これ運命ですわ
話を聞いてみると俺達の旅程は3日ほど。隣村まで半日それから又半日かけて次の村へ行く。そこで一泊し、1日かけて小さな町へ、そこでまた一泊し、1日かけて目的の町リルドルに到着らしい。
移動は馬車。歩きじゃなくて本当に良かったと思う。
だが、道が悪い。
それも当然かとは思う。なんせうちの村へは月に1、2度人の往き来があるかって程度で草は生え散らかしるし、石なんかでゴツゴツしてる。ボロい馬車ならすぐに壊れそうな悪路だ。
そんな悪路を馬車が行く。行者は狩人のウインバリオン。長いからウインな。
荷台は左側が椅子の様に座れる段差がついており、右側には段差がない。段差にライネルとヴィルシーが座りパパンとママンが荷物を積んだ空きスペースに座る形になった。
俺はパパンの膝の上。当然だ。こんな悪路を行く馬車に直に座ってたら3才児のやわなケツなんて数分で腫れ上がってしまうだろう。パパンには男の修行だと思って頑張って頂きたい。
パパンにはヴィルシーの真横に座って貰う。道中色んな話がしたいからね。
ーーー
いや、実に面白い。今までの色んな謎が判明した。
まず、天職。俺が鑑定で人の天職を調べられる事は話してないのでどうしようか悩んだが簡単なものだった。
「ヴィルシーさん。神様は僕に軍師って本当の仕事を与えてくれたんだけど、皆にも本当の仕事ってあるの?」
「本当の仕事?あぁ天職のことかな?それなら誰でも神様から頂いているわ。だから私は神官になったの、ライネルとウインも同じよ」
「ふーん」俺は上を向く
「父さんの天職って何?」
「知らないなー、街の神殿で調べられるってのは聞いた事あるけど、父さん村から出た事はなかったからね。村で生きていくには必要ないし、街にいく用事もなかったから調べたことないんだよ。だから母さんも天職は知らないはずだ。」
「ふーん」ヴィルシーの方を向く
「みんな生まれる時に神様に会うんじゃないの?それと、天職って何?」
「稀にお声を聞けたりする人はいるけど、普通はいないわ。神様のお声を聞いたり、神託を貰ったりするのは、聖痕のある聖者や聖女、巫女なんかの特別な天職の人間だけ。それと、天職だけど、さっきエストさんが言われた通り知らなくても別に問題はないわ。天職と同じ職につくと成果が出やすいからなるべく天職の職につくべきだけど、それも絶対じゃない。まぁ、神殿としては天職の職につく事を強く勧めるけど、調べた事もない人は天職につくなんて無理だからね。」
再び上を向く「父さんも母さんも街に着いたら天職調べなくちゃね!」
はは、そうだな。と返すパパン
それからも色んな話をした。魔法のこと、神様に会ったときどんな話をしたか、聖痕ある人は特別な力がある人がいるがそんな力はないか等。
特別な力に関しては俺の切り札だから、話すべきか悩んだが、今の天気がわかるとだけ答えた。
うん。まぁ、複雑な表情するよね。そんなの外に出れば一発でわかるから能力とも言えない能力だもんね。
休憩を挟みつつ、なんだかんだと話ていると最初の村に到着。時刻は俺のスカ◯ターに2時過ぎの表示。最初は良かったけど夏場にホロ馬車で移動するもんじゃないね。いや、マジで。後ろのカーテンみたいなの開けてたけど、半分サウナ。3才児には辛いっすわ。それも終わり昼休憩。
馬に水をやり、干し草を与え、村の広場に行く。
この村も20軒程度しか家がなく、無論宿屋も食事処もない。どの村にも広場があるらしく、広場の端で食事をする。スープを作るのにヴィルシーが魔法で火を起こしてたんだけど、なんだろう、よく分からない。薪に手を近づけて何か呪文のようなものを唱えると薪に火がついた。さっきの馬車の中で何やら説明してくれてたが、知らない単語が多過ぎてあまり理解出来なかった。まぁ、これからだろう
ーーー
昼休憩を終わり旅路に戻る。心なしか馬も少し疲れが取れた様に見えなくもない。これからも頑張って欲しい。
村を出て一時間少し過ぎた頃、ウインご馬を停める
「シルバーウルフが何かにたかってるぞ!どうする?」
「どけ!」後ろを警戒してたライネルが移動し行者台に顔をだす。
「あれは人間の、子供か?」とウイン
「っぽいな、どうしてこんな所に。いや、それよりどうする?矢を射つか?」とライネル
初めての魔物にワクワクしながら、俺も行者台から前をみる。
そこには、母子と思われる成狼1匹と幼狼3匹、ぐったりとした1才位の子供。白狼達はこちらから人間の子供を守る様に周りを囲んでいる。
とりあえず鑑定オン。
シルバーウルフ LV21
天職 狩人
シルバーウルフ LV2
天職 狩人
シルバーウルフ LV2
天職 狩人
シルバーウルフ LV2
天職 従者
LV1
天職 勇者
あ、これ、運命だ。天啓ですわ。明らかに神の采配。
なんて考えていると、母狼と目があった、気がする。すると、アオーンと雄叫びをあげてからこちらを一度見、草原を三匹で駆けていく。そう、三匹で。
残ったのは勇者と従者の子狼。子狼は心配そうに勇者の顔をペロペロと舐めている。
狼達が見えなくなると、ヴィルシーが馬車から飛び出し勇者のもとへ急ぐ。
「あのシルバーウルフどうするかな?」ライネルが何となしに呟く。
「殺す必要はないと思います」
「どうしてだ?坊主」
「さっき狼達は赤ちゃんを守る様に此方を向いていました。殺そうと思えばすぐに殺せたでしょうが、それをしなかった。そして、ただ赤ちゃんを此方に渡すだけなら狼はみんなで帰ったはずです。狼が叫んだのも僕には、赤ちゃんと子狼を頼むって感じに聞こえました。」
「うーん。そうだな。そうか?まぁ、あれくらい小さいシルバーウルフなら倒すのもわけないから、取り敢えずは保留にするか。」
馬車の先では勇者の元にたどり着いたヴィルシーが魔法をかけこちらに帰ってくる。その後ろをとことこと子狼がついてくる。
子狼かわいいな。
ぐったりしてた勇者が魔法のお陰か大きな声で泣き始める。
「お腹が空いたのかしら?」とママン
ウインが言うに、次の村まではまだ少し時間がかかるそうなのでここで休憩をとり、勇者のご飯を作ることにする。
ヴィルシーが勇者にご飯を与えてる横で俺は子狼をみる。
なんだかこいつも物欲しそうにしてると思い、試しにウインから干し肉を貰い与えてみる。この干し肉が本当硬い、もうね、俺はスープかなんかに入れて食べないと食えないんじゃね?ってくらい硬い。
食べれるかな?なんてちょっとワクワクしてたけど、流石は魔物だね。ゆっくりではあるが確実に食べてる。そこまで噛む力は強くはないけど、人間の成人レベルの咀嚼力はあるみたいだ。これ俺噛まれたら普通に死ぬな。怒らせないようにしよう
ーーー
食事も終わり勇者が出すもの出したのを処理し終わると旅路に戻る。
馬車の中では愛おしそうに勇者を抱くヴィルシーとその腕の中で眠る勇者、その横に控える子狼と勇者を見つめるその他。
ゆったりとした空気のなか、西に太陽が沈むと同じタイミング、夜9時過ぎに次の村についた。
読み返すと粗しかねぇ!