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冷酷王の愛娘  作者: 水無月 撫子
第四章 ティアと血塗られた花冠の儀
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    5話 禁忌の塔


 立太子の儀式、初日を無事に終え、ソファに身を委ねた。


「やっと、終わったわ……」


 遂に正式な立太子を経て、王太子の座に着いた。

 これで、もう後戻りはできなくなる。民のために、国のために………その身を捧げるのだ。


「お疲れさまでございました、ティア様」

「えぇ。ミオナもお疲れ様。今日は早めに休んでね。まだ、後一週間はバタバタするでしょうから」

「ふふっ、忙しいのには慣れておりますわ。今はティア様のお世話をすることが優先ですよ」

「……そうね。いつもありがとう、ミオナ。今度、何か贈り物をするわ」

「有難き幸せにございます」


 微笑みながら淹れてくれた紅茶は、いつもと変わらぬ優しい味がした。


 常に自身の周りに張っている結界のレーダーが二人の人物を捉えたため、ミオナにはそのまま下がってもらった。


「……あなたたちも、今日はお疲れさまでしたね」

「薔薇騎士団長ルーク・ライデンハルト。ティア様にご挨拶申し上げます」

「犬の親玉はいっつもお堅いなぁ〜。……はいはい、挨拶するからそんな睨まないでよ。影隊長イシュア・ディルコート。只今参りました」


 イシュアは、薔薇騎士たちのことをよく『犬』と呼んでおり、その度に騎士と喧嘩を起こしている。


 おちゃらけた雰囲気のあるイシュアとは対極に、ルークはかなりの真面目であるため、この二人の相性は、もう最悪だ。


「こんな所で、喧嘩をしても何の利にもならないわ。さっさと明日の打ち合わせを始めるわよ」

「はっ!」「は〜い」


 やっと席に着いた二人に明日の予定が書かれた紙を渡す。


「明日の予定はそこに書いてあるとおりよ」


 素早く予定に目を通した二人は、あからさまに眉を顰め、表情を固くした。


「ヴェレーノア元側妃を訪問……」

「賛同しかねます」

「魔封じの施された禁忌の塔で何ができるって言うの?」

「お会いにならずとも、明日の夕刻には御前に引き摺り出されます」

「態々会いに行く必要は感じないなぁ」


 二人の反対は最もだ。


 一口紅茶を飲み、再び口を開く。


「それでも、わたくしは行くわ」


 二人は呆れきった顔をしながらも、苦笑した。


「こうなったら言う事聞かないんだよなぁ〜、我が主は」

「仕方ありませんね。殿下がその目をされた時は、我々がなんと言おうと止まりませんから。無駄に反対して、飛び出していかれても困りますしね」


 我儘っ子を見るような目で見られたことは、絶対に許さないが、なんとか、二人を説得し、明日の予定を押し進めることに成功した。




 翌日……


「ティア様、本当に禁忌の塔に行かれるのですか?」

「えぇ、そのつもりよ」


 日も上らぬ早朝に、私は身支度を整え、『禁忌の塔』へ向かった。


 広大な敷地面積を誇るロズマリン王城には、狩猟大会なども行われる深い森が存在している。


 その森の中にはいくつかの塔が点在しており、『禁忌の塔』もその中の一つである。

 王家に関わる重罪人を幽閉するための塔……。


 その存在を隠すように、塔には特殊な結界が張られており、容易に見つけ出すことはかなわない。


 今回の護衛はたった二人。


 ルークとイシュアである。


 あまり大勢を連れて移動して父に見つかっても面倒だ。

 極限られた少人数かつ精鋭を選び、三人で塔に向かうことにした。


 戦力的に言えば、私達三人で一国くらいなら軽く潰せるレベルだけどね……


 二人を近くに寄せ、そのまま複数人用の転移魔法陣を開く。


『空よ。禁忌の塔へ我らを導け』


 白の光に包まれたと思うと、私室の風景は霞のように消え、目の前にはどんよりとした雰囲気の流れる塔があらわれた。




 ヴェレーノア元側妃は、私の母であるシェルリア側妃を毒殺した犯人である。

 

 彼女は、私が産まれた騒動に乗じて、侍女を買収し、母の飲む薬湯に毒を混ぜさせた。


 毒はほんの少量であったが、産後の身では、耐えることなどできなかったのだろう。

 母は父の帰りを待たずに亡くなってしまった。


 私が正式に立太子した今、私を産んだ母は、今日をもって王国の母、王妃となる。

 側妃に据え置かれたままだった母は、死後ではあるが、戴冠式を行い、正式な公表が行われる。


 それに伴って、王妃を殺めたとして、元側妃ヴェレーノアは、公開処刑される手筈だ。



 ティアはこれから会う人物を睨むかのように、塔を見上げた。






 次回の投稿は5月12日(水)です!

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