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冷酷王の愛娘  作者: 水無月 撫子
第一章 薔薇姫とリゼアイリア
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    8話 謎の男爵令嬢

 



 つい先程、正体不明のご令嬢から、何故か言いがかりをつけられました。

 えっ……だから、こいつ誰?


 でも、これは、ちょっと良くないわね。

 

「……わたくしは、リゼアイリア王国王太子、ルピアナティア・ロゼリア・ロズマリン。第一王女でもあるわ」


 未だにビクビクと震えているユリアという少女。

 少し、イラッときたのはここだけの話としよう。


「あたしはユリア、ユリア・ピクツィエスです。どうして、そんなに睨むの?」


 いやさ、だから、待ってよ。

 睨んでないし、そもそもあんたの家名と家格くらい名乗ろうよ。


 はぁ、もう。


 疲れた私は少しばかり目を鋭くし、愛らしい王女様オーラを脱ぎ捨てて厳しい王太子オーラを貼り付けた。


 それから私は考えた。

 ユリアの家名、ピクツィエスがどの家格であったか。




 ピクツィエス男爵家。

 確か、これと言って目立った功績も何もないはずだ。

 領地は南の辺境近く。

 王都にタウンハウスはなし。


 ………経済関係は領主たち男爵家のせいで火の車。


 

 売られた喧嘩は買います。

 この国の王太子として、甘く見られる訳にはいかないからね。


「あなたはピクツィエス男爵令嬢で間違いないかしら」


 厳しい声でそう言うとユリア様は方眉をピクリとあげた。



 ピクツィエス男爵令嬢………そうはいっても、この人は庶児だろう。

 今年の貴族図鑑に彼女は載っていないが、つい先日、ピクツィエス男爵が養女を迎えたと報告があったから。



 チッ、しっかり調べれば良かったわ。

 といっても、今更後悔しても遅いのだ。


 仕方がない。



「あたしが男爵令嬢だからといってバカにするつもりですか」


 と、さらに泣きだす。

 ……面倒くさい。


 これだから、マナーがなってないやつは。


 あぁ、言っておくが、私は教育がなっていない人をバカにしているわけではない。


 この甘ったれお嬢さんが庶児でも、養女でも、貴族に属しているからだ。

 貴族とは、民の血税で生活する代わりに、民の安全を生活を守るためにある。


 その民を守るべき立場の人間が、このように甘ったれたバカならば救えるものも守れるものもない。

 だからこそ、貴族は必死で歴史を学び、マナーを体に叩き込み、人脈を広げる。


 貴族は遊んでいる訳ではない。

 民を守るため、救うために、貴族は強くなるのだ。




 貴族のなん足るかも知らぬ、甘ったれは帰ればいい。

 この場にいる資格はない。




 だが、私は王女で、王太子。

 むやみやたらと令嬢を注意するのは好ましくない。



 よってこの場での一番良い対処法……………それは




 無視する。




 スイッ



 私はユリア様に背を向けてその場から立ち去った。



 後ろでギャーギャーと騒がしい声が聞こえる気もするが、気のせいである。





 これで、彼女はこの場にいる貴族たちから無視されるだろう。

 王太子が無視したということは、つまりそう言うことだ。


 若干ひどい気もするが、あれはどう考えても不審者だ。

 そもそも、水色のドレスを着ている時点で、貴族たちには無視されるだろうし、ほっといてもそのうち騎士に追い出される。


 ピクツィエス男爵には多少悪いとも思うが、彼の男爵の多額の借金は本人のギャンブルのせいだ。

 自業自得とも言える。




 それにしても、ユリア・ピクツィエス。

 何故、あの場で私に絡んできた?

 あの人は、男爵から守るべきマナーをも教えられなかったのか?


 そもそも、私はピクツィエス男爵令嬢に招待状を出した覚えはない。

 デビューを済ませていない彼女には、夜会への参加が認められていないのだ。

 それに、彼女にはパートナーがいなかったように見えた。

 未婚の令嬢が一人で王太子に挨拶?馬鹿げてる。





 考えれば考えるほど彼女は謎だ…。



 彼女がどうやって会場に入ったのか……。

 これは、警戒態勢を引くのがいい気がする。


 嫌な予感がする。






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