表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/100

見知らぬ世界

なろう初公開作品の改訂版です。

後日談でも書こうかなと、読み返しながらついでに改行の整理でも……と思ってたらがっつり改稿してしまいました……。

 俺は薄暗い森の中を全力で走っていた。

 たぶんいまは昼ごろなんだと思う。

 時々だけど木々の間から差し込む日差しは、かなり高い位置からだったし。


「クソッ……! 始まってすぐにダッシュしてるってのに!」


 無駄口を叩かず走ることに集中したほうがいいのはわかっている。

 でも、どうしても悪態をついてしまう。

 呼吸をするのも精一杯の状態なのに、独り言が出てしまう。


《……悔い改めい、バチ当たりもんが……》


 うるせぇ!!

 俺みたいな奴なんざいくらでもいるだろうが!

 家族に迷惑かけた? 働け? わかってらンなこたぁよ!!

 でも無理なもんは無理なんだよ!!

 

《……世界を救うのじゃ……それがお主に科せられた罰なのじゃ……》


 冗談じゃねぇ!!

 大したチートもなしに世界なんざ救えるかよ!!

 どんなムリゲーだよ!!


《……お主が世界を救うまで……》


 チクショウ……チクショウ……!!

 もう……足音が近い。

 なんでだ?

 5回死んだ!!

 もう、終わりにしてくれよ……。


「ぐぁ!! あ……、チクショウ……痛ぇ……」


 背後から身体に伝わる衝撃。

 そして背中から胸を貫く熱い痛みに襲われる。

 胸元をみると、ドリルのような螺旋模様のある獣の角が飛び出ていた。

 地獄のような痛みと苦しみが全身をめぐる。

 でも、それ以上に嫌なのが、なんとも言いがたい恐怖。

 それ(・・)は足の先から徐々にせり上がってきて、下っ腹のあたりに溜まるんだ……。


 そしてそれ(・・)はそのあと、下っ腹を中心にじわじわと全身を蝕むように冒していく……。

 なんだよこれ……。

 もう5回も経験してるのに、全然慣れねぇ……。

 嫌だ……、怖い……、もうこんなのやめてくれよぉ……。

 ……………………

 ………………

 …………

 ……


《……それは終わらんよ……》


 クソッ!!

 結局またここかよ……。

 

**********


 俺は山岡勝介。

 大卒以降ずっと家に引きこもっていたエリートニートだ。

 俺には両親と妹が1人いる。

 親父はもう諦めたのかなんも言ってこねぇ。

 お袋は床ドンすりゃメシは持ってきてくれる。

 妹は……こないだ泣きながら「頼むから死んで。行方不明でもいいから」っていわれたな……。

 なんか俺のせいで結婚できないんだとよ。

 いや、まあそれは申し訳ないけどさ、自分で死んだり蒸発できたりする勇気がある奴は引きこもったりしないんだぜ?


 まあそんな感じで家族に迷惑をかけつつのんべんだらりと生きてたんだが、ちょっとしたマヌケな事情で俺は死んだらしい。

 いや、死にかけてんのか。

 そこで神さまっぽい奴に会って、なんやかんや説教された後、異世界に飛ばされることが決まった。

 なんでも親不孝で妹にも迷惑かけてその上バチ当たりな俺は、この世界を救うことを義務付けられたらしい。

 しかしそこはそれ、俺もエリートニートだからして、ネットでラノベなんかは読み漁ってるわけよ。

 ってことはあれだ、異世界転生ってやつだ。


 正直わくわくしたよね。

 だって異世界転生だぜ?

 いや、正確には転送って言われたかな。

 転生ってのは元の世界で死んで、新たな生命として異世界に生まれ直すことなんだって。

 んで元の世界からそのまま異世界に飛ばされるのが異世界転移、あるいは召喚。

 で、俺の場合、元の世界の肉体は辛うじて生きてるんだと。

 その上で、新しい世界に適応した、元の世界のに似た体を用意してもらって、そこに魂だけ転送されてるらしい。

 そしてなんと、この世界を救った暁には死にかけてる俺を生き返らせてくれるんだと。

 しかも功績次第じゃなんらかの報酬もくれるらしいんだわ!

 今まで家族に迷惑かけてきたぶん、利息つけて返せるぐらいの報酬は最低限保証されるってよ!!

 こりゃもうサクッと世界救ってみんなハッピーって感じで行こう!!


 ……と思ったんだけどな。

 いろいろ説明受けていざ転送!ってなって、気がついたらこの薄暗い森の中にいたってわけ。


 異世界に来たからには、まず確認するよね?

 そう、ステータスだよ。

 だから目が覚めてすぐに俺は念じたわけよ「ステータス!」ってな。

 そしたらさ、出たよ。

 マジで出たんだよ、ステータス画面が!!

 異世界モノっつったらチート能力だよな!!

 ってわけでステータス画面を詳しく見ようと思ったら……、いきなりドンッと背中にきたわけよ、衝撃が。

 体の中心が熱いっつーか痛いっつーか、ほんとシャレになんねぇ感じでさ。

 そっから体中に激痛が走って、しばらくしたらそれ(・・)がきたんだよ。

 足下からゾワゾワってさ……。

 それが徐々にせり上がってきて、下っ腹あたりにモヤモヤと溜まるの。

 なんつーか、すげー怖い。

 何が怖いのかわかんねーけど、とにかく怖い。

 一刻も早く逃れたいのに身動き取れねーし……。

 んで、それが今度は全身に広がるような感じになって、だんだん視界が暗くなってくる。

 あ、これが死ぬってことなんだなって思ったら、急に視界が開けたんだ。


 最初とおんなじ、薄暗い森の中。

 何がなんだかわからなくてボーッとしてたら、また背中に衝撃だよ……。

 おんなじこと繰り返して、また同じ場所で視界が開けた。

 だから今度は、振り返ってみたんだ。

 そしたらいたね、ヤツが……。


 ウサギなんだよ。

 形はウサギ。

 でも大きさがヤバい。

 大型犬ぐらいある。

 で、もっとヤバいのが(つの)

 そう、角が生えてんの、頭から。

 なんかドリルみたいな長いのが。


(……なんだよコイツ、ヤベェじゃん)


 って思ってたら飛びかかってきた。

 で、胸を角で貫かれてアボン。

 そしたらまた同じとこから。


 ……………………。


 ここまで来たらもう分かるよ。

 アレだろ、“死に戻り”ってヤツ。

 でもさ、ホント死ぬのヤなんだよ。

 痛いのもあるけど、あの怖いのがとにかく嫌。

 ホント二度と味わいたくない。

 だから、なんとかしようと思ったんだ。

 異世界といえばチート能力だろ?

 魔法でも出ねぇかと思って念じてみたんだ。


 何も出ねぇよ……。

 みぞおち貫かれてまた同じとこから。

 振り返ればヤツがいる……。

 まあチートは物理系かもしれないしな。

 おもいっきりぶん殴ってみたわ。


 ……ダメだったよ……。

 今度はこっちから突っ込んだせいで喉やられたよ……。


 ……………………。

 これが罰?

 死に続けるのが罰?

 いくらバチ当たりっつっても、これはマジ勘弁。

 こんなんだったら死んだほうがマシだっての!

 そしたら、一応死亡保険ぐらいかけてるだろうし、その分で多少なりとも今までの迷惑料家族に払えるじゃん?

 なによりこの先何十年とかかる俺の生活費なんかも浮くわけだし、こりゃもう終わりでいいやって思ったわけよ。

 暗くなっていく意識の中で俺は念じたね「報酬とかいいから、もう終わりにしてくれ! 俺もう死んでもいいから!!」ってさ。

 でも5回目の死に戻りは否応なしに訪れたよ。

 今度は視界が開けた瞬間、後ろも見ずに一目散に逃げ出したんだ。

 で、ご存知の通り5回目もアウトだったよ。


 ホント、マジ勘弁してほしい……。

 迷惑かけてすんません……。

 バチ当たりですんません……。

 だからもう、終わりにしてください……。

 俺はもう、死んでもいいです……。

 どうせ生きてたって何の役にも立たないんだしさ……。

 ……………………。

ヒロインとの出会いをかなり変えているので、旧版を読んだ方ももう少しお付き合いいただければ幸いです。

その違いをお楽しみいただける4話まで、一気に公開しております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
劉備の腹心【簡雍】視点で描くライトでヘヴィな三国志の物語
『簡雍が見た三国志』

1-3巻発売中!
『アラフォーおっさん異世界へ!! でも時々実家に帰ります』
アラフォーおっさん3巻カバー

アルファポリスコンテンツ

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ