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第12話 ギルドの奥

受付嬢、サラ目線です。

「まさかギルドで大金貨をポンと出すほどマリンシルの情勢に疎いとは……」


マリンシル冒険者ギルド受付嬢サラは、歩きながらそう呆れたように言葉をもらした。

それはルイジアから手渡された大金貨を手に冒険者ギルドの奥に向かう途中の言葉だった。

本来ならばこんなギルドの廊下で、そんな言葉をサラは言うべきではないのだが、けれども彼女の周囲には殆ど人影は無かった。

他のギルドの廊下には複数のギルド職員がいるにも関わらずに。


……そう、現在マリンシルの冒険者ギルドはもう通常の冒険者ギルドとして機能を殆ど失っていた。


何せこの冒険者ギルドにいるのはマリンシルの独裁者である水神の息子の傭兵たちだけなのだから。

彼らは一切民衆からの依頼を受けない上に自身の権限を乱用し、民衆達から略奪さえしている。

そしてそんな人間ばかりいるギルドに依頼を出す人間などいるはずがなかった。

最早このギルドは換金程度しか従来の役目を果たないようになったのだ。

そうなれば今度はこのギルドから多数のギルド職員が去ることになった。


何せ依頼がなくなった今、ギルド職員の多くは仕事がなくなってしまったのだから。


もう現在はサラを含めてギルド職員は数人しかいない。

そしてそうなった現状、冒険者ギルドの治安はさらに悪くなっていた。

何せあまり抑制力はなかったとはいえ、それでも一応は存在した冒険者を罰するギルドないの罰則が完全に力を失ったのだから。


……そしてそんな世紀末の冒険者ギルドで、あの女達が無防備に大金貨をさらせばどんな騒動が起きるか想像に難くなかった。


実際、サラのとっさの行動がなければその騒動は現実のものとなっていただろう。


「無防備きわまりない……」


そう考えてサラはそう呟く。

世間知らずな二人の男女の様子からサラはこの大金貨は二人の全財産だろうと考えていた。

男の方は変わった衣装を身に付けてはいたが、明らかに高価ではなかったし、女の方はあまり記憶には残ってはいないが、残らない程度の衣装だったのだろう。

そんな二人が金持ちであるようにはサラは見えず、だから旅に出るに至って全財産を殆ど国で使える大金貨に換金したのだろうと考えたのだ。


だが、がさつで感情的な冒険者達はそこまで思考を巡らすことはないだろう。


ありもしない大金貨のやまを夢想し、そのありかを吐かせるためにありとあらゆる手を使うかもしれない。




「……まあ、あの地味女の方はどうなってもいいんだけどね」




……しかし、そこまで考えたサラの口からでたのはそんな無感情の言葉だった。


その目は先程までルイジア達に向けられていた笑顔が嘘だったこのように乾いていた。

ただ、自身がてにもつ大金貨を見るときだけサラの目に光が甦る。


「上手く隠しとおせたわね。これでこの大金貨は私が独り占めできる……」


……そうもらしたサラの口はいびつに歪んでいた。







◇◆◇








「最初は釣り合わない男を侍らせた嫌な女だと思っていたけれど、大金貨なんて貰えるなんてね」


大金貨を見つめ、サラはうっとりした吐息を漏らす。

サラは最初、あの2人組みの女の方には決していい感情は抱いていなかった。

女の方はまるで印象に残らない酷く地味な女のくせに、となりに侍らせる男はとんでもない美貌を誇っていたのだから。

しかも男の方はあれだけ愛想よくして見せたのにもかかわらず、一切サラに対して注意を払おうとしなかった。

それは少なからずサラのプライドを傷つけたのだ。


けれども、大金貨という思わぬ報酬を得た今、サラはそんな苛立ちを忘れる程の愉悦を覚えていた。


何せ大金貨とは破格の価値を有するのだから。


「冒険者達にはあの地味な女を好きにさせれば満足するでしょうしね。まあ、あんな地味な女でもいないよりはいるだけマシってことね」


そしてそれをサラは誰にも分けるつもりはなかった。

サラは口元に隠しきれない愉悦を浮かべたまま、思案をめぐらせる。


「そしてあの女が男達に奪われれて、私が慰めればあの男は私の方になびくに違いないだろうしね」


そう呟き、サラは勝ち誇った笑み浮かべる。

今後、何が起きても自分の勝利は揺るがないという自信の込められた笑みを。

そして、その笑みを浮かべたままサラは自身が手に持っていた鉱石のようなものに向かって口を開く。


「あともう少しで私は目標をギルドの奥に誘い込む。そしてギルドの奥に目標が辿り着いた瞬間にどこからも逃げられないよう通路を包囲するように近づいてきて」


それは、決して遠い距離ではない上、一方的にだが距離が離れている場所に声を届けることのできる魔道具で。


……そして、その魔道具でサラが言葉を告げたのはギルドでルイジア達を見張っている冒険者達に向けたものだった。


「これでよし、と」


通話を終えた瞬間、サラはまた先程までルイジア達へと向けていた微笑みを顔に貼り付け、何事もないように元来た道を戻り始めた………

今回遅れてしまった上に短くてすいません……

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