村を出るまで。
俺の中での話し合いは終わったが、両親はまだ話を続けている。
まぁ、そうだろう。まだ幼い一人息子が村から出るという話になっているのだから看過できるはずもない。これからどうするか決めるのだろう。
一人村長宅を出る。
なんで一人かって?そりゃあれだ、あんなとこ居ても楽しくないだろ?なら家でダチョウぱいせんが熱々のおでん食べさせられてる動画観た方が数倍楽しいに決まってる。
出る川さんと上の島さんのリアクションはほんと至高だね。
ーーー
ベッドの上でへらへら動画を見てたら両親が帰って来た。小一時間ってところだろうか。
俺の姿を見つけるやいなや「私たちも付いて行きます!!」だと
オーケー、勿論そのパターンも考えていた。
動画を停止し両親に向き直る。
「今まで神様のことと、こんなに喋れること隠していてごめんなさい。知られると気味悪がられると思って言えませんでした。」
言い終わるとママンがそっと抱き締めてくれる。
「そうね、驚いたわ。まさか私たちの子供がそんなに特別だったなんて信じられなかったの。でもね、今回のことがなくて、サペントが神様のことや、教えてもないことを喋りだしたとしても私達は気味悪がったりなんてしなかったわ。なんでかわかる?」いたずらっぽい笑みを浮かべてママンが問うてくる。
なんだろうか?やはり親の愛情ゆえということだろうか?
(素直にわからないと答えるか。)
「なんで?わかんないよ?」
ママンは笑みを深めながら答える
「あなた自分じゃ気づいてないかも知れないけど、相当変よ?生まれて半年辺りから急に泣かなくなったと思えば、へらへら笑うことが多くなって、なにかぶつぶつ言ってるの。だからこの子は普通の子じゃないっては思うようになったわ。けれど、神様に愛されてるとは流石におもわなかったけれどね!」
あー、そうかー、そうだな。明らかに普通じゃねぇな。
客観視したら明らかに異常な存在だわ、捨てるならとっくに捨ててるわな。両親の愛情に感謝。
それからママンは俺がどんだけ変わった事をしてきたかのエピソードを話始めたが聞かない。
パパンに助けを求めるが、パパンもニコニコ笑いながらママンの話を聞いている。駄目だ。親バカ夫婦だ。諦めて話の合間合間に適当に相づちを打つ。だが、話は聞かない。小声で音声認識発動。小さな島ぱいせんがパンツ一丁でパッパラーピーナッツと言いながら踊ってる狂気の動画に集中する。ぱいせん凄いよね?なぜ凄いかってーと、まずこれで飯を食おうと思ったのが凄い。そして現に飯が食えてるのが凄い。天才パイオニアなんてものは常人には理解できないんだろうなーとか思いながらもママンの話にてきとーに相づちを打っていると、どうやらママンのテンションも落ち着いてきたらしく、さっきの一緒に街に行くって話に戻ってきた。
「で、さっきの私達も街に行くって話だけど、これからについて話すわね。」
首肯し続きを促す
「最初の話じゃサペントは孤児院の一室に住んで教育を受けるって話だったんだけど、私達生きてるのに孤児院に住むとか変な話じゃない?今まで通り一緒に住むの!朝から夕方までは神殿に行って夜は帰って一緒にご飯食べて一緒に寝るの!これで寂しくないでしょ?」
俺が一人だと寂しがると思って出たことないであろう村を出る決心をしたのか。あーあったけー、愛情があったけーなー。
見ず知らずの世界に子供の為に飛び込む。自分も不安だろうけどそんな事はおくびにも出さない。前世の記憶を合わせると俺は確実に両親より年上で、寂しさなんか全く感じない。けど、それを言うのも無粋だ。無償の愛情は有り難く貰っておこう。サンキューママン
で、街にでた後のことについて話は移る。どうやって生計をたてるかだ。
「そうね?どうしようかしら?ねぇ、あなたどうする?」
「なに、どうにかなるだろう!はっはっはっは」
それが天職学者の答えか?そんな思考停止のノープランでいいのか?そんな楽観的なナイスガイがパパンの良いところでもあるんだけどね!
ノープランどうにかなんだろケセラセラ
ーーー
ノープランのままに出発の日を迎えた。村の皆にも俺が神の寵愛を受けた特別な子だと周知され、村人総出で見送りになっている。餞別を渡す人、両親と抱き合って今生の別れかの如く泣き出す人。湿っぽい空気だ。いやね、10日をあれば行ける距離ですよ?ちょっとオーバーに過ぎやしませんか?
まぁいいけど。存分に別れを惜しんでくれ。俺もJラップを殺した人の寂しい少女を聞いて感傷に浸るから。少しの間この空気を味わおう。
お目汚しの拙作になります。読んで下さる皆様に感謝を