表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/100

4-14 vsミノタウロス

『3-1 ランクアップ』の前に幕間エピソード『再会』を追加しております。

もともとあったのを公開し忘れたぶんです。

結構重要な話なので、よろしければお読みいただければと思います。

ご迷惑をおかけして申し訳ありません……。

 エムゼタシンテ・ダンジョン10階層。


 これまでの階層と同じく森林エリアではあるのだが、10階層のみ大きく異なる点がある。

 それがいま、俺の目の前にそびえ立つ、階層中央に突如現れる石造りの建造物だ。

 俺は建物の入口を前に、マップを取り出した。

 デルフィがこのマップを見て驚いたのにはわけがある。


「中が迷路になってるんだよなぁ。いよいよダンジョンらしくなってきたというかなんというか」


 はっきり言って、マップ無しでの攻略は困難と言わざるをえないだろう。


 この石造りの迷路が、序盤最大の難関と言われている。

 複雑な迷路であるだけでなく、モンスターも出現するのだが、これが普通ならかなり厄介なのだ。

 出現モンスターは迷宮の中と外であまり変わらない。

 石壁に囲まれた回廊に植物系のモンスターが出ると、微妙な気分になるけどね。


 ではなぜ、この迷路施設が難関かというと、回廊の広さに問題があるのだ。

 通路の幅は一定で、大人3人がなんとか並んで歩けるレベル。

 戦うとなると、ふたり並ぶのは難しいだろう。

 天井もそんなに高くないので、大剣や槍を振り回すのも難しい。


 なにを言いたいかというと、パーティーの陣形がまともに組めないってことなんだ。

 まともに闘えるのは先頭の人くらいで、あとはうしろからの牽制程度ならできるかもしれんけど、考えなしに暴れすぎると同士討ちになりかねない。

 ここにくるまでのあいだ、パーティーの連携を頼りにしていたとしたら、きついだろうなぁ。

 あと、武器によっては相当しんどいと思う。


 俺? 俺はソロだし、魔術使う分には標的を捕捉しやすいし、ご存知レイピアは刺突に特化してるから、振り回せなくても問題ないし。

 まぁそれでも、不意打ちが得意な俺的には、障害物がほとんどない空間ってのは、多少やりにくいけどね。

 それでもここに出現するモンスターごときに後れはとらないかな。


「《雷弾》からの《炎弾》っと!」


 〈多重詠唱〉と〈詠唱短縮〉に慣れるため、とりあえず下級攻撃魔術を連発して倒していく。

 さすがにこの階層になると、下級攻撃魔術一発で倒せる敵はほとんどいないので、連発するか、魔術で牽制しつつ剣で倒す、という具合になっている。

 ためしに《魔刃》《魔槍》を使ってみたところ、中級攻撃魔術ならまだ一撃で倒せるみたいだ。


 そんな感じで順調に迷路を進み、2時間ほどでボス部屋に到達した。

 9階層再アタック開始時からだと、今回はここまでで既に3時間が経過していることになる。

 まあ、デルフィには余裕を持って4時間と伝えてあるし、さすがにボス攻略で1時間もかからんだろう。


「おじゃましまーす」


 ボス部屋に入ると部屋の中央に光の粒子が集まり始めた。

 さすがにこの部屋は迷路部分の通路と違ってかなり広い。

 天井も高いし。


 そしていよいよミノタウロスと対面。

 下半身は牛、上半身は一応人っぽいけど頭が牛。

 身長は3mくらい?

 バカでかい長柄の斧を構えている。

 うん、コイツが暴れまわるんだから、ボス部屋は広くないとダメだろうな。


「ブモオオオォォォッ!」


 ミノタウロスは俺を確認するなり、牛にしては凶暴な咆哮をあげる。

 そしてこちらを睨みながら、斧を構えた。


 さて、彼我の距離は10m。

 魔術なら充分とどく距離だが、剣だと言うまでもなく間合いの外。

 このまま魔術でフルボッコにするという選択肢もあるが、せっかくカーリー教官が与えてくれた課題だし、いけるところまでは剣術で行こう。


「おおおおおお!」


 剣を抜き、気合いとともにミノタウロスへと駆け出す。

 背が高く、武器のリーチも長いミノタウロスが、先に俺を間合いに捉えて斧を振り上げた。


「ブルァッ!」


 敵が斧を振り下ろすタイミングで横に飛ぶ。


「速っ!!」


 余裕を持ってかわしたつもりだが、想像以上に斧を振り下ろすスピードが速く、なんとか紙一重でかわすことになった。

 振り下ろした斧は石の床を砕いてめり込んだが、敵はその床を抉るように斜め上へと斧を薙ぎ、さらに追撃をかけてくる。


「おわっ……と!」


 初撃で崩れかけていた体勢をなんとか立て直し、2撃目もギリギリで回避。


「ブモッ! ブモモッ!!」


 しかしミノタウロスは容赦なく斧を振り回し、追い詰めてくる。

 思っていたよりも、攻撃速度も踏み込みも速い。

 しかも全部大振りなもんだから、たぶん当たれば一撃で死ねる。


「ごめんよ!」


 一言断りを入れ、とりあえず《雷球》を撃つ。

 できるところまで剣術で、と思っていたが、どうやらそんな生易しい相手じゃないらしい。


「ブファ……」


 斧を振り切った隙をついて放った《雷球》は、ミノタウロスの顔面に直撃。

 衝撃でのけぞり、雷撃で一瞬動きが止まったところへ、一気に踏み込んでみぞおちを突く。


「ヴヴゥッ!」


 みぞおちと言っても俺の頭より少し高い位置にあるので、深く突き刺すことは難しいが、それでも硬い皮膚を貫き筋肉に達した感覚はあった。


「浅い……か」


 俺の身長があと10cm高いか、もう一歩深く踏み込めていたら、胸骨の下から突き上げるかたちで心臓なり周辺の血管なりを傷つけて、致命傷を与えられていたかもしれない。

 しかし残念ながら、俺の攻撃は筋肉の鎧に阻まれてしまう。


「ブモァーッ!」


 雷撃による痺れから一瞬で回復したミノタウロスは、自分のみぞおちに剣を突き立てた不届き者を(ほふ)らんと、斧をひと薙ぎするも俺はさっさとうしろに跳んでかわし、相手の右側に回りこんで、ひたすら太ももを突きまくった。

 ミスリルコーテッドのレイピアは、ミノタウロスの硬い皮膚をたやすく貫き、筋肉を斬り裂いていく。


「ヴフゥ! ヴモァッ……!」


 1本でも多くの筋繊維を切断すべく、手数を重視し、5連撃が決まった時点でいったん跳び退いた。

 そこに遅れて斧の一撃。


「当たるかよ」


 再び踏み込んで、今度は膝裏の腱のあたりを突きまくる。


「ヴモオォォ……!!」


 悲鳴のような叫びを上げ、膝をつくミノタウロス。


「ほい、いただき!!」


 膝をついたところで、ちょうどいい位置に下がってきた首の側面、頸動脈がありそうなところに、刺突の連撃を加える。


「ヴォァ……」


 ちょうど3発目の攻撃が上手く頸動脈を捉えたようで、噴水のように血しぶきが上がった。

 さらにダメ押しで2発突き、飛び退いて敵の間合いから外れる。


「ブルゥァ……ッ!」


 最後の一撃とばかりに繰り出したミノタウロスの攻撃はあえなく空を切り、振りぬいた姿勢のままどうと倒れ伏した。

 なんとか起き上がろうとあがき、顔だけはこちらに向けていたミノタウロスだったが、やがてその瞳から生気が消え、ほどなく消滅した。

 消えた後にはバレーボール大の魔石と、長柄の戦斧が残った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
劉備の腹心【簡雍】視点で描くライトでヘヴィな三国志の物語
『簡雍が見た三国志』

1-3巻発売中!
『アラフォーおっさん異世界へ!! でも時々実家に帰ります』
アラフォーおっさん3巻カバー

アルファポリスコンテンツ

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ