12話 襲撃
報告会が終わり、自分の部屋へ戻った私は、ソファーの上でくつろいでいた。
「姫様、だらしないですよ~。」
空になったカップに、紅茶を入れてくれているミオナが、優しく注意をしてきた。
「ミオナ、これはしょうがないことなのよ。だって、書類仕事が苦手なお父様の代わりに執務をやってあげているのだから、少しくらいだらけながらやったって、バチはあたらないはずでしょう?」
ソファーの上に仰向けに寝ながら、書類を見ている私の姿は確かにだらしない。
とも思うが、そこはちょっと目を瞑っていただきたいものだ。
「もぉ、仕方ないですね。でも、ここだけですからね~。」
ぷっくりと頬を膨らませて、許してくれるミオナ。
ほんと、優しい!!
「ありがとう、ミオナ。今日はもう、遅いから、上がっていいわよ。」
「ありがとうございます。それでは、姫様、おやすみなさいませ。」
「えぇ、おやすみなさい。」
優雅に礼をして、部屋から出ていくミオナを見送り、私はゆっくりと起き上がった。
「うぅーん、ここの予算、削れないかしら。」
作物の実りが悪い北の辺境に予算を回したいのだが、中々、その予算を組むのが難しい。
一度、私の王太子としての予算を削ればいいと言ったがそれは即刻拒否された。
「はぁ。……今夜は満月ね。」
ため息をつくと同時に、ふと、空を見上げた。
このメインルームは、庭に繋がっており、部屋の庭側は一面ガラス張りになっている。
「庭に出ようかしら。」
何となく、そう感じて、愛剣を手に取り、庭へ出た。
「んん~。涼しい!」
外は涼しい風がそよそよ吹いておりなんとも心地いい気温だった。
私が満月を見たその時……。
ヒュゥ!!
「!!」
ガキンッッッ!!
空から、黒づくめの身軽な男たちが斬りかかってきた。
咄嗟に愛剣で攻撃を防いだが、一体誰だ。
相手の剣をおし、後ろに下がる。
「一体どちら様かしら。この国一強い冷酷王を父に持つこのわたくしに挑んで来るなんてとんだ馬鹿ね。」
「そんな、強気なこと言っても、10歳の王女様に何ができるってんだ。笑わせてくれるぜ!ハッ!」
あぁ、このバカ本当にバカだったか。
私を知らないなんて。
「そう、お望みのようですから、捕らえて差し上げますわ。『ーーーーー。』」
「!?」
きっと、相手からすれば目に見えていなかっただろう。
私は決して鞘を抜かずに男たちの腹を次々についていく。
パタリパタリと倒れていく、仲間たちを見て残りの男たちはあからさまに狼狽える。
そして、最後の一人を倒した後、私は魔法を使い、男たちを拘束した。
「殿下!?!?」
わらわらと、集まってくる騎士たち。
でも、ちょーーっと、遅かったかな?
「あら、気づいてしまいましたのね?うるさかったかしら。」
頬に片手を添えながら首をかしげる。
「い、いえ、恐ろしいほど無音だったのですが…。」
あら、じゃぁ、何故、気づいたのかしら?
「見回りをしてた近衛のやつが、黒い服を着た男たちが飛んでるっていってきたんでな。」
騎士たちの後ろから出てきたのはアルでした。
「あら、そうだったの。」
「ティア様の影はちゃんと王宮内では、白のマント着けてるからな。違うだろうと思って…ていうか、こいつらティア様を襲うとか馬鹿じゃね?」
ま、その通りね。
アルがそう、平然と言い切ると、周りの騎士たちもうんうん、と頷く。
「えっと、なんで、殿下は、大丈夫何ですか?」
「え!?お前、知らないの?…あっ、そっか、お前、他国出身の新人だったな。」
「はい。」
どうやら何人か私をよく知らない人がいるみたいだ。
「おー、じゃぁお前ら、よおーく覚えとけよ~!ティア様にてをだしたら一生の終わりだ。勝てるわけねぇから寝言は寝て言うようにしろよ~。」
適当に言うアルに新人たちはまだよく分かっていないようだ。
「??」
「いや、団長、それじゃ、説明になってませんって。あのな、お前ら、殿下はただのお姫様じゃない。あの国王陛下とこの戦闘狂いのクロイツ団長が相手をしてきた方だからな。」
「おぅ!今じゃ、俺も陛下も勝てねぇよ。」
「「はぁ!?!?」」
あー、たしかにー。
その反応が普通ね。
「それに、お前ら、みたらわかるだろうけど、殿下の持ってる剣。大剣だぞ?あんなデカくて重そうなの普通の姫様が軽々と持てると思うか?」
これに、たいしてブンブンと首をふる新人たち。
まぁねぇ、鍛えてるから。
私の愛剣は、アルの大剣よりも大きく長い、私の身長はゆうに越える。
「おっと!みんなさん、忘れてたけどこの人たち、どうにかしなくてわいけないわ。ちょっと待ってね。」
そう、笑顔で言うとそのまま…
『サンダー』
雷魔法を最小にし、でも、確実に男たちが起きるように電流を流す。
「え、怖い……。」
新人騎士たちがガタブルしている。
他は……うん、当然って顔してるな。
「おはようございます。馬鹿なのろまさんたち。お話し、聞かせてもらえますか?」
私を見た男たちは皆、同様に顔を青ざめさせ、震えている。
「おーい、お前ら、早くしゃべった方が良いぞ。ティア様、イライラしてるからひどい目にあうぞ。」
アルを見た男たちはさらに青ざめ、小さく悲鳴をあげた。
「紅炎の死神!」
「血の戦闘狂!」
男たちの口から漏れ出るその異名。
『紅炎の死神』や『血の戦闘狂』
は、言わずもがな、アルのことだ。
ただ、そんな、アルに勝てるのだから、私の方がよっぽどひどいとおもうが……。
あぁ~、そう言えば、私のこと知ってる三大公爵は、私のことを『赤薔薇の戦乙女』と呼ぶなぁ~。
大分可憐な名前だけど、意味は結構ひどい感じだ。
ま、これは、次の機会にでも…。
「それで?私の騎士に向かって吐いた暴言、どう、責任取ってくださるの?死なないように治癒魔法をかけながら四肢を一つ一つもいでいきましょうか。あぁ、それとも地道に爪から一つ一つ剥いでいく?別に死なせないから焼いたって文句ないわよね?」
男たちだけに聞こえるよう囁く。
震える男たちは顔を真っ白にして何か言おうと口を開いた、その瞬間…。
「「ぎゃぁぁぁ!!!」」
パシュッ!パシュッ!
目の前にいた、男たちが悲鳴をあげながら灰となった。
男たちの灰からは僅かに呪力の気配が感じられた。




