17話 理想の王子様とダンス
とりあえず馬鹿二人は別室に移動……というか捕縛、連行。
あれだけ静まり返っていた会場は何事もなかったように騒がしくなっていた。
ふっ、とベルのほうを見るとニコニコしたベルの顔があった。
なんだろうと思っていると、スッと私の目の前に跪いたベルは……
「愛らしいティア、私と踊っていただけませんか?」
と言ったのだ。
えぇ、私としてはベルがかっこよすぎて死にそうデス。
「よ、よろこんで!」
手を合わせ、向かったのはダンスホールど真ん中!!
まぁ、仕方ない。
わたしは今日の主役だから……
『ティアはダンスまで上手なんだね』
『そんなことないわ。普通よ普通。』
お互い微笑みながらこっそり会話する。
喋りながらのダンスは結構な技術力を要するため、ベルも得意なんだろう。
『くくっ』
『どうしたの?』
『いや、周りは完全に私を君の婚約者候補だと勘違いしているようだ。』
『まぁ、どうして?』
『よぉーく、耳を澄ませたらどうかな?』
『あら、嫌よ。面倒だわ。』
「まぁ、美しいわね!!」
「本当に!あそこだけ絵画のようだ!」
「ねぇ、ご覧になって。なにやら楽しそうにお話しなさっておられるわよ!」
「なんと仲睦まじいのでしょう!」
「やはり、殿下はセルフィジアの王太子と婚約するのだろうか。」
「あら、フィアルトア公爵家のご長男ではありませんか?」
「いやいや、クロイツ公爵家のご長男、という線もあり得る。」
「それなら、マステルノ公爵家のご長男、という可能性も……」
やはり、聞かなければ良かった……。
この社交界とは、本人の知らぬところで勝手に話は膨らむものなのだ。
『いやぁ、リゼアイリアの王太子も大変だね。』
『ホントに。お父様はあの通り脳筋だから、私の御代では、国の制度を改革せねばならないわ。』
『陛下は優秀な方だとお聞きしたが……』
『といっても、お父様はすぐに領地を拡げるから、手がまわらないのよ。』
はぁ、と重くため息をついてしまうが、ベルは一向に笑うだけだった。
一曲踊り終わるとベルは疲れただろうと言って、テラスへと連れ出してくれた。
「ねぇ、ティアは女王になったらしたいことはある?」
ふいにベルに聞かれたそれは日々私が深く考えることであった。
「そうね……一番は、この国を戦の無い、平和で安全な国にする事、かしら。」
ベルは虚をつかれたように呆けていた。
「おかしいでしょう?この時代に平和な世など……」
私には前世の記憶があった。
その前も、その前の前も……
いくつもの経験の中で、毎回私が望んだものは、小さな小さな平和だった。
「私は、リゼアイリアの民のためならどんなことだってするわ。それが例え私がすべきではないことだとしても。」
力を込めてそう言える。
それはまだ私が幼い頃に覚悟を決め、決心したからだ。
そうして覚悟を決めることが出来たのも彼のおかげ。
守るべきものを、愛すべきものを私は決して手放さないと決めた。
「目の前の人間を救えなくて、民は救えない。そう、覚悟を決めたわ。数年後、私はこの国の皆の母となる。……その時、シュベルツィ王太子、あなたがどこまでやって見せてくれるのか、期待しています。」
真剣な目で私を見る彼は、最初にあった頃とはまた違った強さを放っていた。
決心したような力強い瞳だった。
「あなた様の頭上にこの大陸一の王冠が輝くとき、隣国セルフィジアの王として、あなたの信念を叶えるため手助けして見せよう。見ていてくれ、必ず、あなたの力となる国を創ろう。」
理由が不純だ、バカたれ。
「ふぅー、まぁ、いいでしょう。……セルフィジアの王となるものよ、そなたに女神の祝福があらんことを。」
フワリと舞った私の髪は淡く金色に輝いていた。
目を疑うベルを放置し、その額に軽く手を伸ばす。
きらきらと舞う金の粒は私の手を伝い、ベルのまわりを取り巻く。
そして、ベルの手のひらには小さな淡い黄色の薔薇が刻まれていた。
ベル,イケメン!!
実は,自国でも民に寄り添う良い王子様です!
奔放な父王に振り回されていつも執務を押し付けられています……。
女性は基本苦手で,気の弱い女性は特に嫌いです。
ベルのお母さんは気が強い人です。勝手に旦那から辺境に逃され,ご立腹。
いつも文句を言いながらも,旦那……国王とは仲良し夫婦です。




