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おもいで

作者: looc

1週間ほど前、彼女は腹部に痛みを訴え、病院に搬送された。彼女は家に帰ってこなかった。


彼女のいなくなった部屋に入った僕はふと、棚の上の写真を見た。

あれは、確か2年前。結婚したての僕たちはお互いの趣味である山登り地元の山に行ったんだったっけ。確か、結婚してから1ヶ月も経ってなかったはず。今思えば、もう少し別の場所でも良かったかな。富士山とかね。えーっと、確か忙しくてあまり遠出ができなかったんだったっけ?うん、そうだった。今までも彼女の手料理を食べたことはあったけど、結婚してから山でご飯を食べたのはあのときがはじめてで、ご飯がいつも以上に美味しく感じられたのを覚えている。


右隣の写真は、去年の結婚記念日の写真か。温泉に入りに北海道まで行ったんだったね。そのまま、何日か観光して帰って来たんだったっけ。活発な彼女に色々と連れまわされて最後の方は僕はもうヘトヘトだったな。あのときは降る雪を見ながら入る温泉がなんとも良かったけれど、今頃の季節は赤く染まった木々が綺麗なんだろうな。一緒に行きたかったな。


その隣は、彼女と二人でスキーに行ったときか。うん、スキーはほんと苦手だったな。平らな場所でもなぜか転んじゃうし、彼女も大笑いしていたな。拗ねたふりをしたら、慌てる彼女が可愛かったな。確かまだ、結婚していない頃・・・4年前だったかな?流石にここら辺は曖昧だな。


その隣は・・・大学時代にはじめて登山サークルで撮った集合写真か。みんな元気にしているかな。このときにはじめて会って、それから、色々とあって付き合うことになったんだったっけ。・・・そう言えば、みんな僕のことを後押ししてくれたんだったっけ。彼らには感謝してもしきれないな。


そして、その隣は・・・結婚式。父さんも母さんも泣いていたっけ。あれから、2年経ったけど、今でもあの日のことは鮮明に思い出せるよ。たまに喧嘩するけど、やっぱり僕は彼女が大好きだ。


うん、懐かしいな。・・・あれ?これって、日記か?どうやら、彼女の日記らしい。その日あったことを綴っているようだが、書いてあることのほとんどに僕が登場している。これには僕も、嬉しくも気恥ずかしく思った。

・・・結婚式の日の日記か。しかも、ご丁寧なことにおそらく書いた日の日付なんだろうけど、次の日の日にちが書いてある。

ええっと、なになに。


今日は夢にまで見た彼との結婚式。きっと、私は彼と出会うために、そして、この日のために生まれて来たのだ。彼は私にはもったいないくらいかっこよくて優しくて、いつも気遣ってくれる最高の旦那様だ。旦那様。うん、いいね。

旦那様、私はあなたと出会えて幸せです。こんなこと恥ずかしくて面と向かっては言えないけれど、この世の誰よりもあなたが好きです。歳をとっておじいちゃんとおばあちゃんになるまで一緒に過ごして行きましょう。これからもよろしくね。


日記を読んだ僕の目からは雫が垂れていた。

しばらくの間、日記を抱きかかえたまま、目をつぶって、そして目を開けると、僕は日記を棚に戻した。そして僕は時計を見て、

「うん、そろそろ嫁さんと俺たちの娘を迎えに行きますか。」

僕は家を出て車に乗り込むと、車を走らせた。


それから数日後、結婚式の写真の隣には僕と彼女と彼女に抱きかかえられて眠る女の子の写真がたてられていた。

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