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冷酷王の愛娘  作者: 水無月 撫子
第三章 ティアと母シェルリア
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    10話 母を知る(2)



 黒いカラス……ならぬ、イシュアをため息混じりに見やる。


「まったく、あなたは本当に……」

「そうは言ってもティア様。俺はティア様以外に姿をみせる必要はありませんからね」


 面白そうに笑いながら私の前に膝をつく。


「報告がございます」

「賊のことでしょう?誰の手引か、つかめたの?」


 すると、イシュアはニヤリと笑った。

 つかめたんだな…。しかも、他にも面白いことまで。


「もちろんですとも。黒幕はファンベルツィア貴族、ガンゼル男爵でした」


「ガンゼル男爵……」


 確か、ガンゼル男爵家は、新興貴族で、つい最近男爵位を叙勲したはずだ。


「ガンゼル男爵には、娘がいたわね」

「その娘が、最近王宮に入り浸っているとしたら?」


 イシュアが不敵に笑う。


「王妃の座が狙いね?」



 馬鹿だわ。

 ダイス伯父様を狙うのに、わたくしが邪魔だったのね。


「中々振り向かない王太子の元に、他国の王とでも婚姻を結べる大国のお姫様がやって来た。となれば……」

「事情を知らない新興貴族は、焦る……」


「特に、ガンゼル男爵は、元々ファンベルツィアの人間というわけでなく、流れの商人で、ファンベルツィアが王国となった際、この地に定住したようですよ」

「それなら、知らなくても頷けるわね。本来、公国時代からここに住んでる者ならば、母のことは知ってるはずでしょうから」


 母を知っているならば、私を知っている、王家の事情を知っている。


 そして、ダイス伯父様が未だに誰とも結婚しない理由も…。


「ガンゼル男爵は、どうしても娘を王妃にしたいようですね」

「王妃なんて決して楽なものじゃないのに…。きっと地位がほしいだけなんでしょうね」


 そうか、でも、令嬢は王宮に入り浸っているのか…。


 ふと、ひとつのこれから起こるかもしれない事に思い至り、顔をしかめて、イシュアを見る。


「……明日からはすぐ近くにセルエドを立たせましょう」

「俺も明日からは近くにいますよ。もちろん、人からは見えないとこですが。あぁ、あとは、寝台の下に剣を忍ばせておいてください。ま、ティア様のことだから短剣は常に持ってるんでしょうがね」


 と、言われたので、ネグリジェの裾を太腿のところまで捲くりあげて、短剣を見せる。


「ちょっ!そんなとこに隠してもの見せなくていいですし!しまって、しまって!!……まじで、俺、帰ったら陛下から目潰しされるかも………」


 ざまぁ、これも、日頃の行いのせいね。



 イシュアとひとしきり話したあと、ぐっすりと熟睡させてもらった。

 朝、寝室に面しているバルコニーのすぐ下の庭に、返り討ちにされた暗殺者たちが転がっていることなど、知らないふりをして、美味しく朝ごはんを食べた。



 ……ただのお姫様だったら気付かないんだろうなぁ。想像もできないけれど。


 ひとつ、注文をつけるとしたら、もっと静かに処理しろってこと。お蔭で何回か目がさめたわ!















 次の投稿は3月4日(水)です!



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