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4-9 高速馬車の旅

タイトル変更してみました。


すみません、更新分を間違えていたので、差し替えました

「おはようございます」

「うん、おはよう」


 早朝、駅でデルフィーヌさんと合流する。

 今日の馬車代は俺持ちだ。

 つまり、馬車の座席を手配したのも、もちろん俺。

 基本的に高速馬車の座席は全席指定だ。

 こちらから希望を伝えればそれに沿った座席を用意してくれるが、俺は面倒なので先方に任せるようにしている。

 同じ人間が2席とって、とくに指定がなければ、座席は隣同士になるのは仕方がないよね?

 というわけで俺とデルフィーヌさんは仲良く隣同士の席に座ることになった。


 こ、これはちょっと緊張するな……。

 でも、結構長い時間を無言で過ごすのもしんどいから、なんとか話しかけないと。


「そういえば、なんであのとき弓矢持ってなかったんですか?」

「え!? あのとき? ……ああ、あのときね……」


 とはいえ共通の話題はあんまりないので、共通の話題を絞り出す。

 あのときというのは、もちろん彼女がグレイウルフの群れに襲われたときのことだ。

 あれほど弓の腕があるなら、それなりの弓矢を持っていればグレイウルフごときに後れは取らなかった、と思うんだよな。


「お金が……なかったのよ……」


 デルフィーヌさんは消え入りそうな声でそう答えた。

 いや、俺もお金では苦労してるから、その気持ちわかるよ、うん。

 いまも借金結構あるもんなぁ。


「なるほど……。そういや、昨日ギルドの宿泊施設で見かけなかったけど、どこに泊まったんです?」


 そうそう、昨日はデルフィーヌさんいなかったんだよね。

 とういか、普段ギルドの寝台で見かけないから、別のところに泊まっているんだろうとは思うんだけど。


「自分の部屋に決まってるでしょ」

「え! お金ないのに!?」

「うるさいわね!!」

「あ……ごめん」


 いかん、つい反射でつっこんでしまった……。


 うーん、それにしても、優先順位がおかしいよね。

 部屋借りる金があるんなら、そっち削って弓矢を用意すればいいのに……って思うけど、そこはやっぱ女性特有のこだわりがあるんだろうなぁ。


 この話題はこれ以上つっこむのはよくないと思うので、なにかネタがないか考える。

 ……あっ、そうだ。


「気になってたんですけど、エルフとハイエルフの違いってなんなんです?」


 そう、これもちょっと気になってたんだよね。

 昨日のクロードさんは、どうやら普通のエルフらしい。

 対してデルフィーヌさんはハイエルフ。

 違いがいまいちわからんのだよね。


「えーっと、エルフはエルフ同士の夫婦の母親から生まれるんだけど、ハイエルフは木に()るの」

「は? 木に?」


 なんでもハイエルフというのは、エルフの夫婦の間にできた受精卵を白木(はくぼく)という木に宿すことによって生るらしい。


「ただ、白木は滅多にないし、ハイエルフをひとり実らせたら枯れてしまうのよ」


 さらにエルフってのは長命なせいか妊娠しづらく、希少な白木を見つけてもそのとき受精卵を宿している夫婦がいなくて、白木が普通に実をつけると、もうその時点でアウト。


「なるほど、白木ってのはとにかく一度実をつけると、枯れてしまうわけなんですね。じゃあその身から種を取って植えたら栽培できるんじゃないです?」

「それなんだけど、なぜか実から採れる種を植えても白木は芽を出さないの」


 白木がどのようにして発生しているのかというのは、依然謎だそうな。


 次にハイエルフの特徴だが、ハイエルフはエルフに比べて魔力が高く、代わりに身体能力は低い。


「なら、やっぱり魔法を覚えたほうがいいんじゃないです?」

「いまのネサ樹海……エルフの里のことなんだけど、そこじゃ魔法を覚えるのはダサいのよ」

「はぁ……」


 うーん、よくわからん。


「ハイエルフ以外に、特徴的なエルフっているんですかね? ダークエルフとか」

「いるわよ」

「あ、いるんだ」


 そっちは黒木(こくぼく)という木に生るんだとか。

 ダークエルフはハイエルフとは逆に、魔力が低い代わりに身体能力が高い。

 ただ、この能力の高低についてはあくまでエルフ基準で、ハイエルフの身体能力はヒトと変わらんし、ダークエルフの魔力はヒトとは比べ物にならないほど高い。

 それ以外にもハイエルフは《光》属性に適性があり、ダークエルフは《闇》属性に適性があるという特徴もあるが、魔術が主流となった昨今、あまり意味がないらしい。

 ……聞けば聞くほど魔法を習得したほうがいいと思うんだけどなぁ。


「やっぱダークエルフとハイエルフって仲悪いんです?」

「なんで? 同じエルフ同士仲いいに決まってるじゃない」

「あれ? じゃあダブルが嫌われたりってことは?」

「同じエルフの血が流れる仲間でしょ? なんで嫌うのよ」


 おやおや、俺が知ってる感じじゃないな。

 なんかいろいろイメージ崩れてがっかりする部分はあったけど、まあ差別とかそういうのがないってのはいいことだよね。


「そういやデルフィーヌさんは、なんでトセマにいたの?」

「デルフィ!」

「はい?」

「……って呼んでいいわよ」

「えーっと……」

「毎回毎回デルフィーヌさんじゃ呼びづらいでしょ。だから……」

「いえ……別に」

「まだ長い? じゃあフィーヌは? なんならデラでもエラでも呼びやすいように呼んでくれていいわよ!」


 急に愛称呼びを提案されて、少し戸惑ってしまったけど、これって距離が縮まったって考えていいよね?

 バスで隣同士作戦、成功?

 いや、計画してたわけじゃないけど。


「ああ、はい、じゃあその、デ……デルフィさんでお願いします」

「“さん”もいらない。あと、その丁寧なしゃべり方もやめて」

「え、いいの?」

「いいわよ、もちろん」


 実は敬語って結構苦手なんだけど、デルフィさ……いやデルフィには、最初に助けてもらった恩があるから、敬語じゃないと失礼かとおもってしまっていたんだよね。

 でも彼女からしたら、初対面で俺が助けたことになってるわけだし、もしかすると居心地の悪い思いをさせていたのかも知れない。


「じゃ、じゃあ、改めて聞くけど、デルフィ、はなんでトセマに?」


 ちょっと意識しすぎてたどたどしいしゃべりになってしまった……。


「それはね……」


 エルフってのは100歳で成人を迎えると、とりあえず樹海を出るらしい。

 で、そこからは好きに生きていいんだと。

 ただ、樹海を出たエルフは外界で知り合った人たちが寿命を迎えて死に始めると、なんか寂しくなって樹海に帰ることが多いんだとか。

 そのままずっと樹海に引きこもる人もいれば、しばらくして外に出る人もいる。


「もちろん樹海に帰らず、外界で過ごす人もいるんだけどね。たぶんクロードさんはそんな感じじゃないかしら」


 デルフィは1年ほど前に樹海を出て、いろいろ放浪しているうちに蓄えが尽きたので、たまたま訪れていたトセマに腰を落ち着けたらしい。


「というわけで、特に目的があって、あそこにいたわけじゃないのよ」


 いろいろと喋ってたけど、そこまで深い仲でもないし、なにより俺が緊張しまくって、会話が減ってきた。

 しかしそうなると眠気が増えてくるわけで、 気がつけばふたりとも眠っていた。

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