10話 はじめまして
パアァァァ
部屋全体に明るい光が輝いた。
「あぁ、良かった。当ってたわ。」
「……だれ…だ。」
ゲホゲホ、と随分とキツそうにしている。
その目はかたく瞑られており、私の気配だけを捉えているようだった。
そのベッドのすぐ脇に立つ。
「……このままじゃ、会話もできないわ。」
その痩せ細ったミイラのような手にそっと触れる。
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『ティア!!』
「こんにちは。まさか、こんなところにいるとは思わなかったわ。誰に力を貸しているの?」
『む~。ま、いっか!あのねぇ、パルマっていう女だよぉ。』
「パルマ……セルフィジアの第三側妃か。ってことは、第二王子の母親ね。」
『う~ん、そうだっけ?』
「…それより、あなたがいるってことは、第三側妃は闇魔法を行使している、ということよね。」
そう。彼は闇の精霊。
よく、私の周りを飛び回っていたから覚えている。
『ははっ!あの女、適性がないくせに僕を使役しようとしてたんだよ?馬鹿みたい!』
きゃはは!と無邪気に笑う闇の精霊。
「使役者の適性がないのに、あなたは手を?」
『そうだよぉ。だって、面白そうだったから!』
この子たちは精霊だ。無邪気で好奇心旺盛。
面白いことを全力で楽しむ子たちだ。
だけど、その無邪気さは時に悪魔よりも恐ろしい、と私は思う。
『う~ん、でもティアがやめろって言うならやめるぅ~。だってティアがやめろって言うことはだいたい面白くないしぃ~、言うこと聞かなかったら僕、闇の精霊王に怒られちゃう!』
「じゃあ、魔法を解いてくれる?」
『うん!!』
満面の笑みでコクッと頷いた彼はふわりとどこかに飛び去った。
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さぁ、ここからですね。
「『彼の身にかかりし邪よ。我が力をもって、祓いたまえ、クリーン』」
淡い金色の光がベッドの上の人物を包んでいく。
みるみるうちに彼の体は正常な状態を取り戻していく。
そう、まるで枯れた花が元のみずみずしい満開の花に戻るよう。
ゆっくりと開いた瞳が私を見つめる。
「はじめまして、セルフィジア王国王太子。わたくしは、リゼアイリア王国王太子のルピアナティアよ。」
瞳がさらに大きく開かれる。
確かに驚くかな、だって、一応は一国の王太子ですし、普通なら国外にそう簡単に出たりしませんよ?
「リゼアイリア王国の王太子殿下……。あの、有名な姫が何故私のところに?」
なんです?有名な姫って、また変な噂たってるんですか!?
「有名かどうかは分かりかねますが、正真正銘、ルピアナティア・ロゼリア・ロズマリンですわ。わたくしがここにいる理由はあなたの異母弟たちのせいですわ。」
そうなんです!
ほんと、あいつらのせいでここまで…って、それは、まぁ今はいいですね。
「我が異母弟ですか……。」
思いっきり顔しかめてますよ?
「あ!申し訳ない。お知りの通り私はセルフィジア王国の王太子、シュベルツィ・フィルエ。御目にかかれて光栄です。」
「ご丁寧にどうもありがとう。さすが王太子ね、というか、さすが第一王子といった方が良いかしら?」
「どちらでも、お好きなように。」
うん、こうでなくちゃ。
彼は立場的には私と同等か少し下くらい。
本当なら砕けた挨拶でも許されたはずなのに、わざわざベッドから床におり、膝をついてまで丁寧に挨拶をした。
自分の立場をわきまえ、他国の王族を尊重する態度、その中にも自身が国の代表であることを理解した上の慎重な発言、これこそが王者の風格である。
「シュベルツィ王太子殿下、わたくしと手を組みませんこと?」




