第四章 1話 花冠の儀に向けて
ついに……!!
第四章の幕開けにございます!!
「殿下、ディルソニア伯爵夫人が、ハッシェ公国についての件で今からいらっしゃるようです」
「失礼します!!っ殿下!たった今、ルベルク共和国より、出席の報せが届きました!」
「分かったわ。ミオナ、ディルソニア伯爵夫人がいらっしゃるそうだから用意して。それから、午後からルベルク国についての講義を受けることにするから、テルに執務室に来てくれるように連絡して」
「かしこまりました」
この日、ロゼ宮殿の第三執務室には、多くの文官や使用人たちが慌ただしく出入りしていた。
そんな中、ティアはというと、山積みになった書類を一枚一枚確認しながら、絶え間なく指示を飛ばし続けている。
バタバタと室内に入ってきた文官の一人が、ティアに、その手に持っていた手紙を渡してきた。
「トルイセン伯爵夫人からでございます」
「…………生誕祭にベルフェレス王国の王太子が来るそうよ……。ミルド、料理長に至急、夜会で提供する料理にベルフェレスのものを三品は入れるように指示して。それから、アレン、ベルフェレスの担当者に、後で私に内情を報告するように伝えて」
「「かしこまりました」」
専属文官の一人であるミルドと、側に控えていた影のアレンは、指示を聞くなり素早く去っていった。
二人と入れ替わるように、水色頭が扉から顔を出す。
「ティア様ぁぁ!このテルが飛んでまいりましたよぉぉ!!」
「……相変わらず騒がしいわね。さっき報告が上がったわ。花冠の儀が終わった3日後にルベルク共和国から使者が来るそうよ」
「へぇ。あの引きこもり国家の使者が?」
「えぇ。だから、内情を知りたいんだけど、なんせ今までほとんど関わらなかった国だったから、『影』はいれてないのよ」
「じゃあ、サフリアン伯爵夫人あたりが、いいんじゃないでしょうか。彼女の溺愛している妹君が、ルベルク共和国の宰相に嫁いでおります。きっと、今回、使者として訪れるのも宰相でしょうし」
テルの提案に頷くと、引き出しから淡い黄色の薔薇が描かれた便箋を取り出す。
それにサラサラと用件を書くと、それを封筒に入れ、封蝋をした。
「これを、サフリアン伯爵夫人に届けてくれる?」
「かしこまりました。それから、明日の騎士団総会議には参席なさいますよね」
「ええ、もちろん参席させてもらうわ。陛下だけではなにも決まらなさそうだから」
「そうですね、あの人は戦においては多大に才能を発揮してくださるのですが、警備については、不手際を犯した騎士の始末についてしか頭にございませんから・・・」
わざとらしく、はあっとため息をつくテルは側近の文官にせっつかれて慌ただしく出ていった。
「殿下、大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫よ、ありがとうミオナ。あなたも疲れているでしょう?少し休んでいいのよ?」
「いいえ、私は大丈夫です。……それより、お茶の用意をいたしましたので、少々お休みください。ライデンハルト卿もそう思われますわよね?」
「はい、フィルリアン夫人のおっしゃる通りです。殿下はここ数日十分なお休みをとられていらっしゃいません。この度の儀は、殿下なしには動きませんので、どうかご自愛ください・・・」
「わかったわ、まったく、堅物な薔薇騎士団長ルーク・ライデンハルトを味方につけるなんて、勝ち目はないわね」
くすっと笑いながら、ミオナに促され、ソファに腰掛ける。
すかさず温かい紅茶と甘美なお菓子がたくさん用意される。
「それにしても、本当に忙しいわね」
「なんせ1万年に一度といわれる次代の女王陛下の立太子の儀式ですから」
「王国史以来4人目となる女王陛下の立太子に国内外問わず、注目は高まっています」
「そうね、その分、警備は例年にも増して、厳重に行わなければならないわ。わたくしやお父様の警護ははすべて薔薇騎士と影に対応させ、近衛兵は全て、場内および要人たちの警護に当たってもらう。それ以外の騎士たちはそれぞれ配属ごとに、国内の警戒に勤めてもらいたいわ」
「仰せのままに」
「花冠の儀は、魔導映写機で国内すべてに中継されるわ。各地での賑わいゆえの問題も起こるでしょうから、地方騎士団との連携は密にしなくてはならないわ」
「もう!殿下、せっかく休憩なさっているのですから、お仕事のお話はおやめください!!それに、ライデンハルト卿も!殿下をたきつけるのはよしてくださいませ」
「あはは、ごめんなさい」
「・・・も、もうしわけございません」
大きな体で申し訳なさそうにシュンとするルークを見て、笑いがでてきた。
もともとこの男、剣を握れば、王国きっての実力者であるが、それ以外となるととんと小心者で、特に女性には弱いのである。
………まぁ、何はともあれ、準備に費やす日々は嵐のように慌ただしく過ぎていった………
次の更新は3月27日(土)です!




