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第18話 暗躍者達

ガージフ目線です!

「成る程、つまり明日あいつらは海に行くんだな」


「ええ。私が彼等を尾行した時、そう談笑していましたからねえ」


とある暗い一室の中、二人の男が話し合っていた。

普通ならば何も見えないはずの室内にも関わらず、男達はまるで明るい室内にいるかのように自然体だった。

それは、ただの人間からしても異質さを覚える光景で、この場所にルイジアが居れば、この中にいる存在に、顔を痙攣らせることになっただろう。

だが、秘密裏に行われているこの会話を覗き見るものはいない。


「海に行ってピクニックですと。こんな時期にマリンシルに来たのには理由があると思っていたのですが、何にもなかった様ですねぇ」


そのことを、会話している二人のうち一人である、淫靡な雰囲気を有する男、ガーゼフは確信していた。

ガーゼフには以前、暗躍して貴族サラルスを唆し、聖女ルイジアを追放させ、神獣王国を混乱させた実績がある。

つまり、暗躍者としての実力に関しては、ガーゼフはかなりの実力を持っており、そのガーゼフの有する暗躍者としての勘が、この場には誰もいないと告げていた。


「へえ、結構俺の名前も広まっていると思っていたのに、まだ知らない奴いたのか……少しショックだわ……」


そしてその勘を信じたガーゼフは、本題に入ることを決め、目の前の男に対し、口を開いた。


「大丈夫。今から貴方は比類なき名声を手にすることができるのですから。まあ、私と組んであの聖女達の一行を捕らえられば、の話ですけどもね」


「分かっているさ。あの聖女様御一行を叩きのめして、誘拐すれば良いんだろ?」


ガーゼフの言葉に対し、男はどこか軽薄な様子でそう答える。

自分なら、まるでなんの問題もないと言いたげな様子で。


「ええですが、正面から行くのはおススメしません。あそこには貴方の同類である女、聖女と、幼体とはいえ神獣がいますので」


「……え?」


……だが、次のガーゼフの言葉に対し男は動揺を漏らした。


「し、神獣とか流石の俺も……」


さらには途端に挙動不審になり始め、ガーゼフは小さく溜息を漏らした。

急に怯えを見せた男に対してガーゼフが抱くは隠しきれない呆れ。

やはり人間はこういうものか、とガーゼフは思わず失笑を漏らしそうになる。


だが、存分に利用するためにはこの男の機嫌を損ねるわけにはいかない。


「大丈夫、相手は神獣とはいえ幼体です。そして貴方には、並みの神獣でも抑えられる魔導具を与えている」


そう判断したガーゼフは、優しい口調で男へと語りかけた。


「た、確かに、これがあれば大丈夫なはずだよな……」


そして、そのガーゼフの言葉にそう男は再度自信を抱き始める。

もう一押し、そう判断したガーゼフはさらに優しく男へと語りかけた。


「私が望むのは、主にあの方と聖女達をお見せすること、それだけです。


───つまり、聖女に何をしようが生きてさえいれば、私達は何も気にしない」


「───っ!」


ガーゼフの言葉に、わかりやすく男の雰囲気は変わった。

その姿に、ガーゼフは密かに頬を緩ませた。

本当に、扱いやすいことこの上ないと。


「ま、まあ、俺なら行けると思うし、受けてやるよ。チート持ちである俺に勝てる人間なんていないだろうし!」


男は急激にやる気を出し始める。

これで大丈夫だろう、そう判断したガーゼフはこの場をこっそりと去ろうとする。


「でも、何でお前自ら手を出さない?」


けれども、その前にふと思いついたように、そう男は口を開いた。


「お前は確かに戦闘が苦手らしいが、それでも神獣だろう?」


その質問は最もなものだった。

神獣である私と、人間であるあの聖女との間には、通常であればかなりの実力差がある。


……けれども、私はあの聖女をただの人間だと思ってはいなかった。


頭に張り付いている舞、あれは相当な修練を経て手にしたものだろう。

側にいた、自称聖女の女とは比にならない練度だった。


─── だが、幾ら修練を積もうが、人間にあの変質魔力を霧散させられるわけが無いのだ。


だからこそ、私はあのルイジアという聖女を警戒していた。

神獣の中でも、かなり弱い実力しか有していない自分では敵わない存在の可能性を考慮して。


「いえ、人間の中にも私達神獣が警戒せねばならない存在がいるということですよ。貴方みたいな、ね」


だが、その事実を目の前の男に言うつもりは私には無かった。

何せ、この男はただ利用しようとしているだけなのだ。


あの聖女の実力を図るために。


「ま、まあな!」


……しかし、そのガーゼフの目的を理解することなく、男は私の賞賛を疑おうとはしない。

本当に自分の実力をガーゼフが認めていると思い込み、得意げに笑って自分の腰に挿してある、剣のつかを握る。


「冒険者ギルドの件ではうまくいかなかったが、俺が上手いことことを進めてやるよ。この魔道具があれば、俺は無敵だ」


そう告げ、自信に満ちた笑みを浮かべるその男を見て、ガーゼフは笑う。


「ええ、期待してますよ。


───水神の息子、コータ様」



……愚者は未だ、自分が操られていることに気づかない。

更新遅れてしまい、申し訳ございません……

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