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冷酷王の愛娘  作者: 水無月 撫子
第二章 誕生祭とセルフィジア
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    小話 ある日の話


 ティアが産まれる前のお話です。


 



「ライトは優しいね。」

「……お前、頭がおかしくなったか?」


美しいけれど、どこか冷たさを持つ青年に、まるで陽だまりのような美しい少女が寄り添っている。


「酷いですわ。わたくしは、思ったことをそのままお伝えしているだけですのよ?」

「……」


少女は本棚からおもむろに古そうな本を手に取ると椅子に腰掛け、優雅に読書をはじめた。


「……シェリー、お前この間、側妃から冷水をかけられたと聞いたが。」

「嫌ですわ、陛下。わたくし、案外こういうの嫌いじゃないのですよ?逆に楽しんでおりますわ。」


少女は明るい笑みを浮かべると再び本に視線を下げた。

部屋にノックが響くとサラサラとした空色の髪の男性が入ってきた。


「フィアルトア公、まだ入室の許可は出していないのだが…」


ピクピクとはねる眉からは青年の怒りが感じられる。


だが、そんな攻撃にもまけず、フィアルトア公と呼ばれた壮年の男性は話をはじめた。


「はっ。若造がいきりおって、2歳年下のお妃様の方がよっぽど大人らしいわ!はぁ、お妃様もこのガキみたいな子供が相手などと、おかわいそうに。」

「ふふふ、まぁまぁ、フィアルトア公。陛下は国王としては、新米なのです。公方のお力添えがあってこそ、陛下も要らぬ心配もなく執務をこなされているのですわ。ねぇ?陛下。」

「そんな事は……。」


苦々しい顔になる青年に対し、少女と男性は明るく微笑む。


「ふふ、陛下、お庭に行きませんか?」

「だが……」


チラリと目を向けたのは、壮年の男性…ではなく、少女の膨らんだ腹だった。


「平気ですわ。わたくしそんなに弱くはありません。フィアルトア宰相もよろしいわよね?」

「もちろんでございます。お妃様。ほら、行きなさい、陛下。」

「…………分かった。」


青年は諦めたように息を吐き、少女に手を伸ばし、庭へ向かった。


「腹の調子はどうだ?」

「ねぇ、その聞き方はどうかと思うわ。」


少女の膨らんだ腹をチラリとみる。

少女はそんな青年の様子に眉を下げた。


「ライト、ありがとうございます。」

「何がだ?」

「赤ん坊を産む許可をくれて。」

「お前は一応、一国の公女だろう。」


「ライト、知っていますわ。あなたが懐妊した側妃を殺していたこと。」


その瞬間、青年の肩がびくりとはねた。


「違うわ。ライトを責めたわけじゃない。あれは仕方のない事だった。だからこそライトがわたくしにこの子を授け産ませてくれることが嬉しいの。」

「すまない。」


青年は怯えるように少女の手を握りしめた。

少女は青年を抱きしめこういった



『ライトは、優しいね。』



************************************



「陛下?どうされたのですか?」

「あ?あぁ、いや。何でもない。」

「そうですか、それなら良かった。ところでグロッター辺境伯の領地ですが、後任は、いかがなさいますか?」

「それなら、ティア、お前がやれ。」

「は!?」


陛下と呼ばれている大人になった青年は、自分と同じ色を持つ愛らしい彼女に笑いかけた。


「陛下、そんな良い笑顔されても……」

「お前はグロッター辺境伯爵の領民とは仲が良いではないか。見知ったお前の方が、領民も心置きなくいままで通りに暮らせるだろう。」


彼女は一瞬ポカンとしたが、はっと我にかえると、ニコッと笑った。


「ホント、『お父様は(ライトは)、優しいね。』」

「………」

「??なあに?その顔、そんなに優しいって言われたことないのですか?」


大人になった青年は思いだした。

青年が唯一愛した少女のことを。

一時は少女が死ぬ原因を作った彼女を酷く憎んだ。

その小さな首に手をかけたとき、笑った彼女に少女の面影を感じ、殺すことができなかった。


そして、少女の最後の言葉に涙をながした。




 青年はふっとひとつ笑い愛おしい娘である彼女を抱き上げたのだった。







 これにて、第二章終了でございます。


 ここまで、お読みくださった読者の皆様に感謝です!!!


 第三章も、皆様に楽しんでいただけるように精一杯書かせていただきます!


 どうぞ、よろしくお願いいたします( ;∀;)


              水無月 撫子



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