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冷酷王の愛娘  作者: 水無月 撫子
第一章 薔薇姫とリゼアイリア
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第一章 1話 王女殿下



 水無月の新連載始めました!!

 このお話に興味を持っていただき、嬉しいです!!

 最後まで楽しく書いていくことを目標に頑張らせていただきますのでどうぞよろしくお願い致します。







「うぉぉぉーーーー!!!王女様ぁぁ!!!どこですかぁぁ!?ティア様ぁぁぁ!!」



******************************


〜リゼアイリア王国 王都・ロズマリン〜



「おじさん、ありがとう!すごく美味しいよ!!」


 ホックホックのお芋を一口食べて、お芋をくれたおじさんにお礼を言った。


「あぁいいさ、いつも手伝ってくれるお礼だよ!」


 手伝いって言ってもそんなたいしたことはしてない。

 時々、芋の収穫を手伝ったり売り子をしたりしているだけ。


「そんな、大したことしてないよぉ?私」

「いやいや、充分助かったよ!!」


 本当は今日、おじさんの手伝いをする予定はなかったけど、ちょうどおじさんの畑の近くを通りかかったときに、芋をのせた荷車の前輪が水路にはまっていて、困っているのを見つけた。


 それを私が魔法でちょいちょい、っと手伝ってあげたというだけ。



「あ!?ごめん!おじさん、私もう帰らなきゃ。怒られちゃう!」

「そうか、引き留めて悪かったな。また来いよ!仕事頑張るんだぞ、ルピア」

「うん!」



 そう言って、宿屋の娘、ルピアは駆け出した。


 茶色の髪に濃茶の瞳。

 平民にしては可愛い顔のルピア。

 今流行りのエプロンドレスに身を包み、すれちがう人々に声をかけられながら小走りで道を急ぐ。


 その姿はどこからどう見ても平民の娘にしか見えない。


 『私』はそっと小道に入った。


「これはヤバいわね。お芋を食べていたら時間が結構過ぎていたわ。テルが泣いてる気がする………というか叫んでそう」


 誰にも見つからないように目隠しの結界をはり、シュッと指を動かす。


 動かした指先から、きらきらと光る小さな粒子が飛びだし、まるで生きているかのようにクルクルと私の周りを舞う。 

 光の粒子がついたところからシュルシュルとリボンのように魔法が解けていく。

 茶色の髪はプラチナブロンドに、濃茶の瞳は澄んだライトグリーンの色になった。

 顔の形までも先程までとは全く違う。


 この国で、誰もが知ってるあの人をそのまんま写し取ったかのような色合いに、はぁ……とため息をついた。


 平民の宿屋の娘『ルピア』は本来存在しない。


 ………本来の『ルピア』は、まったくの別人であった。


「はぁ………はやく帰んなきゃ」



 タタンと地面をつま先で叩き、音を鳴らすと私の足元で魔法陣が光った。



******************************


〜リゼアイリア王国 ロズマリン王城〜



「テル、ここよ」


 情けなく、グスグス泣いている空色頭に声をかける。


「……!ディアざばぁぁぁ!!」


 泣きながら私めがけて飛んでくる空色頭……こと、テルノード・フィアルトア宰相。


 ベゴッ!

 ゴンッ!


「痛ッッ〜〜〜!!!」


「………テル。あなたも学習しないわね。わたくしに、飛び込んで来るなんて……。いつも同じ目にあっているじゃないの」


 私はあきれまじりに防御壁に見事ぶつかったテルに言った。


 涙がうっすら浮かぶ瞳は綺麗な濃紺色。

 容姿は綺麗なんだけど性格がなぁ……


 リゼアイリアの宰相といえば……


 残酷無慈悲な国王の右腕と呼び声高い


 彼は『氷の宰相』と囁かれるテルノード・フィアルトア。


 若くして『法のフィアルトア』の公爵になった優秀な男だが、同時に必要無いものを素早く切り捨て一寸の互いも許さない冷徹な男でもある。


(そんな彼が本当はこんなに女々しいなんて皆に知れたら……)


 考えるだけでも、悪寒がするわ……


「……それはそうと。テル、わたくしに何か用があったのではなくて?」

「どぉわぁ!そうだったぁ!!」


 額をおさえしゃがみこんでいたテルは勢いよく顔をあげた。

 何やってんだかこいつ……


「もしかして……」

「ぅぅ……。そうなんだよね。ばれちゃったみたい……。はは……」


 ヘラっと笑ってみせるテルに無性に苛立つ。


 笑ってる場合じゃねぇーーしぃ!!!


「テル、わたくしはお父様の執務室へ参ります。早くせねば()()は死ぬわよ?」

「おともいたします。()()()殿()()



******************************


〜ロズマリン王城 国王第一執務室〜



「陛下、ルピアナティアでございます」

「入れ」

「失礼致します」



ぐえっっ!


 輝かしいプラチナブロンドにライトグリーンの瞳。


 マジで光源!目が死ぬ!!


「ルピアナティア・ロゼリア・ロズマリン」

「はい、陛下」


 なんですか、急に改まって……あ、お気づきの方もおいででしょうが、私は、このリゼアイリア王国の第一王女兼王太子、ルピアナティアでございます。

 ちなみに、王子王女は私の他にはおりませんから、とてつもなく厄介なことに私はこの男の唯一の子となるのです。



「父で良い、が……何故、隠した」

「お伝えする必要はない、と判断しましたわ」

「必要ない、か」

「えぇ」


 何故か、深く悩んだように机に指をくみこちらを見ている。



 こんの、見かけイケメンが!!!!!くっそ!!

 リアルに舌打ちする勢いで言ってやりたいほどだ、まったく。


 これ(・・)は、我が父にして、リゼアイリア王国国王陛下、スフェルラート・ロゼイド・ロズマリン。

 リゼアイリア至上最恐の冷酷王と称され諸外国の人々に恐れられている。

 ただ我がリゼアイリア国民たちから言わせれば、彼は前王の悪政から解き放ってくれた『英雄』だそうだ。


 そんな、父が一言……


「まぁ良い、来い」


 不服そうな顔をしながら自分の膝をぽすぽす叩いている。

 どうやらこっちに来て座れということなんだろう……


 えぇ、まぁ、普通の方ならこの人に怯えて、ありえない速度で直ちに動くのでしょうけれども……


 私は屈しない!!!!!


 キッと父の目をまっすぐ睨みつける。


「お父様、わたくしはすでに10歳ですわ!それに犬じゃないんだから、膝をポスポス叩いて呼んでも来ませんわ!!」


 ふんっ!


 言ってやったわ!!


 たまには言わないとこの人、娘をペット扱いするから!!


「そうか、ならば……」


 と、言い、近づいて来る父。


 な、なぬ!!やる気か!?


 ぐっ、と身構えたものの。


フワッ。


「…うむ、軽いな。ちゃんと食べておるのか?」


 ぐぬぬぬ。


 まさか、高い高いされるとは……。


 くっ!なんて屈辱!!



 ちょっ、回すな!なんか酔ってきた!!!


「お、おい。ライト。やめろ。ティア様が酔ってる!!」


「う、うむ……」


 そんな、あわれな子を見るような目で見んなぁぁ!!!


 うぅぅ、一生の恥だわ。



「お、お父様。それで、わたくしの話をして良いでしょうか」

「あぁ、そうだったな。良いぞ」



「はい。では、単刀直入に、お父様。処刑はお止めください」


 父はその言葉に少し驚いたようにしたが、すぐに表情を戻し、淡々とのべた。


「駄目だ。あれは調子に乗りすぎた」


 沸き上がる怒りを押さえるように低い声でそう答えた父を見て


 あぁ、こりゃ駄目だ。


 と、思ってしまったのは、私だけではないと信じたい。





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