森の中のちょっとした家
連続投稿(設定できてたら)二本目です。すでにいろいろとやろうとして頓挫してるので、しっかり軌道にのせたいですねー。
「そろそろおきてください、お嬢様」
何度目かの揺さぶりを受けて、私はやっと今日が休日だということを思い出した。
「…………寝坊した⁉」
「そんなの、いつものことじゃないですか。それより、朝ごはん温めるんで身支度なさってください」
気付けばミーネはもう朝食はとっくにすませて、淡い色のワンピースに身を包んで私を見ていた。
「うん……」
「なんですか。お嬢様、人のことそんな舐めるように見て」
……ミーネの落ち着いた声で言われるとなかなかにクるものがある。が、彼女の機嫌が良くないのもしょうがないといえばしょうがない。
「ごめんね、ミーネ。すぐ準備する」
「……まったくです。せっかく、二人でお出かけしようと話していたのに。これじゃあ帰りも遅くなってしまいます」
「うう……」
小言を聞きながらも、とりあえず寝間着のまま外に出るのも寒いので先に朝食を食べることにする。
いつもとおなじ、温かいスープだ。
「お着替えは私が用意しますから、お嬢様はさっさとご飯食べて顔洗ってきてください」
「えー?いいって、なんか適当に自分でやるから」
「ダ メ で す ! お嬢様の着こなしは、あ、ええと……、」
そこまでヒドかっただろうか。
それを口にすると、ミーネは少しどもりながらも理由を口にしてくれた。
「ダメではないんですよ?ダメでは。ただ、なんというか、露出が……」
……そんな変な格好してたのだろうか。
「だってお嬢様、スカートとかも妙に丈短くするし……」
「あのくらい普通じゃない?」
「ですけど、お嬢様……」
そんな他愛もない言い合いよりも早くスープが無くなってしまった。
結局ミーネはセンス抜群な服を既に出していてくれたので、それを着るのがベストという結果に落ち着く。
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袖に手を通しながらも、私は一つ、気になった事を口にした。
「ミーネ」
「なんです?お嬢様」
次は私の食べ終わった食器を片付けながら
、彼女は聞き返した。
……ああ、やっぱりこれだ。
「だからさ、その、"お嬢様"って」
「あっ」
無意識に口に出ていたのだろう。ミーネはもうしわけなさと恥ずかしさ半々な顔でこちらを向いて、ばつのわるそうにこちらを伺った。
「……もう、私もミーネもおんなじだから」
「……すみません。お嬢……、ああいえ、ユフィイ様」
「様付もいいって」
「えっと、ですが……」
もう、7年も前の事なのに。私もミーネもよく覚てている。
側付きで同い年の彼女と国外に逃げ出してから後、知人を頼りに還俗したわたし達はとある小さな町で暮らしていた。
女二人ということで頼りにした老従は心配していたが、その支援を断ってもなんとか暮らしてきている。
もちろん、それは父の残した国外資産であったり、今でも私を頼って来る昔の臣下であったりのつながりがあってこそだが、それでも私たちは二人で生きていた。
もう、まわりに数え切れないほどの国民がいなくても、皮肉なほどに寂しくなかった。
「ユ、ユフィ。……ユフィイ」
意を決したようにミーネが私のことを口にすると、彼女のはっきりとした声音から響く名前は、耳朶に響く瞬間に私にとっての快感へと変わった。
やはり、ミーネは愛すべき、私の最後の……。
友人、だ。
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「待たせたわね。それじゃ行きましょ、ミーネ」
「ええ、お嬢……。ええ。」
また言いそうになって、口を閉じる彼女は私と並んでも遜色ないほどに可愛らしく、美しい。
私の服が、明るい色を基調にしているのは彼女なりの、ちょっとした気遣いなのかもしれない。
そんなことを思うと、この大変な日々も恋しく感じてたまらなく感じて、
「今日、どこかで服でも買いに行かない?」
「服ですか?なにか欲しいものでも?」
ヒラヒラとスカートの裾をつまみながら尋ねる彼女を、私はちょっと困らせるのだ。
「私が買いたいのはミーネ、あなたの服よ」
「えっ」
「私が選んであげるわよ?」
「…………え?」
結局、きょう彼女の服を買うことはなかった。
……あんなに拒否らなくてもいいのに。
ありがとうございました。
あと一本は確実に投稿するので、そちらも見ていただけると幸いです。
こっからどういう展開にしていきましょうかね…。