粒あん
「ねぇ、知ってる?アンパンマンの頭の中身って粒あんなんだって。」
「へぇ〜、そうなんだ。」
「でも何で粒あんなんだろうな?」
「なんかごつごつしてて脳みそっぽいからだろ。」
「俺もそうだと思う。」
(粒あんのほうがおいしいからに決まってんじゃない。)
「ねぇ、美香ちゃんは何でだと思う?」
「えっ、私?」
「うん、どうして粒あんなんだと思う?」
「えっと〜、やっぱり脳みそっぽいからじゃないの?」
「やっぱ、そうかな〜。」
「うん、そうだと思うよ。」
「あっ、そうだ。今日の学校の帰りケーキ屋さん行こうと思ってるんだけど、美香ちゃんも来る?」
「えっ?私は遠慮しとく。」
「そっか、じゃあ又今度ね。」
「ごめんね。」
キーンコーンカーンコーン
「はい、お前ら授業始めるぞ。席に着け。」
『はーい』
「では、教科書を32ページを開け。」
「えっと今日は昨日やったこ・・・」
私の名前は桜坂 美香
どこにでもいる普通の小学生だ
でも私の好きなものはほかの人とは少し変わっている
私は和菓子が大好きなんだ
でも和菓子がすきだっていったら
周りの友達に年寄りっぽいって言われたんだ
だから私は和菓子が大好きだって事を隠しているんだ
いつか和菓子が好きな友達ができるといいな
「いらっしゃいませ。」
「こんにちわ。」
「なんにしますか?」
「じゃあ、金つば二つと最中三つと黄身雲平三つちょうだい。」
「かしこまりました。」
「2500円になります。」
「いつもおいしいお菓子ありがとうね。」
「いえいえ、こちらこそいつもありがとうございます。」
俺の名前は北条 裕也
この和菓子や『ひよこ堂』の5代目だ
4代目の親父が今日、急に体調を崩して
さっき救急車で運ばれた為
代わりに店に出ているという状態だ
まだお菓子は作らせてもらえないから
レジ係だけどな
ウィーン
「いらっしゃいませ。」
「えっと、こんにちは。」
「お譲ちゃん何にする?」
「えっと〜。」
「もしかしてこの店来るの初めて?」
「えっ?あっ、はい。」
「そっか。何か好きなものある?」
「・・・粒あん。」
「粒あんがすきなのか、じゃあこれはどうだ?」
「これ、饅頭ですか?」
「いや、確かに見た目は饅頭みたいだか饅頭ではない。」
「これは石衣っていって、固めに練った粒あんを選び抜いた砂糖で作ったすり蜜でくるんだものだ。」
「おいしそうですね。それください。」
「あいよ。いくつだい?」
「えっと〜、二つください。」
「かしこまりました。」
「500円です。」
「あっ、はい。」
「どうぞ、お友達と食べるのかい?」
「いえ、私の周りあんまり和菓子好きな人いないんですよ。」
「そうか、また来いよ。」
「はい。」
(石衣か〜、おいしそうだな。はやく家に帰って食べよう。)
「あっ、美香ちゃん。」
「えっ?」
「やっぱり美香ちゃんだ。」
「茜坂さん。」
この人の名前は茜坂 優さん
私に和菓子を教えてくれた人
高校二年生のとってもかわいくて頼れるお姉さん
昔、和菓子屋さんでバイトしていたことがあったらしく
いろいろと和菓子について教えてもらったのだ
「どこ、いってたの?」
「あっ、そこの『ひよこ堂』っていう名前の和菓子屋さんです。」
「『ひよこ堂』いってきたんだ。」
「知ってるんですか?」
「知ってるも何も、私がバイトしてたところだよ。」
「そうなんですか?」
「うん、親父さん元気にしてた?」
「親父さん?」
「うん、店の前にいたでしょ?」
「ううん、お兄ちゃんだったよ。」
「そっか、まぁいいや。」
(親父さんどうしたのかな?)
「で、何買ったの?」
「石衣っていう名前のお菓子だよ。」
「ふ〜ん、石衣か。」
「あれっ?美香って粒あんのほうが好きなんじゃなかったっけ?」
「うん、そうだよ。なんで?」
「この石衣っていうのは粒あんじゃなくてこしあんだよ。」
「え〜っ!?」
「お店の人が間違えたんじゃない?」
「はぁ、まぁいいや。」
「そんな、落ち込むなって。」
「落ち込んでなんかないよ。」
(明らかに落ち込んでるだろ)
「そうだっ、お姉ちゃんも一緒に食べる?」
「いいの?」
「うん、一緒に食べよ。」
「ではお言葉に甘えるとしますか。」
「きれいな白色してるね。」
「うん、きれいだね。」
「よし、じゃあいただきます。」
「いっただっきま〜す。」
「本当だ、こしあんなんだね。」
「うん、今度店の人に注意しとくね。」
「ありがとう、おねえちゃん。」
「すこし甘すぎるかな?」
「う〜ん、砂糖と餡子だからね。」
「ごちそうさまでした。」
「ごちそうさまでした。」
「美香ちゃんありがとうね。」
「うん、じゃあ、私家に帰るね。」
「わかった、じゃあね。」
「じゃあね〜。」
「すいません、北条 和也の病室ってどこですか。」
「少々お待ちください。」
(親父大丈夫なのかな?)
「お待たせ致しました。304号室になります。」
「ありがとうございます。」
(えっと304号室・・・)
「裕也!」
「おふくろ、親父の具合どうなんだ?」
「・・・」
「そんなに・・・悪いのか?」
「お父さんね・・・癌なんだって。」
「親父が癌?手術すれば治るんだよな?」
「・・・もう転移が進んでて手の施しようがないんだって。」
「そんな・・・いま、親父は?」
「部屋の中で寝てるわ。一応意識はあるみたい。」
「そうか。」
ガラガラガラ
ピッピッピッピッ
「・・・親父」
「ゆ、ゆう、や、か?」
「親父、喋れるのか!?」
「あぁ、なんとかな」
「無理するなよ、親父!」
「急に倒れてごめんな。裕也」
「そんなことは気にすんなよ、親父。」
「俺はもう駄目だと思う」
「えっ!?」
「もう、俺がお前に教えることは何もない。」
「何言ってんだよ親父!?」
「あとは頼んだぞ裕也。」
「弱気になるなよ。まだ頑張れよ!!」
「・・・」
「親父?おやじっ!?」
スー
(なんだ、寝てるだけか。)
ガラガラガラ
「裕也?」
「おふくろ、どうした?」
「おとうさんが最後にお前の作った和菓子が食べたいんだって。」
「おやじが?」
「何でもいいから作ってきてあげてくれる?」
「・・・」
「できれば早いうちにね。・・・もって2週間だって先生が言ってたから。」
「二週間!?そんなしかもたないのかよ!?」
「だから、・・・はやめに、ね。」
「・・・わかった。」
「さてと、バイトも終わったことだし、美香の為に『ひよこ堂』に文句言いに行くか。」
「いらっしゃいませ。」
「ちょっと話しいいかな?、今日石衣買った女の子のお姉ちゃんなんだけど。」
(本当はおねえちゃんじゃないんだけどね。)
「あ、はい。どうかしたんですか?」
「どうかしたんですかじゃないよ。あんたあの子に石衣が粒あんだって教えたでしょ。」
「・・・あっ!!」
「やっと気づいたか、石衣の中身はこしあんだよ。あの子粒あんが大好きだから楽しみにしてたのに。」
「すみませんでした。」
「お詫びになんか菓子の一つでもあげたら?」
「そ、そのほうがいいですかね?」
「当たり前でしょ。まぁそれだけいいたかっただけだから。」
「すみませんでした。」
「これからは気を付けなよ。」
「はい、すみませんでした。」
(・・・ふぅ、俺、やっぱ疲れてんのかな?)
「にしてもどうするかな?普通にお菓子作って持ってても芸がないしな。」
(ん?待てよ。石衣、粒あん、こしあん、新作)
「・・・よし、新しいお菓子でも創ってみるか。」
「おやすみなさい、お母さん、お父さん。」
「はい、おやすみ。」
「おやすみなさい。」
トンットンットンットン
(明日も『ひよこ堂』いってみよっかな)
チュン、チュンチュン
「クソ、また駄目か。」
「何とか、何とかしてうまくできないのか?」
「おはよう、美香ちゃん。」
「あっ、おはよう。」
「ねぇねぇ、今日は一緒にケーキ屋さん行こうよ。」
「それよりさ、今日一緒に和菓子屋さんに行かない?」
「和菓子屋さん?」
「ダメ?」
「でも、和菓子って饅頭とかでしょ?」
「ううん、すごい色々な種類のお菓子もあるし、お菓子の一つ一つがかわいいんだよ。」
「へぇ〜、面白そうだね。いってみようかな。」
「あっ、おれも一緒に行っていい?」
「俺も行ってみよっかな。」
「私も〜、一緒に言ってもいいかな?」
「うん、いいよ、みんなで行こうよ。」
「いらっしゃいませ。」
「こんにちは。」
「あっ、えっと美香ちゃんだっけ?」
「あっ、はい。」
「昨日はごめんね、ちょっとうっかりしてて。」
「いえ、気にしないでください。」
「で、君のお姉ちゃんにいわれて、お菓子を用意してたんだ。」
「ほんとに?」
「あれ?後ろにいるのはお友達かい?」
「うん。」
「こんにちは。」
「よかったらお友達もみんな食べるかい?」
「いいんですか?」
「もちろん。」
「やった!!」
「はい、これどうぞ。」
「あれ?これって石衣じゃ?」
「いいから、まず食べてみて。」
「はい、・・・中身が粒あんになってる。」
「すげぇ、これうまいな。」
「うん、すっごくおいしい。」
「・・・これ、私の為に?」
「まぁな、これなら小学生でも食べられるかなと思って。」
「ありがとうございます。」
「こっちこそ、すまなかったな。」
「またきますね。」
「おう。待ってるぜ。」
(よしっ、早速今日届けに行くか。)
ガラガラガラ
「親父、差し入れもって来たぜ。」
「おう、裕也か。」
「これ、俺が作ったんだ。食べてくれ。」
「石衣か。」
「まぁ食べてみてくれ。」
「・・・んっ!?なんと中身が粒あんじゃないか!!」
「おう、俺の自信作だ。」
「何でこんなもんを作ろうと思ったんだ?」
「実はとある女の子がいて、その女の子が粒あんが大好きなんだって聞い、その子の為に作ったんだ。」
「そうか、・・・お前はもう一人前だな。」
「えっ?」
「食べてくれる人のことを考えて、その人の為にお菓子を作る。それはもうプロの仕事だ。」
「親父・・・」
「お前になら、もう『ひよこ堂』を預けてもいいな。」
「・・・」
「頼んだぜ、5代目『ひよこ堂』頭首。」
「お、おうっ!!」
「少し眠くなっちまった、お菓子ありがとうな、おいし、かった、ぜ。」
ピーーーーーー
「・・・親父、俺頑張るよ。」
「美香ちゃん、明日も『ひよこ堂』行こうね」
「うん、みんなでまた行こうね。」
「あのお菓子、おいしかったな。」
「さて、っと私も『ひよこ堂』に戻ろうかな。」
粒あんそれはただの餡子でしかない
でもそれにどう関わるかによって
粒あんは色々な意味合いを持つ
この物語は粒あんに関係のある人間たちに
まつわる物語である
粒あんそれはとてもちいさな一つの幸せ
えっと、なんだか意味わからない小説になってしまいましたねw
もしよかったらコメントや、次に書いてほしい小説のテーマなどを言っていただくとうれしいです。