。
「うん、すごく似合ってる。綺麗だよ」
ちょっと棒読みだが、心から思ってるよ。
そう言うと彼女は耳まで真っ赤になった。
「もう!」
そろそろ趣味に移すか。
「あのさ俺たちー」
「あっ!ライオンだよ!可愛い感じだね。怖いけど」
あ、重なってしまった。彼女はライオンの檻に近づいていった。ものすごく言い出しづらいぞ!!
「ん?どうしたの?」
「いやー!なんもない!クマみにいこうぜ!」
「クマ好きなの?私も好きー!」
「へー」
よし、ごまかし完了!
そう、俺は女の子と付き合い、捨てるのが趣味なのだ。顔はいいからモテるんだよね。
お前は結婚しなくていいのか!と言われそうだが、生涯独身でもいいと思っている。だって趣味満喫できないじゃん?
「ペンギンもいるらしいよー!」
「もう4時半だけど?5時に閉まるはずだろ?」
彼女は手をばってんにしていった。
「そっちの方がロマンスあるよね?」
ロマンスを求めて動物園に来たわけじゃない。
「つれないなー」
その時彼女は足を滑らしてしまった。このままだと転けて、彼女に傷ができる!!
「わあっ!」
俺は彼女にお姫様抱っこをしてしまっていた。
「すまん」
「んん?大丈夫だよぅ?ちょっと恥ずかしいけど。ねえねえ!あそこにある階段下りるまでこのたいせいでいてよ!おねがいッ!誰もいないでしょ?」
まじかよ。
「私、初めてお姫様抱っこされるの!いいでしょう?」
「付き合うのやめない?」
唐突に出たその言葉。驚かれるかな。
「?なんでそんなこと言うの?」
分からないと言う顔をした彼女。
「分からないけど、その方がいいと思う」
「あのねぇ、あなたは私を助けようとした。本当に嫌いなら助けようとしないはずだよね?」
「そうか」
趣味がそんなもの捨てればいいのか。俺は本気で彼女「峠 真理亜」が好きだったのか。本当の愛か。言葉にすると恥ずかしいな。
「真理亜、好きだ本気で愛してると分かった!付き合ってほしい」
「はー」
「あああああああああ!?どう言うことだよテメェ!私のことは振ったのに。ケバくないからとか。その女、私と同じ感じじゃないか!?」
振ったことがある女か。グレたの?まじで?というか、いつから居たんだよ!
「今でも私はあなたのことが好き!さあ、その女振っちまいな!」
俺が告白していたんだがな。
「失礼、あなたはどなたですか?」
真理亜怒ってるな。いや、当たり前か。
「私の名前は、赤津氏 久里。やめちまいなその男は」
「どうしてですか?」
「すぐ捨てる。女をすぐに捨てる。馬鹿なんだ」
前半はあってるけど、後半違うぞ?馬鹿じゃないし!
「私はそう思いません。素敵な方です。あなたの目は節穴ですか?」
「は?はあ?」
馬鹿を見るような目で見ているな、真理亜を。
「そいつは」
「黙りなさい!佐藤くんは素敵です!私を楽しませてくれようとしました!助けてくれました!」
俺がキュンとなってしまった。
「佐藤くん、帰りましょう」
「あ、あぁ」
電車に乗るとすぐに雨が降って来た。
「最悪のタイミングであの人来たね」
「そうだな。あいつは振ったんだがな」
なんで来たんだ。
「それよりも、女の子を捨てまくっていたの?」
付き合うんだ。話してもいいだろう。
「そうだよ」
真理亜は電車を降りてしまった。俺のせいか。俺の行いがこんな結果か。
そう思い俺は最寄りの駅で降りた。家に帰ると、ベットに転がり後悔をした。今までのことを。
その時俺のスマホに電話がかかって来たのだ。
「もしもし」
「私とやり直そう」
「真理亜?」
「簡単だよ?すごくね」
どういうことだ!?
「私を裏切らない。それだけ。久里って言う人が来るかもしれないから、心変わりしないでねってことだよ。簡単でしょ?」
「あははッ!簡単レベル鬼!そんなの楽勝」
「うん!そういえるよう頑張って!私、佐藤くんのこと好きだよ」
嬉しい。心から。唐揚げ弁当食べた5億倍は嬉しい。
「久里さん怖いか助けてね!」
「どういうこと?」
「漫画とかで出て来るいじめされるかもってこと」
「させない」
「ありがとう」
ツーツー
切れた。
でも、賢い真理亜が言うってことは久里はすぐ来るってことか?学校とかに。でも制服着てなかったからわかんないだろう。よしよし!
どうして俺はこんなフラグめいたことを考えてしまうのだろうか。
俺はすぐに後悔することになる。はず…