14話 騎士と影
すっかり目が覚めてしまった私は、リカルドに紅茶を淹れてもらった。
すっきりとした香りのするそれを一口飲み、息を吐く。
「それで?二人にはお祖父様たちの所へいってもらったけれども、お祖父様たちは何と?」
この二人にはお祖父様たちの所で任務にあたってもらっていた。
祖父…ファンベルツィア王国の国王は愛娘の娘である私のことをとても可愛がってくれている。
髪や目の色こそ父似だが、容姿は母にそっくりだと言う。
祖父も私に色々と協力してくれて、リカルドとセルエドには今回とは別の件でファンベルツィア王国で祖父の下、調査をお願いしていた。
紅茶を飲みながらゆっくりしていると、私の目の前に天井からスッと男が現れた。
「ティア様!ただいま!」
黒い瞳を爛々と輝かせ無邪気に笑う美青年。
「おかえりなさい。イシュア。」
彼はイシュア・ディルコート。
ディルコート伯爵家の三男だ。
無邪気で明るく、軽いのが印象的な彼、キラキラと光る紫色の髪に、好奇心に満ちた黒の瞳。カッコいいけど…。
「いやぁ~、今回は疲れたよ~。香水くせぇばばぁの相手したんだから、気分もわりぃよ。」
と、言ってガハガハと笑う。
……口を開かなければかっこいい美青年です。
「ま、そんなことはほっといて、やっとつかめたぜ?あの嬢ちゃんの秘密!」
彼は私の影。
とても優秀で影のみんなを束ねる頭である。
「あれ!?そう言えば、リカルドとセルエド、帰ってたんだな!」
唐突にイシュアがリカルドとセルエドに話しかける。
「あぁ、お前は相変わらずうるせぇな。」
「そうですよ。ティア様の御前です。黙りなさい。てか、慎みなさい。」
イシュアに食ってかかるリカルドとセルエド。
彼らは…というか、薔薇騎士と影はあまり仲が良くない。
ひとたび会えば、どちらが主との絆が強く、信頼されているかを競い会うことをやる。
まったく……あとから山のような苦情の処理をするこっちの身にもなってほしい。
「ふぅ……。それで?彼女からは一体何が出てきたの?」
「ん?あぁ…。ティア様の思った通りだったよ。あの女はハンベルのスパイだった。」
私としては予想通りだったが、その辺をよくは知らないセルエドとリカルドはピクリと眉を動かし、気配をコロリと変えた。
「ティア様。」
すごく楽しそうに私を呼ぶイシュア。
きっと指示が欲しいんだろう。
「そういえば、南の辺境伯はウルセウス・グロッター伯だったわね。」
私はにこりと微笑み、それとなく喋る。
「グロッター辺境伯と言えば社交シーズンでも領地を離れないことで有名ですねぇ。」
「確か、グロッター伯はティア様の剣術の師匠であらせられたことがあるとか。」
「奥方のエリゼリーシャ・グロッター辺境伯夫人は武のクロイツの親戚でしたよね。髪が赤紫でしたから。」
「わたくし、久しぶりにウルセウス伯とエリゼリーシャ様と一緒にお茶がしたいわ。」
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
この『冷酷王と愛娘』は各章、20話構成としております。
小話もはさみつつ、書いていけたらいいなぁという感じです。
最後まで面白い作品を!と思っておりますのでどうぞ、よろしくお願い致します!!
水無月 撫子




