3話 騎士様
数日後、思っていた通り私を殺そうとしたあの側妃は処刑された。
王女を殺害しようとした罪で公開処刑されたため、国民からの怒りもぶつけられた。
こう言ってはなんだが、私は結構国民受けがいいのだ。
よって、処刑された元側妃はそれはもうひどい目にあった。
ちなみに、話は変わるが彼女の祖国は一夜にして跡形もなく消え去った。
今では、私の母の祖国が治める荒れ果てた領地だ。ただ、そこの住人たちは何故か清々しい顔つきをしているのだとか……。
まぁ、どちらにしろ私には関係はない。
ところで、今日は騎士団に来ている。
「アルバート騎士団長」
スッと立ち、できるだけ凛とした声を心がける。
「は。我らが主。ルピアナティア・ロゼリア・ロズマリン第一王女殿下」
スパコーーーン!!!!!
(爽やかに)
「団長ぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「お、王女様ぁぁぁ!?!?」
「ヤバイだろ、下手したら死んでるぞ!?!?」
「だ、団長ぉぉぉぉぉぉ!!!」
えぇ、えぇ、良い音がしましたとも。
私のハリセンに弾かれた騎士団長、アルバート・クロイツはズザズザズザッッと後方へ綺麗にふっ飛んで行った。
「アル、今すぐわたくしの前へ来なさい」
「はっ!!」
それはもう、目にもとまらぬ速さで私の前へ戻ってきたアルは、何事もなかったように綺麗な騎士の礼をとりました。
「「「んな、バカな!!」」」
「あの人、やっぱり化け物だ……」
「やっぱりクロイツの人間だ」
「いや、アレを人間とは言わないだろ」
「先程のはわたくしからのちょっとした折檻の一部ですわ。わたくしを裏切った罪はおもくってよ」
周りの騎士たちの表情など気にせず、ほほほ、と笑う。
「はっ!」
律儀に挨拶するアル。
周りの騎士たちは呆然としている。
そろそろ、飽きた……。
スイ…。
私は目隠しの結界を張り誰からも見えないようにした。
「……ま、それは、建前として…。助けてくれてありがとう。アル。もう、戻して良いわよ」
「それじゃあ、お言葉に甘えて。
………ねぇ、痛いから!!マジで痛いから!!ティア様のハリセン!!どうして伝説の『薔薇乙女の指輪』、ハリセンに変形させるの!!??」
涙目で頭を抑えて抗議してくるアル。
知ったこっちゃねぇーよ、馬鹿犬が。
「あら、痛いから良いんじゃない」
「いやいやいやいや。いい加減死ぬ!いや、確実に死ぬ!!」
「ダイジョウブヨー…………………タブン」
「おい!片言!しかも、たぶんてなに!?!?」
あぁ!?うっさいわねぇ!
チクリ魔の馬鹿犬を折檻しに来たって忘れてないでしょうね?
「はぁ……。ともかく、ティア様。体は大丈夫なのか?」
「ええ、大丈夫よ。私がそんなに簡単に死ぬわけないでしょう?」
「厳密には『死ねない』だろ?」
「あなたはまた!人の気にしているところをグサグサと!!」
まぁ、確かに私は『死なない』のではなく、『死ねない』なのだよ。
私が賜った『神の寵愛』とかいうクソめんどいスキルがあるからねぇ。
まぁ、そのお陰でそう簡単には死なないしヤバい事態にはならない。
先程言っていた『薔薇乙女の指輪』というのは『ロゼリア』の名を持つ者の中で、更に選ばれた者だけが持てる特別な指輪。
持ち主の意思で姿形さらには能力をも変えるチートアイテム。
主によく使うのはハリセン……。
「俺が、しっかりとティア様の近くに居なかったばっかりに……」
苦々しく顔を歪めるアル。
全く、気にする必要は皆無なのに…。
「気にしてないわ。そもそも、それはあなたの仕事ではなくってよ。なにをイジイジと……『武のクロイツ』がなんて情けない」
「!?それは…」
騎士団長を務めるアルはテルと同じく公爵家の人間。
リゼアイリアに公爵家は三つしかなく、その三つの公爵家にはそれぞれ役目がある。
テルのフィアルトア公爵家は
『法のフィアルトア』と呼ばれ、主に国内の権力など様々な場面でバランスをとる役目だ。宰相はフィアルトア出身の者が多い。
アルのクロイツ公爵家は
『武のクロイツ』と呼ばれ、その剣の強さと優れた技術力によって常に国の平穏を守る役目だ。騎士団長はクロイツ出身の者が多い。
それから、これから会いに行く予定のフィルのマステルノ公爵家。
『知のマステルノ』と呼ばれ、豊富な知識とその魔力の高さで常に国の前進を手助けする役目。魔法師団長はこのマステルノ出身の者が多い。
まぁ、必ず公爵家から出ているわけではないが、正直なところ公爵家の人間はその分野に人外並みの能力があり、誰も敵わないのだ。
リゼアイリアは、ほとんどの官職に関して、実力重視の国であることから優秀なものをどんどん引き入れる制度もある。しかし、歴史の観点からやはり、トップはこの三大公爵家から出すのだ。
っと、話がそれたな。
「次は、フィルのところへいくわよ」
「お供いたします」
「当たり前よ!」
もともと、あなたたち二人の折檻だって忘れていない?