第17話 ピクニック前
店の営業という黒歴史、それは私の後々に残る様々な禍根を残していった。
「気にしないでいいのにー」
「そうですよ!本当に綺麗でしたから!」
「ん。凄く良かった」
ルーアと、ライアとサーラは純粋に目をキラキラさせてそういってくれるので少しづつ言われ慣れいったけども。
「それに、マーサルだってガン見してたからな!」
「………え?」
………しかし、ルーアによる爆弾発言によって、私は言葉を失うことになった。
後ろから聞こえたマーサルの声に、まるで錆びたロボットみたいに振り返った私の目に入ったのは、焦ったような表情を浮かべたマーサルの姿だった。
「い、いや違う!違うわけでは無いが、決して下心があった訳では……」
「ええー?マーサル、ルイジアに目が釘付けだったじゃん!」
「っ!」
マーサルにあの格好を見られていた、その実実に、ルーアとマーサルが何事か言い争っている中、私は羞恥で震えていた。
普通に考えれば、あの時側にいたマーサルにあの格好を見られていない訳が無い。
けれども、改めて思い知ったことで私は羞恥心が抑えることができなくて……
「ま、マーサルのむっつり!」
「えっ!?いや違う、ルイジア誤解……」
……次の瞬間、私はマーサルによく分からない八つ当たりをして走り去っていったのだった。
◇◆◇
「……その、嬢ちゃんすまなかった。妻は性別種族関係なく、可愛いものを見ると飾り受けたくなる性分でな……」
マーサルとの一件の他にも、私はジョセフさんにそう謝られたり、など諸々の出来事があったのだが。
「こ、こんなに良いんですか!?」
「ああ、嬢ちゃんのお陰で繁盛していたようなもんだしな!逆にこれくらい渡さないとばちが当たっちまう」
最終的に、私は1日の働きの対価としては、破格の給金を貰うことになった。
万札の束を手にし、震える私に対してジョセフさんはそう笑ってみせる。
その顔には心から嬉しそうな表情が浮かんでいて、私はジョセフさんが心からそう思っていることを理解する。
そのことに私は思わず照れ笑いを浮かべる。
「まあ、そういうことだ。そういえば、何で嬢ちゃんはマリンシルの通貨を集めようとしていたんだ?」
そんな私に対し、優しげな表情を浮かべた後、ふと思い出したようにジョセフさんはそう告げた。
「あっ……」
そのジョセフさんの言葉に、未だ何故マリンシルの通貨を稼ごうとしていたか、それを教えていなかったことに気づいて、私は思わず声を上げる。
そして、私はそのことを忘れていたことに対して恥ずかしさを抱きながら口を開いた。
「実は、マリンシルの海でピクニックをして夕日を見たいな、て思っていたんです。約束していたので」
その言葉を告げた私の頭に浮かんできたのは、もう戻ることのない大切な存在との記憶だった。
時は戻らず、失ったものもまた戻ることはない。
だから、せめてその大切な存在が実在した証に私はしがみつこうとするのだ。
「……マリンシルの海に夕日が沈むあの光景は綺麗だからな」
その私の表情を見て、ジョセフさんはただそれだけを告げた。
私に対して心配そうな、そんな目を向けながら。
しかしそれは一瞬のことだった。
「俺がいつも宿屋の食材を仕入れている店がある。そこで食材を買ってきたら、俺がオリジナルの料理を作ってやる。その近くに、シートに使うことのできる用品を売っている店があると思うから、散財してこい!」
次の瞬間、ジョセフさんは敢えて明るい声をあげ、そう私に告げた。
そのジョセフさんの態度に私は思わず笑みを浮かべて頷いた。
「はい、ありがとうございます!今からルーア達と一緒に出かけてきます!」
◇◆◇
それから私とちびっこ達とマーサルとサラルは、明日のピクニックの準備をするために出かけた。
ジョセフさんの言っていた食材屋さんの店の近くには、マリンシルのお土産屋さんなどもあり、昨日宿屋に引きこもっていたちびっこ達は大はしゃぎだった。
………ちびっこ達のはしゃぎ具合に比例するように、マーサルの顔色は悪くなっていたけれども。
私はマジックバッグで荷物が嵩張ることがないのと、昨日の給金がかなりのものであったこともあり、ちびっこ達に請われるまま、色々なものを買った。
「にゃう!」
他にも、サラルが目を光らせて手羽先を要求したり、マーサルが力尽きて途中で休んでいた椅子の上で寝ていて、ちびっこ達にいたずらされたりと、様々なことがあって。
最終的に昨日稼いだお金は殆ど無くなってしまったけど、私達は非常に楽しい時間を過ごしたのだった……
……でも、その時私達は気づいていなかった。
楽しく買い物をする私達、それを監視するような影があったことを。
更新遅れてしまい、申し訳ありません……