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冷酷王の愛娘  作者: 水無月 撫子
第一章 薔薇姫とリゼアイリア
19/76

    19話 赤薔薇の戦乙女





「あら、来たわね。」


 私は僅かに笑みをこぼした。


「ティ、ティア様、本当に先陣をきられるのですか?」


 私に若い騎士がそう尋ねてきた。


 彼は、本当に心配しているのだろう。


 だが、このように心配しているのは彼のような若い騎士たちだけだった。



 ***


 今まで戦場で生き抜いてきた、熟練の騎士たちはすぐに分かった。


 精巧な薔薇の細工のはいった、キラキラと輝く銀色の鎧。


 だが、よくよく見れば、至るところに傷が入っており、所々色が変わっている。


 これは、ティアが何度もこの鎧を身に付け、戦い抜いてきた証である。


 彼女の天使のような容姿にこの鎧を着せても浮かないのは彼女が何度も身に付け、しっかりとその体に鎧が馴染んでいるからだ。


 彼女の手には長く太い大剣それに額をあて何かを呟いた。


 彼女の使う愛剣は、10歳の女の子が、それも王女様が軽々と持ち、振り回せるような代物ではない。


 ***


 ハルベンの軍が私たちの視界に入って数秒。


 ハルベンの軍は半壊。


 後陣の兵たちは、怯え切っている。


 私はふと愛馬を見下ろした。


「あぁ、ごめんね。汚いよね。帰ったら綺麗にしようね。」


 と、声をかけた。


 我が賢い愛馬は、心得ているとばかりにたてがみを揺らした。


 愛馬の白く美しい毛は、私の切りつけた敵の血で赤黒く汚れていた。



 遠くでアルがドンドン進んで行っているのが分かる。


 人が空を舞ってるからね。


 アルがいくとそのばか力で人が吹っ飛ぶ。


 ご愁傷さま。


「さぁ、私たちもやるわよ。」



 私はそのまま進み続けた。


 ほどなくして、ハルベンの将がいるところまでたどり着いた。



 ガタガタと震える国王。


「偉いじゃない。国王自ら、陣地に出向くなんて。感心だわぁ!」


 ドスッ!


 私は彼の首もとの椅子の背もたれに剣を突き刺した。


「で?我が国を狙ったのはしくじったわね。……アル、遅かったじゃない。」


 後ろの方からアルの雄叫びが聞こえていたのでなんとなく分かっていた。


「いや、ティア様が速すぎるんだよ!?戦場でこのスピードで敵将の首をとるなんてティア様しか、できないから!!」


「あら、関係無いわ?」


 私はいつまでも震えているハルベンの国王にニッコリと微笑みかける。


「……お、お前は誰だ!!このように強い女騎士がいるなんて聞いてないぞ!?」


「そりゃ言ってないもの。」

「それに、この人、騎士じゃないぞ。この人はうちの王女で王太子だ。」


 本当に、我が国の人たちは敬語というものが使えないのかしら?


 ねぇ、そうよね!えぇ、きっとそうだわ!!


「あぁ、名乗り遅れました、わたくし、リゼアイリア王国王太子兼第一王女ルピアナティア・ロゼリア・ロズマリンですわ。どうぞお見知りおきを。」

「う……そ、そんな……バ…カ……な。」

「もう、殺すんだから知ってても意味なくない?」


 確かに。


 ま、いっか。


「それじゃあ、お疲れ。うちの国に手を出した結果だよ?」



 ズブシュ!!!!



 溢れ出る鮮血。


 ピシャリと私の顔にも生暖かい血がかかった。



「チッ!…汚いなぁ、全く。」


 グシッ。


 私は手で顔を拭った。


「あ、やっぱり、公爵たちの言うことは正しいですね。」


「あ!しまった!!うわーん、やっちゃったよぉ~!!」



 敵の将が倒れ、ハルベンの全軍が壊滅するまでなんとものの数分。


 リゼアイリア軍恐ろしい!!


「いや、ほとんどあんたでしょう。」

「あ?何かいった?」

「ドスが聞いてる!!天使!我らが天使はいずこにぃ~!!」

「うるさい、黙れ。天使と赤薔薇は同一人物だ。」


 いやぁ、剣を持つと最終的に口調がこうなるからなぁ。




「敵将の首はとった!リゼアイリア軍の勝利だ!!!」


 高らかに私がそう宣言する。


「「うぉーーーーー!!!!!」」


 あぁ、これだから、男って。


 まぁ、でも嬉しいのは分かるよ!!


「さぁ、戻ろう、アル。」





『……全く、ティア様はどこまで強くなるんです?俺に守らせてくださいよ。……』





「うん?なんだって?みんなの叫び声で全然聞こえない!!」


 私だってこんなに声を張って喋ってるのに、ちょっと口開いただけじゃ聞こえんでしょ!!



「いいえ!なんでも!!さっさと帰りますよ!!」

「うん!!」






 ティアちゃん、大暴れの回でした。

 (´; ω ;`)

 次回、ついにハルベン編最終回です!



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