16話 策士
そう、あくまでも『らしい』という『噂』に過ぎない。でも、確実に全貴族に伝わるようにする。
「一週間後、王家主催の夜会があるでしょう?それを利用するわ。」
王家主催の夜会。
それは、社交シーズンである今、ほとんどの貴族が揃う場。
きらびやかな衣装に身を包み、自分の領地の売り込みや情報交換をしたりする。
そして、その中には噂話、と言うのも多く上がる。
「わたくしがそれとなくこう言えば良いのよ。『今度、中々会えない恩師と共にお茶をしたいと思っておりますの。』とね。貴族ならわたくしの恩師と言えば南の剣聖、ウルセウス・グロッター辺境伯だとすぐに分かるわ。」
ウルセウス伯は相当な頑固オヤジだ。
弟子の私にたいしてもあんまり優しくはないのですよ!?ひどくないですか?
「そんな風に言えば、噂好きの貴族たちならばすぐに広めてくれるわ。何せあの引きこもりのグロッター辺境伯が領地から出てくるんですから。」
隣でアルが『引きこもりではないけどなぁ』と、ボソリと言ったため足をそれとなく踏んづけておいた。
「痛っ!!……そ、それはそうと、裏切り者はどうやって炙り出すんですか?」
痛みに耐えながら話すアル。
内心思いっきり笑ってしまったのは内緒だ。
「あら、そんなの簡単よ。ハルベンに宛てた手紙の中から情報制限魔法に引っ掛かった物の送り主を全員ひっとらえれば良いのよ!!」
当然!!
あったり前よ~!私からしたら情報制限魔法なんて朝飯前だわ!
「テ、ティア様……まさか国境全体に張るつもりですか?」
「当たり前じゃない、フィル。リゼアイリア王国の国境全域に情報制限魔法のバリアを張るわ。じゃなきゃどっからもれるか分からないからね。」
情報制限魔法
術者の指定したワードに引っ掛かった場合その情報を発信した人物を突き止め、リストアップすることが可能。
文面から脳内の記憶まで探ることができる。
超高位魔法。現在使えるのは私とフィルのみ。
今回の場合、国境に魔法を張る。
すると、国境の外、要するに国外に情報を渡している形跡を見つけ、そういうことをしているアホをひっとらえようと言うことだ。
「もし、ハンベルの国王と取り引きをしているなら確実に手紙や人を送るはず、それらすべてを閲覧し、検査する。それこそ、記憶までもね。」
あぁ、そうだ、今回の計画を実行するに当たって、ウルセウス伯たちにも協力をしてもらう。
「ウルセウス伯と奥方様には、都へ向かう振りをしてもらうわ。わたくしとアル、第一騎士隊は一週間後の夜会の翌日行商として、扮装し領地へ向かうわ。いいわね?」
「もちろん。」
父は変わらず無表情。
「……それは、ティアが行く必要があるのか。」
何だか、納得がいかない見たいですよ。
不機嫌です。
「わたくしの計画ですわ。わたくしが参戦せずにどうしろと?」
「うむ…。」
父は渋々といったように頷く。
ま、これでひと安心。
「あちらがいつ攻めてくるか分かりませんが、第一騎士隊は強い、確実に勝利を納められるわ。」
晴れやかにそういうと『それなら大丈夫だな』と、皆、笑う。
「さすがは赤薔薇だ。これだけの知略ができるのならば、軍師にでもしたいくらいだな!」
と、クロイツ公爵。
てか、あんたいつの間に入ってきた。
「いやいや、赤薔薇はやはり魔術師になるべきだよ!」
あぁ、あんたか。マステルノ公爵。
気配を消して入ってきたな。
「あぁ、だが、赤薔薇は知識豊富だ。愛国心もある。やはり、国王にすべきだな。」
と、フィアルトア前公爵。
ご隠老がなんの用だ。
「もう!赤薔薇はお止めくださいとあれほど言いましたわ!!わたくしの色は淡い黄色ですわ!!」
「「「関係無い、関係無い」」」
おい!!
そこは、変えろよ!
「だって、血塗れの薔薇を淡い黄色とは言わんだろ。」
そりゃそうだ!
似ても似つかんわ!
「って!だから、わたくしは血塗れなんかでは、ありませんわ!!」
「「「えぇ!?」」」
本気で引くな!!
「あんだけ、手慣らしにといってイシュバルツの森へ行っては、返り血で血塗れになっておったのをお忘れか!?」
「ウグッ…」
「アルに止められるまで切り続けていたのをお忘れか!?」
「ゲフッ……」
「幼き頃、返り血を払い舌打ちをしながら『汚いな…』と呟いておられたのをお忘れか!?」
「ゲホッゲホッゲホッ!!……あなたたち、それ以上わたくしの黒歴史をばらまかないで!!」
イシュバルツの森とは魔物が多いことで有名な森。
確かに、切りまくってた。
教育係になりたてのアルを連れ、訓練だけでは飽きたらず森へと勇んで行ったことは事実。
返り血を払うとき舌打ちをしながら暴言はいたのは覚えてない。
「……。(ジトー)」
ハッ!?父よ!
父が居たわ!!
ど、どうしよう。
イシュバルツの森へ行ってたのは父には秘密だったのに!!
「……。(ジトー)」
「うっ…。」
「……。(ジトー)」
「申し訳、ございませんでした……。」
父からは呆れ顔でフッと笑われた。




