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冷酷王の愛娘  作者: 水無月 撫子
第三章 ティアと母シェルリア
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    14話 外交官

遅くなりましたぁぁ!!

すみません!!

ズッシャャャー!!!!(全力の土下座)




「おはようございます、ティア様」

「おはよう、チェンシー」


 チェンシーは慣れた手付きで支度の指示を他の侍女にしながら、私の髪を整えていく。


「本日は外交官を交えた会談だとか」

「えぇ。今日は、今後の国貿について話し合う予定よ」


 今日は、外交官たちとの会談があるのだ。

 こちらの方が優位だとしても、外交官とはすなわち腹黒狸ども。

 少しでも粗が出ればすぐさま突かれるため、終始気が抜けないのが事実。


 これがまた、すごく疲れるのよね〜


「お戻りになったらマッサージをいたしましょうね」


 えっ!ホント!?

 やったぁ〜!!さすが、私の優秀な侍女。素晴らしい洞察力だわ!!


「ありがとう!」


 チェンシーに向けて満面の笑みでお礼を言ったのだが、当の本人はそれを見てうずくまってしまった。


 何やらぶつぶつと小さな声が聞こえるが………


 う〜ん、こういう時は多分触れないほうがいい気がする。


 と、私の優秀な第六感が告げていたため、放っておくことにした。


 まもなく、支度も終わり、部屋に迎えに来たセドと共に会議室へと向った。



 数時間後……。


「だぁーかーらー!!何故、我が国が妥協せねばならないのです!?」

「ふん!話になりませんね!そもそも、この品に関しては我がリゼアイリアの方が………」


 ギャーギャー、ガーガーと言い合っている男女。

 赤茶の長い髪を高い位置で一つに括っている女性はファンベルツィアの外交官、ナンシー・フェルム。

 眼鏡をかけた神経質そうな男性はリゼアイリアの外交官、ドルドア・ロンス。


 ここまで、ほとんどなんの衝突もなく、順調に決議が進んでいったのだが、輸入品の適正価格の見直しについての議論に入った途端この調子だ。


 先程から中々話が進まない。


 しかし、外交官としてこの場を任せられるほどに優秀な二人だ。

 外交初心者の私が口を挟むところではない。


 それに、同席している伯父様も何も言わないことから、ここで何か言うのは逆によろしくないだろう。

 この場では地位的に私の発言が決定事項にされる。それが暗黙の了解と言うものだろう。


 そして、見守ること数分。


「……ふむ、この値なら譲歩しよう」

「えぇ、こちら側もこの価格なら認められます」


 と、話が落ち着いてきたようだ。


「ティア様、ご確認を」

 

 ロンス侯爵は、私に決定した内容の書類を渡してくる。


「特になんの問題もないわ。ありがとうございます、ロンス侯爵」

「ハッハッハッ、お礼を言われるようなことはしておりませんぞ!これが私の仕事ですからな」


 先程の剣幕とは打って変わって、大口を開けて笑っているロンス侯爵に、なんだか、いい臣下を持ったなと思ってしまった。


 ダイス伯父様もそれを穏やかに見守られており、会議は和やかな雰囲気で終わった。



 会議室を出てすぐに、扉の前に待機していたセドが私を見つけて寄ってきた。


「無事に終わったわ」

「お疲れ様でした。ところで、これからの予定なのですが……」


 そのまま予定を話そうとするセドを手で制し、一端話を止める。


「……セド、歩きながら聞くわ」


 何かを察したセドは、即座に配備されている私の騎士たちに合図を飛ばし厳戒態勢をひかせた。


「範囲魔法に城のものではない存在が引っかかってるわ、それも敵意を持ったもの」


 範囲魔法とは、私が自分の半径10メートル以内に入ったものを確認する魔法だ。

 それは魔物や人間を区別するだけでなく、その存在が自分に対して向けている感情によって敵や味方などを判別できる。

 いうなればレーダーのようなもので、範囲に入ったものは種族等によって形で示されており、敵意等は色で分けられている。

 この魔法は高性能なだけあって、魔力をごっそり持っていかれるので常に発動しているわけではない。

 ただ、ここはファンベルツィア。自分の城から出ているときはほぼずっと発動している状態だ。



 丸の赤。つまり、私に敵意を持った人間が私に近づいて来ている、ということ。


 

「敵意を持った人間よ。だんだん私に近づいてるわ」

「あと、どのくらいですか」

「この回廊の曲がった先ね」

「避けますか」

「いいえ、誰なのか目星はついてるの。このまま行くわ」


 普段通り並んで歩きつつ、小声で話す。

 セドは若干不満そうだが、こういう場合大抵似たような手を打つ私に慣れているのか何も言わずに従う。


 庭園に面した回廊を曲がった時。

 予想通り、彼女がいた。


 とは言っても直接会ったことはこれまで一度もないんだけれど。


 真正面から私をにらみつける彼女に、私は顔の前で扇を広げるとクスリと笑った。





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